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火曜日, 7月 31, 2012

金桜子

○金桜子(きんおうし)

 中国南部、台湾原産といわれ、日本では本州、四国、和歌山などに野生化しているバラ科の常緑つる性低木ナニワイバラ(rose laevigata)の成熟果実を用いる。ナニワイバラの根は金桜根、葉は金桜葉、花は金桜花という。大阪の植木屋から広まったことからナニワイバラの名があり、生け垣などに利用されている。

 果実にはクエン酸、リンゴ酸、タンニンなどが含まれ、コレステロール降下作用や抗菌作用が知られている。漢方では固渋薬のひとつで、止瀉・固精・縮尿の効能があり、下痢、遣尿、頻尿、遣精、帯下、咳嗽、自汗、盗汗などに用いる。

 漢方理論によれば脾虚(胃腸虚弱)による下痢を止め、腎陽虚による遣精・頻尿・夜尿を抑え、肺虚による喘息や咳嗽などを改善するといわれる。腎虚による遣精や滑精、婦人の白帯下などには芡実と配合する(水陸二仙丹)。ただし多量あるいは長期に服用すると便秘や服痛がみられる。金桜根や金桜花には金桜子と同様の効能があり、金桜葉は腫れ物や潰瘍に外用する。

月曜日, 7月 30, 2012

豨蘞

○豨蘞(きれん)

 日本の全土、朝鮮半島、中国大陸に分布するキク科の一年草メナモミ(Siegesbeckia pubescens)、および同属のツクシメナモミ、コメナモミなどの全草を用いる。日本の山野に普通に見られ、果実には粘液を分泌する腺毛を有し、衣服や動物にくっつきやすい。ナモミとはくっつくという意味のなずむに由来するもので、同じキク科にオナモミという植物もある。オナモミの果実も蒼耳子といって薬用にされる。

 メナモミの全草には苦味質のダルチンやアルカロイドが含まれ、煎液の抗炎症作用や降圧作用が知られている。漢方では関節の腫痛を除き、筋骨を強める効能を利用して、関節の疼痛や足腰の冷痛、筋肉の萎弱や麻痺、高血圧に用いる。

 一般に関節の痛みには生で用い、筋肉の萎弱や麻痺には酒で蒸して用いる。関節リウマチおよび高血圧に臭梧桐と配合する(風湿豨桐片)。

金曜日, 7月 27, 2012

キランソウ

キランソウ

 日本の本州、四国、九州、朝鮮半島、中国に分布するシソ科の多年草キランソウ(Ajuga decumbens)の全草を用いる。山野の道端の地面にへばりついて生え、初夏に紫色の小さな花をつける。

 日本ではイシャダオシ(医師倒し)、中国でも筋骨草や金瘡小草と呼ばれて薬草として知られている。漢方生薬としては用いられないが、民間薬としてよく知られている。

 全草にフラボノイドのルテオリン、ステロイドのシアステロンや昆虫変態ホルモンのアジュガステロンCなどが含まれ、鎮咳、去痰、抗菌、止瀉などの作用が知られている。中国では止咳・去痰・清熱解毒の効能を利用して、慢性気管支炎や咽頭腫痛、下痢、腫れ物などに用いる。

 日本では生の葉汁を火傷や切傷、湿疹などに、また膿の吸い出しとして腫れ物に外用する。また浴湯料としてあせもや湿疹に用いる。北九州では煎剤が胆石の民間薬として知られている。

木曜日, 7月 26, 2012

魚脳石

○魚脳石(ぎょのうせき)

 ニベ科の海水魚である。フウセイ(Pseudosciaena crocea)または小黄魚(P.polyactis)の頭骨中の耳石を用いる。フウセイの肉は石首魚という。おもに東シナ海の中国沿岸に生息し、回遊する性質がある。フウセイという名は朝鮮語に由来し、日本ではあまり知られていない。日本ではニベ科のイシモチ(Argyrosomus argentatus)の耳石がよく知られている。

 耳石とは平衡器官に存在する固形物で、聴石、平衡石などとも呼ばれている。これらの魚の頭蓋中にはかなり大きくて白い耳石があり、大きなものでは直径2cm、幅1.5cmくらいの長卵形で突起を有する。

