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水曜日, 7月 09, 2014

反鼻

○反鼻(はんび)

 クサリヘビ科マムシ属のマムシ(Agkistrodon halys)の内臓を除去した全体を用いる。マムシは体長50cm前後で、全体は褐色で黒褐色の円形の斑紋が少しずれて並び、頭は小さく三角形である。日本全土に生息する唯一の毒蛇で、水辺に近い草むらに生息し、夜行性でネズミやカエルなどを捕食する。卵を体内で孵化する卵胎生である。

 中国、韓国にも分布しているが、反鼻と称されるものの中にはハブ、アオハブ、ヒメハブなども含まれている。日本では滋賀県や九州南部が産地として有名であるが、現在ではほとんどが韓国産のマムシである。

 薬材ではマムシを皮を剥いで棒状にしたものを反鼻あるいは五八霜といい、皮付きのまま蒸して円盤状にしたものをマムシの蒸し焼きと呼んでいる。五八霜の名は、五十八本で1斤(600g)になることに由来する。マムシの蛇毒は血液毒成分と神経毒成分が含まれ、血液循環障害や出血、壊死、浮腫などが出現する。

 漢方では性味は甘温、有毒で、解毒・攻毒・強壮の効能があり、ハンセン病や腫れ物、皮膚のしびれ、腹痛、痔疾などに用いる。健忘症やうつ病などによる放心状態には茯苓・香附子などと配合する(反鼻交感丹)。夜尿症には丁子と配合する(香竜散)。

 日本では古くからマムシの黒焼きも有名で、おもに伯州散などの解毒剤に配合されて用いられている。マムシは明治以後には滋養強壮剤として用いられることが多く、今日でも栄養剤やドリンク剤などにハンビチンキの名前で配合されている。また民間療法ではマムシの生き血や生胆、生きたまま漬けたマムシ酒などが疲労回復や冷え性などの治療に用いられている。