○川芎(せんきゅう)
中国を原産とするセリ科の多年草センキュウ(Cnidiumofficinale)の根茎を用いる。本来は神農本草経にある芎藭と称したが、四川省産のものが有名であったため川芎の名が一般的になった。
江戸時代に薬用として日本にも渡来し、現在ではおもに北海道で栽培されている。ところが日本産は雑種性2倍体で結実しないため、株分けで繁殖させている。また結実しないため分類学上の位置づけが困難で、中国産と日本産との基原植物の異同に関して諸説がある。現在、中国産川芎の基原植物はLigusticumchuanxiongといわれている。日本薬局方では日本産の川芎のみを収録しており、輸入品は適合しない。現在、日本から持ち込んだ株が中国でも栽培されている。
日本産川芎の成分にはクニデライド、リグスチライド、ブチルフタライドなどが含まれ、鎮痙、鎮痛、鎮静、降圧、血管拡張作用などが認められている。漢方では活血・理気・止痛の効能があり、頭痛や腹痛、筋肉痛、生理痛などに用いる。
当帰とともに婦人科・産科の要薬として有名で、活血作用と行気作用とがあり、血中の気薬といわれている。また李東垣は頭痛には必ず川芎を用いると述べているが、川芎は頭痛だけでなく、瘀血による痛みや関節痛、四肢の麻痺や痺れにも用いられる。