 主成分は炭酸カルシウムであるが、詳細は不明である。漢方では通淋・消炎の効能があり、尿路結石や排尿障害、中耳炎や蓄膿などに用いる。尿路結石には瞿麦・滑石・海金砂などと配合する(腎石一方)。鼻炎には辛夷・青黛・竜脳と一緒に粉末にして鼻腔に散布する。

水曜日, 7月 25, 2012

玉竹

玉竹(ぎょくちく)

 日本、朝鮮半島、中国にかけて分布するユリ科の多年草アマドコロ(Polygonatum odoratum)、およびその近縁植物の根茎を用いる。別名を葳蕤といい、神農本草経には女萎とある。同属植物のナルコユリ(P.falcatum)もアマドコロとよく似ているが、ナルコユリの根茎は生薬名を黄精という。

 アマドコロは白い花を2個ずつ鈴のようにつけ、可憐なために観賞用として栽培され、また切花にもよく用いられる。根茎がヤマノイモ科のトコロに似て甘いのでアマドコロの名がある。

 玉竹の成分として強心配糖体のコンバラマリン、コンバラリン、粘液多糖類のオドラタンなどが知られている。漢方では滋陰・潤肺・生津の効能があり、熱病による脱水、咳嗽、口渇、頻尿、盗汗などに用いる。その効能は麦門冬に似て、体内を潤し、元気を益す作用がある。

 乾咳や口渇、咽の乾燥を伴う感冒や気管支炎には豆豉・葱白などと配合する(加減葳蕤湯)。熱性疾患や慢性の肺疾患などで口渇、倦怠感、食欲不振などのみられるときには沙参・麦門冬などと配合する(沙参麦門冬湯)。日本でも滋養・強壮の薬酒としてアマドコロを焼酎につけたアマドコロ酒がよく知られている。また民間では打撲傷にすりおろした汁や粉末を酢でねったものを外用する。

月曜日, 7月 23, 2012

杏仁

○杏仁(きょうにん)

 中国北部原産で、古くから栽培されているバラ科の落葉高木アンズ(Prunus armeniaca)の種子(仁)で、硬い殻を割って取り出したものを用いる。

 三国時代に呉の名医、薫奉は治療費の代わりに杏の木を植えさせ、数年で立派な杏の林ができたという故事から、杏林という言葉が医者の異称となった。日本には奈良時代に薬用として渡来し、かつては唐桃と呼ばれていた。今日では長野県や山梨県で栽培されている。

 アンズは品種により、種に苦味のある苦杏仁(別名:北杏)と甘味のある甜杏仁(別名:南杏)とがある。外形は区別できないが生薬としては苦杏仁を用い、甜杏仁はおもに菓子などの食用にする。杏仁豆腐の杏仁は甜杏仁で、アンニンとは上海地方の発音である。今日、生薬のアンニンはほとんどが中国からの輸入品である。

 アンニンはアーモンドのような形をし、桃仁とよく似ているが、杏仁の底は偏平である。杏仁には青酸配糖体のアミグダリン、加水分解酵素のエムルシン、バンガミン酸などが含まれる。アミグダリンは杏仁中の酵素エムルシンにより加水分解されて青酸とベンズアルデヒド、ブドウ糖となり、このため多量に服用すると青酸による中毒が現れる。

 杏仁を原料とするキョウニン水は、もともと西洋の鎮咳・去痰薬である苦扁桃水の代用として作られたものである。日本薬局方にはキョウニン、キョウニン水を鎮咳・去痰薬として収載している。現在では化学的にベンズアルデヒデとシアン酸を混合し、これを合成キョウニン水と称している。

 杏仁を圧搾してとったキョウニン油は軟膏基剤や化粧品の基剤としても用いられている。またキョウニンエキスに男性の体臭成分、アンドロステノンの生成を抑制する効果があることが発見され、男性用制汗デオドラントに配合されている。

