○衛矛(えいぼう)
日本各地、朝鮮半島、中国、サハリンなどに分布するニシキギ科の落葉低木ニシキギ(Euonymus alatus)の翼状物のついた枝を用いる。紅葉が美しいためにニシキギといわれ、庭木としてよく植えられている。枝に沿ってはコルク質の薄い翼状物が2~4枚つくが、中国ではこれを矛や矢羽にみたてて衛矛、鬼翦羽という。一般に中国でも日本でもこの翼状部分のみを用いる。煎液には血糖降下作用が報告されている。
漢方では活血・通経の効能があり、無月経や産後の腹痛などに用いる。日本漢方では枝を煎じて心痛の治療に用いている。また日本の民間では昔からトゲ抜きの妙薬としてよく知られ、黒焼きにしたものを米飯とねって、紙にのばしてトゲの部分に貼り、1~2時間たって紙を剥がすとトゲが出るといわれている。秩父地方ではニシキギをシラミコロシと呼ぶが、これはニシキギの果実に毒性があり、すり潰してアタマジラミの治療に用いたことによる。