〇アニス
セリ科アニス属の一年草で、学名はPimpinella anisum。地中海東部沿岸地域やエジプトが原産で、古代エジプト時代から薬用や調味料として愛用されてきた伝統的ハーブである。アニスの完熟種子(アニスシード)には特有の甘い香りと味があり、今日でもパンや菓子、スープの香辛料、リキュールの香料などに用いられている。種子はアネトールを主成分とする精油を2~3%含み、これがアニスシード特有の芳香と味のもとになっている。
精油には細菌繁殖を抑える効果がある。種子を潰して煎じたお茶は消化を促す働きがあり、食欲不振、消化不良、腹痛などの改善に適している。また、母乳の分泌を促す作用があり、種子をお湯に浸すアニスティーはヨーロッパでは古くから授乳期の女性のお茶として知られている。この母乳分泌促進作用は動物実験でも確認されている。アメリカの栄養学者E・ミンデルによると、乳牛にアニスオイルのにおいを嗅がせると牛乳の生産量が増加したという(ハーブバイブル、同朋社)。精油の香りには虫が嫌う成分が含まれており、防虫にも効果的であるとされる。