 漢方では止咳、喘息、喉痺、便秘などに用いる。とくに乾咳や粘稠痰のみられるときに適しており、肺を潤して去痰する。喘息には麻黄と配合することが多く、「麻黄は宣肺し、杏仁は降気する」とか「杏仁は麻黄を助ける」といわれている。また杏仁は肺気を開くことで胸中の痰飲や浮腫を去る作用があるという説もあり、薬微には「胸間の停水を主治し、ゆえに喘咳を治す。しかして旁ら短気、結胸、心痛、形体浮腫を治す」と記されている。そのほか腸を潤して排便を容易にする作用もある。

土曜日, 7月 21, 2012

來竹桃

○來竹桃(きょうちくとう)

 インド原産で、日本には江戸時代に渡来したキョウチクトウ科の常緑低木キョウチクトウ(Nerium indicum)の葉や樹皮を用いる。日本の気候に適し、塩風や公害などの環境にも育つため、防塵、防音用としてよく植えられている。

 葉や樹皮には強心配糖体のオレアンドリン、アディネリン、ネリアチンのほか、オレアノール酸、ウルソール酸などが含まれ、オレアンドリンにはジキタリス配糖体と類似の強心作用がある。ジキタリスよのも強心作用は強いが、利尿作用は弱く、蓄積性があり、また催吐作用もある。誤って摂取すれば嘔吐や腹痛、下痢、不整脈、心臓麻痺などをひきおこす、かつてキョウチクトウの枝を箸代わりに利用して死亡した例もある。民間では打撲による腫れや痛みに煎液で患部を洗う治療法がある。

金曜日, 7月 20, 2012

羗活

○羗活(きょうかつ)

 中国で四川・陜西・雲南省などの高山に分布するセリ科の多年草キョウカツ(Notopteygium incisum)、および寛葉羗活(N.forbesii)の根と根茎を用いる。日本にはこのキョウカツと同じノトプテリギウム属の植物は産せず、日本産の羗活、すなわち和羗活はウコギ科のウド(Aralia cordata)の根である。

 ウドはキョウカツとまったく別の植物であり、中国ではウドの根を土当帰という。ちなみに日本ではウドの地下部のうち根茎部や宿根を独活といい、側根や若根を羗活という。中国から日本に年間数トン輸入され、唐羗活と呼ばれている。中国産ではとくに四川省産の品質が優れ、川羗と称されている。現在、日本には和羗活と唐羗活のいずれも流通しており、単に羗活といえば中国産のものをいい、日本産のものは和羗活という。

 唐羗活の成分にはポリアセチレン系化合物やフロクマリン類、リモネン、ピネンなどの精油が含まれる。漢方では解表・去風湿・止痛の効能があり、感冒や頭痛、筋肉痛、関節痛、麻痺などの治療に用いる。独活とは効能はよく似ているが、「風を療ずるには独活を用いるが宣し、水を兼ねたるには羗活を用いるが宣し」といわれている。また、一般に上半身の痛みには羗活、下半身の痛みには独活を用い、全身の痛みには一緒に用いる。

木曜日, 7月 19, 2012

姜黄

○姜黄(きょうおう)

 東南アジア、中国南部に分布するショウガ科の多年草ウコン(Curcuma longa)あるいはキョウオウ(C.aromatica)の根茎を用いる。ウコンとキョウオウはよく似た植物であるが、ウコンの開花期が秋であるため秋ウコンと呼ばれ、キョウオウ葉5~6月に花が咲くため春ウコンと呼ばれている。沖縄ではキョウオウのことを春ウッチンとか沖縄ウコンと呼んでいる。

 日本と中国では、原植物のウコンとキョウオウの名称が逆転しており、中国ではウコンを姜黄、キョウオウを欝金という。ただし、中国の生薬名ではいずれの根の先にできる紡錘形の塊茎を欝金、茎に続く根茎を姜黄という。一方、日本薬局方では生薬の欝金をウコンの根茎と規定しており、日本で漢方生薬として流通している欝金は、中国でいう姜黄のうちウコンを基原とするもののことである。香辛料のターメリックも、ウコン(秋ウコン)の根茎である。

