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木曜日, 2月 07, 2013

地黄

○地黄(じおう)

 中国原産のゴマノハグサ科の多年草ジオウ(Rehmannia glutinosa)の根を用いる。ジオウにはアカヤジオウ(R.glutinosa var.purpurea)とカイケイジオウ(var.hueichingensis)の2つの系統がある。

 カイケイジオウは河南省懐慶を主産地とする品種で、アカヤジオウよりやや大型であり、根の一部が肥大するという特徴がある。日本で単にジオウといえばアカヤジオウのことをいい、古名をサオヒメともいう。日本でも、古くはアカヤジオウが栽培されていたが、昭和30年代よりおもにカイケイジオウが栽培されるようになり、必要量のほとんどを国産品で賄っていた。しかし、現在では北海道、奈良、長野県などで僅かに栽培されているのみである。近年、武田薬品によってアカヤジオウとカイケイジオウを交配した新品種、フクチヤママジオウが開発されている。

 現在、日本市場に流通している地黄のほとんどは輸入品で、その多くは中国産の懐慶地黄である。ところで生薬としての地黄は、修治により生地黄、乾地黄、熟地黄に大別される。生地黄は採取後3ヶ月以内の新鮮な根のことで、乾燥した砂の中で保存したものであり、乾地黄は日干し、あるいは過熱した乾燥させたものであり、熟地黄は新鮮な根を酒などで蒸した後で乾燥させたものである。

 日本産の新鮮なものを生地黄というが、市場には出回っていない。現在、日本薬局方ではジオウのみ規定しているが、生地黄は流通しておらず、乾地黄と熟地黄の2種類が流通している。かつて日本漢方ではあまり熟地黄を用いなかったため、地黄といえば乾地黄のことを指す。一方、中国では生地黄と熟地黄が流通しているが、中国では生地黄を鮮地黄(鮮生地)と干地黄(干生地)に区別しており、中国で流通している生地黄と日本に輸入されている乾地黄は、ほぼ同じものと考えられている。ちなみに金匱要略では生地黄と乾燥地黄のみが用いられており、熟地黄は宋代の本草図経(1058)において初めて登場する。

 地黄の成分にはイリドイド配糖体のカタルポール、レオヌライド、レオニオサイド、糖類のスタキオース、マンニトール、アミノ酸のアルギニンなどのほか、βシトステロール、カロテノイドなどが含まれている。地黄エキスやカタルポールには血糖降下作用や緩下、利尿作用などが認められている。生地黄から熟地黄へ修治の過程でカタルポールなどのイリドイド配糖体が消失し、フェネルアルコール配糖体のアセトサイドやプロサイドが生成され、生地黄のスタキオースが分解して果糖などの単糖類が増加する。

 漢方的にも区別され、生地黄、乾地黄、熟地黄へ移行するにつれ、性味は苦甘から甘へ、大寒から微温へと変化し、効能に関しても生地黄は清熱・涼血、乾地黄は清熱・養血、熟地黄は滋陰・補血と移行する。