○王不留行(おうふるぎょう)
王不留行は、ヨーロッパ、アジアに広く分布するナデシコ科の一年草、ドウカンソウ(Vaccaria pyramidata)の種子を用いる。日本には江戸時代に渡来し、おもに観賞用に栽培されている。中国の広東省産はクワ科のオオイタビ(Ficus pumila)の果実であり、日本に輸入されている王不留行はおもにこれといわれている。
ドウカンソウの種子にはバクセゴシド、バッカロシドなどのサポニンが含まれる。一般に生のままでは煎じ難いため、鍋で炊いてはじかせてから薬用とする。漢方では通乳・通経・止痛などの作用があり、乳汁不足や乳腺炎、月経閉止、難産、腫れ物、外傷などに用いる。特に中国では乳汁分泌の不足に応用されている。
金匱要略では外傷の後が腫れて痛むときに用いている。また腫れ物には外用薬としても応用できる。ただし内服では妊婦に禁忌である。