 黄色色素のクルクミンはウコン(秋ウコン)の方が多く含有するが、クルクモール、クルクメンなどの精油成分はキョウオウ(春ウコン)の方が豊富である。クルクミンには抗酸化作用、抗炎症作用、抗菌作用のほか、胆汁分泌を促進し、肝機能を改善する効果があり、またアルコールの分解を促進することから、一般に二日酔い防止などの肝庇護薬として利用されている。

 また、1991年アメリカでマウスにクルクミンを塗布する実験で、皮膚癌の発生を抑制すると発表され、その後、胃癌、大腸癌などさまざまな癌の発生を抑える効果が報告されている。ウコンにはクルクミン以外に胆汁分泌を促進する作用のあるターメロン、シネオールなどの精油成分が含まれている。ただし、ウコンの副作用として、皮膚が痒くなるアレルギー症状や肝障害、胆管障害なども報告されている。

 中国医学の姜黄(日本名:欝金)には活血・理気・通経・止痛の効能があり、胸や腹の張痛、産後の腹痛、生理痛、腫瘤、腕の痛み、打撲傷などに用いる。女性の腹痛で背中や肩に痛みが及ぶときには延胡索・乳香などと配合する(延胡索湯)。ストレスなどで脇腹部が痛み、消化の悪いときには木香・陳皮などと配合する(舒肝丸)。

 なお欝金と姜黄の異なるところは、性味では欝金が涼であるのに対し姜黄は温であり、欝金が活血作用に優れるのに対し、姜黄は血中の気を行らせる作用があると説明されている。

水曜日, 7月 18, 2012

九竜虫

○九竜虫(きゅうりゅうちゅう)

 東南アジアから中国南部にかけて分布するゴミムシダマシ科のキュウリュウゴミムシダマシ(Marianus dermestoides)の全虫を用いる。成虫の体長でも6~8mmくらい、暗黒色で光沢のある小さな長楕円形の虫で寿命は約3ヶ月である。

 幼虫、成虫ともに穀物や果実などを食べる害虫とされているが、江蘇・浙江・福建省などでは飼育されている。日本では第二次大戦直後などに強精剤として生きたまま呑むことが流行ったことがある。

 漢方では活血化瘀・温裏・理気の効能があり、中風の半身不随や胃痛、虚労による咳嗽などに用いる。打ち身や外傷には擦りつぶして患部に塗布する方法もある。ただし、この虫がサナダムシなど寄生虫の中間宿主になる可能性が指摘され、生きたまま服用しないほうがよいともいわれている。

火曜日, 7月 17, 2012

急性子

○急性子(きゅうせいし)

 インドから東南アジアが原産であるツリフネソウ科の一年草ホウセンカ(Impatiens balsamina)の種子を用いる。ホウセンカの全草も鳳仙あるいは透骨草として生薬に用いられる。日本には室町時代に中国から伝えられ、漢名がそのまま和名となった。

 熟した果実は少しでも触れると果皮が裂開して種子が飛び散るしかけになっている。種子には脂肪酸のパリナリシンなどが含まれ、子宮収縮作用があると報じられている。

 漢方では軟堅・去瘀の効能があり、無月経、噎膈、腹部の腫瘤や死胎の排出に用いる。民間では陣痛の誘発薬としても利用されていた。また咽に骨が刺さったときに急性子を噛んで飲み込むとよい。

 近年、中国ではフィラリアや食道癌の治療効果が研究されている。全草の鳳仙には去風湿・止痛の作用があり、関節痛や脚気に、根の鳳仙根には活血・消腫の作用があり、打撲傷などに用いられる。近年、ホウセンカ抽出成分、インパチエノールに育毛効果があると報告されている。

月曜日, 7月 16, 2012

韮子

韮子(きゅうし)

 東アジア原産で、中国、東南アジア、日本などで栽培されているユリ科の多年草ニラ(Allium tuberosum)の種子を用いる。葉も韮白あるいは韮葉と称して薬用にする。

 ニラは中国で栽培されていた最も古い野菜のひとつで、日本へも古い時代に渡来して野生化したもので古事記にはカミラという名で呼ばれている。葉に特有の強い臭いがあるため戦前はあまり利用されなかったが、戦後にギョーザなどの中国料理が普及するにつれて急速に需要が増えた。

