○黄柏(おうばく)
日本全土、朝鮮半島、中国北部、アムール地方に分布するミカン科の落葉高木キハダ(Phellodendron amurense)の樹皮を用いる。中国産にはシナキハダ(P.chinense)の樹皮も市場に出ている。日本では樹皮科の剥がしやすい梅雨明け頃に採取され、周皮を除いて乾燥する。
キハダという名は樹皮を剥ぐと内側が黄色いことを表している。この内皮は古くから黄色染料として用いられていた。この染料には防虫作用もあるため、中国ではかつて公式文書は黄柏で染めた黄紙が用いられていたと記録されている。実際、黄柏で染色された写経用紙が今日まで正倉院にも残されている。
樹皮にはアルカロイドのベルベリン、パルマチン、マグノフロリンや苦味トリテルペノイドのオーバクノン、リモニンなどが含まれる。ベルベリンや黄柏エキスには抗菌、抗炎症、中枢抑制、降圧、健胃・止瀉作用などが知られている。
古来より日本各地で黄柏を主成分とする民間薬が多くあり、奈良の陀羅尼助、信州のお百草、山陰の練熊などが胃腸薬として有名である。なお陀羅尼助の名は、苦いため経を読む時の眠気防止に利用されたことによるといわれている。
漢方では清熱燥湿・解毒・清虚熱の効能があり、下痢、糖尿病、黄疸、膀胱炎、痔、帯下、肺結核、湿疹、腫れ物などに用いる。特に下焦の湿熱の症状に対して効果があり、下痢や排尿以上、性器疾患、下肢の神経症などに用いる。民間では黄柏を酢でねって湿疹や打撲傷などの外用薬として用いる。また煎液を目薬や口内炎、扁桃炎の含嗽薬として用いる。