○蜀漆(しょくしつ)
東南アジアやインド、中国の南部に自生するユキノシタ科の常緑低木ジョウザンアジサイ(Dichroa febrifuga)の若い枝の葉を用いる。根は常山として有名である。
効能は常山とほぼ同じで抗瘧の効能があり、マラリアに用いる。傷寒論、金匱要略には蜀漆散・牡蠣湯・桂枝救逆湯・牡蠣沢瀉散など蜀漆を配合した4つの処方が収載されている。蜀漆散はマラリアの発作の前に用いる。
肝硬変などで腹水が溜っているときには牡蠣・沢瀉などと配合した牡蠣沢瀉湯を、火傷のあとの動悸や煩躁、ヒステリーや癲癇などには桂枝加竜骨牡蠣湯に蜀漆を加えた桂枝去芍薬加蜀漆竜骨牡蠣救逆湯を用いる。
薬徴続篇に「胸腹の動には牡蠣で治し、臍下の動には竜骨で治し、胸腹臍下の動の劇しい場合には蜀漆で治す。これが張仲景の三活法である」とある。ただし、蜀漆は催吐作用は常山よりも強いので、近年はあまり用いられていない。