 ニラの葉は刺激性の成分である硫化アリル類のほか、ビタミンA・B2などを多く含み、栄養価も高い。禅寺では「淫を発する」とされる五葷のひとつで、持込みが戎められている。

 漢方では種子に肝腎を補い、腰膝を温め、補陽、固精の効能があり、インポテンツや頻尿、遣尿、下半身の冷え、下痢、帯下などに用いる。インポテンツや早漏には杜仲・巴戟天などと配合する(賛育丹)。民間では腰痛や頻尿のときに種子を水で服用する。またニラの葉(韮菜)にも温裏・強壮作用の効能があり、腹痛や下痢、疲労にはニラ雑炊を食べるとよい。またニラの生葉汁を鼻血や日射病のときに服用したり、切り傷やかぶれなどに外用する。

土曜日, 7月 14, 2012

九香虫

○九香虫(きゅうこうちゅう)

 中国の揚子江以南の地域に分布するカメムシ科の昆虫ツマキクロカメムシ(Aspongopisu chinensis)の乾燥した全虫を用いる。主産地は雲南・四川・貴州・広西省などである。

 体長2cm前後、幅1cmくらいの紫黒色のカメムシの一種で、後肢の基部に臭孔があり、強烈な臭気を放つため打屁虫とか酒香虫などの名もある。日本でもカメムシをヘクサムシとかクサガメと呼んでいる。なおカメムシの名は虫体が亀の甲に似た六角形をしていることに由来する。一般に瓜類や柑橘類の害虫として扱われている。

 冬季間は成虫のまま石の下などで越冬するため、採取は晩秋に行う。熱湯の中に入れて殺し、日乾あるいは焙って乾燥する。薬材の九香虫は乾燥しているが油性があり、質は脆くて切断すれば茴香のような香りがある。

 成分にはトランス-2-ディセナル、オクテナル、ヘクサナルなどが含まれている。漢方では理気・止痛・温中・壮陽の効能があり、胸や腹の痞満や痛み、足腰の衰え、インポテンツなどに用いる。

金曜日, 7月 13, 2012

牛角鰓

○牛角鰓(ぎゅうかくさい)

 哺乳動物のウシ科のウシ(Bos taurus domesticus)の角を牛角、スイギュウ(Bubalus bubalis)の角を水牛角といい、その中の骨質角髄を牛角鰓という。近年、牛角鰓は犀角の代用として用いられる。

 牛角鰓の作り方は、ウシの角から角髄を取り出し、数日間水に漬け、きれいに洗浄して乾燥する。ウシの角と同じ形のまま中空で、表面は灰色~灰黄色、小さい無数の穴があり、ザラザラとした硬いものである。中国ではおもに江蘇省に産する。

 成分は炭酸カルシウム、リン酸カルシウムを含む。漢方では止血・止瀉の効能があり、鼻出血、下血、性器出血、下痢などに用いる。

木曜日, 7月 12, 2012

ギムネマ葉

○ギムネマ葉(ぎむねまよう)

 インド南部、東南アジア、中国の南西部に分布するガガイモ科の常緑つる性植物ギムネマ・シルベスタ(Gymnema sylvestre)の葉を用いる。中国ではこの植物の茎を武靴藤という。

 ギムネマ葉はインド伝承医学アユルヴェーダの中で2000年以上も前から糖尿病の薬として利用されていた。ギムネマ葉を噛んだ後、1~2時間は甘味だけが感じられなくなることから、19世紀半ばからヨーロッパにも知れ渡った。1887年には有効成分が抽出され、この甘味抑制物質は酸性を示すことからギムネマ酸と名付けられた。

 葉にはギムネマ酸のほか、ヘントリアコンタン、プロトカテキュ酸などが含まれている。ギムネマ酸には甘味抑制作用のほか、抗う蝕性作用、小腸におけるブドウ糖吸収抑制作用、血糖値の上昇抑制作用などが認められている。この甘味抑制作用や腸管吸収抑制作用は数時間で回復する。

