○山慈姑(さんじこ)
日本の全国各地に広く分布するラン科の多年草サイハイラン(Cremastra appendiculata)などの鱗茎を用いる。茎の一方法に花をつけるためサイハイ(采配)の名がある。
この鱗茎は焼いたり、茹でて食用にされることもある。またユリ科のアマナ(Tulipa edulis)の鱗茎も山慈姑というが、光慈姑として区別して扱われることもある。日本では江戸時代にオランダ医学から伝えられたラン科の植物(Orchis morio)などの根、サレップ根の代用にサイハイランの鱗茎を用いたこともある。サレップ根は粘滑薬といわれ、ひびやあかぎれ、胃炎の治療薬である。
山慈姑にはマンナンなどの粘液やデンプンが含まれる。漢方では清熱解毒・消腫の効能があり、腫れ物や蛇や虫の咬傷に用いる。また頸部リンパ結核や耳下腺炎などにも効果がある。瘟疫による嘔吐や下痢、咽喉腫痛、痰鳴、小児のひきつけなどの治療に用いられる紫金錠に麝香・朱砂などと配合されている。近年、中国では食道癌や乳癌、リンパ肉腫なとべの臨床効果が研究されている。