○沢漆(たくしつ)
日本各地、アジア、ヨーロッパに分布するトウダイグサ科の越年草トウダイグサ(Euphorbia helioscopia)の全草を用いる。中国では開花期に採り、根を除いて用いる。枝先に杯状の花序が多数密生する様子を、昔の灯台にみたててトウダイグサという。
茎や根から出る白い乳液に触れると炎症や水泡などの皮膚炎や結膜炎などがおこり、誤って内服すれば咽が腫れて嘔吐や腹痛、下痢となり、さらには眩暈や痙攣の症状もみられる。ただし、死亡するほどは強くない。
峻下薬の巴豆や甘遂、大戟、蓖麻子はいずれもトウダイグサ科の植物である。日本ではトウダイグサの根茎をと称し、大戟の代用にしたこともある。全草にはケルセチンやトリヒマリンなどのフラボノイドなどが知られているが、有毒成分は明らかではない。
漢方では利水・化痰・散結の効能があり、浮腫や腹水、瘰癧(頸部リンパ腺腫)などに用いる。効能は大戟とほぼ同じであるが、作用は緩和であり、毒性も大戟より弱い。
腹水や全身性の浮腫には単独あるいは大棗と併用して用いる。全身の浮腫とともに咳嗽や呼吸困難のみられるときには紫苑・白前などと配合する(沢漆湯)。近年、中国ではリンパ節結核や食道癌などに対する臨床研究がされている。日本の民間では乳汁を疣贅に塗る治療法がある。