 これらの作用により糖尿病の治療および予防に利用できるのではないかと注目されている。しかし大量に服用すると、甘味以外の味覚にも抑制作用がみられ、血糖値はかえって上昇することが報告されている。近年、日本では食品や飲料などの中にギムネマ酸を添加したさまざまな健康食品が開発されている。ちなみに中国では武靴藤を腫れ物や乳腺炎などの化膿性疾患の治療に用いている。

水曜日, 7月 11, 2012

亀板

亀板(きばん)

 本州の中部以南、朝鮮、中国などに分布するイシガメ科のクサガメ(Chinemys reevesii)の甲板、主として腹甲を用いる。ちなみに別甲はスッポンの背の甲羅を主に用いる。

 中国では揚子江流域で多く産する。クサガメは小川や沼などの淡水に生息し、全身が茶褐色ではっきりとした亀甲があり、甲長が約15cm、体臭があるのでその名がある。小ガメはゼニガメ(金線ガメ)として知られている。

 殺して肉を除いた後、腹甲を洗って乾燥したものを血板といい、腹甲を湯で煮てから乾燥したものを湯板という。血板のほうが光沢があり、品質が良いとされている。亀板を煮詰めて固形の膠にしたものを亀板膠という。

 漢方では補陰・清虚熱・強筋骨・補肝腎の効能があり、おもに慢性の消耗性疾患、老人性疾患、虚弱体質に用いる。亀板膠は補陰・補血・止血の効能があり、陰虚による発熱やアトピー性皮膚炎などの乾燥肌、子宮出血などさまざまな出血に用い、滋養作用は亀板よりも優れている。

火曜日, 7月 10, 2012

キナ皮

○キナ皮(きなひ)

 アンデス山中を原産とするアカネ科のアカキナノキ(Cinchona pubescens)などの枝や幹、根などの樹皮を用いる。ペルー住民は古くからキナノキの樹皮をマラリアなどの熱病に用いていた。これが17世紀にヨーロッパに伝えられたマラリアの特効薬や解熱薬として有名になり、需要が増加した。

 しかし南米は列強によって分割され、キナの輸入が難しくなってきたため、各国が熱帯の植民地での栽培を試み、1854年にオランダ人はジャワでの移植に成功した。現在はアカキナノキを台木とし、キニーネ(quinine)含有量の多いボリビアキナノキ(C.ledgeriana)を接木して栽培される。20世紀初頭、マラリア患者の心房細動がキニーネの服用で軽快するという経験から、抗不整脈薬として開発されるようになった。

 キナ皮にはキニーネ、シンコニン、キニジンなどの多数のアルカロイドが含まれ、キニーネには抗マラリア、陣痛促進作用、解熱作用、キニジンには抗不整脈作用がある。明治時代には万能薬的に用いられ、戦時中にはマラリアの治療に盛んに利用された。

 今日でもキニーネ塩酸塩やキニーネ硫酸塩は抗マラリア剤として用いられている(1930年には合成抗マラリア薬が開発された)。またキニジンは不整脈治療剤として用いられているが、近年、合成されるようになった。キナ皮はヨーロッパでは強壮剤、解熱剤、健胃剤として利用するほか、民間では創傷や皮膚の潰瘍に外用する。

月曜日, 7月 09, 2012

橘皮

○橘皮(きっぴ)

 中国ではミカン科のオオベニミカン(Citrus tangerina)やコベニミカン(C.erythrosa)などいくつかの柑橘類の成熟果実の果皮を橘皮という。日本ではウンシュウミカンの成熟果実の果皮を陳皮あるいは陳橘皮といい、とくに新鮮なものを橘皮という。

 一般に橘皮の古くなったものを陳皮というが、中国では陳皮とあまり区別していない。日本でも橘皮はあまり用いられず陳皮で代用されることが多い。現在、流通している橘皮のほとんどは中国産であるが、日本産の陳皮のほうが中国産の橘皮よりも新しいことがしばしばある。橘皮の成分や効能はほとんど陳皮と同じである。

 金匱要略には橘皮の配合される処方として胸が苦しいときに用いる橘皮枳実生姜湯、しゃっくりに用いる橘皮竹茹湯などがある。なお中国では成熟した果実の皮の白い肉質を除いた外側だけの果皮を橘紅、その白い肉質の部分を橘白、内果の周囲にある網状の維管束の部分を橘絡、種子を橘核といい、別々に使用される。

 橘紅は橘皮よりも香りと温燥の性質が強く、おもに肺寒の咳嗽に用いられる。橘白は健胃薬として、橘絡は去痰薬として、橘核は止痛薬として応用されている。ちなみにウンシュウミカンの果肉に含まれる色素、βクリプトキサンチンに抗腫瘍作用、脂質代謝改善作用のあることが報告され、注目されている。

土曜日, 7月 07, 2012

吉草根

○吉草根(きっそうこん)

 北海道から九州、朝鮮半島、台湾に分布するオミナエシ科の多年草カノコソウ(Valeriana fauriei)の根および根茎を用いる。中国ではカノコソウなどの根茎がクモの足に似ているため蜘蛛香という。

 根には精油が含まれ、甘松香に似た芳香があるため、和の甘松香ともいわれている。同属植物のセイヨウカノコソウ(V.officinalis)の根は、薬用のワレリアナ根(バレリアン:Valerian)として知られる。

 日本では江戸時代に蘭方医学の影響により、ワレリアナ根の代用生薬としてカノコソウが知られるようになった。日本薬局方にもカノコソウの名前で収載されている。日本の市場品はほとんど北海道で栽培されている北海吉草といわれるエゾカノコソウである。日本産の吉草根はワレリアナ根よりも精油を多く含み、優秀な品種とされている。

 カノコソウの根茎は精油8%を含有し、成分にはボルニールイソバレレイトやケッシルアルコールなどが含まれ、鎮静作用などが認められている。吉草根やワレリアナ根のチンキは鎮静、鎮痙薬として動悸やヒステリー症状、あるいは虚脱状態の興奮剤として用いられる。現在、市販されている婦人用保健薬などによく配合されている。

水曜日, 7月 04, 2012

枳実

○枳実(きじつ)

 日本ではミカン科のダイダイ(Citrus aurantium)やナツミカン(C.natsudaidai)などのミカン類の未成熟果実を枳実という。中国ではおもにカラタチ(Poncirus trifoliata)やダイダイなどの果実が用いられている。枳実よりも多く成熟直前の果実を枳殻、また成熟した果実の果皮をダイダイは橙皮、ナツミカンは夏皮と称している。

 本来、枳実は風などにより落ちた未成熟果実を拾い集めたものをそのまま、あるいは横割りにして天日で乾燥したものである。古いものをよいとする半夏・陳皮など六陳と呼ばれるものの一つとされている。

 枳実には芳香性のリモネンを主成分とする精油やフラボノイドのヘスペリジン、ナリンギンなどが含まれる。薬理的には胃腸の非生理的な収縮を抑制し、蠕動を強め、リズムを整える働き、さらに抗炎症作用、抗アレルギー作用などが認められる。

 漢方では理気・健胃・消積・去痰の効能があり、気を行らし、気の滞りによる硬結や痰による胸を痞えを消す作用がある。臨床的には胸満感や胸痛、腹満感や腹痛、便秘、食積、浮腫、胃下垂、脱肛などに応用される。また可能性炎症にも硬結を解する作用があるとして用いられる。

 米国ではダイダイの未熟果から抽出したエキス(シトラス)が、ダイエット素材として注目されている。シトラスに含まれているシネフリンなのサーモアミンが、交感神経系に働きかけ、脂肪細胞を刺激して脂肪酸を遊離して燃焼しやすくする働きがあると説明されている。

火曜日, 7月 03, 2012

キササゲ

キササゲ

 中国原産で、古くから日本の温暖な地方で栽培されているノウゼンカズラ科の落葉高木キササゲ(Catalpa ovata)の果実を用いる。中国生薬では梓実というが、中国ではあまり用いず、専ら根皮や樹皮を梓白皮と称して利用している。日本の生薬でキササゲといえば、この梓実のことをいう。

 キササゲとは木のササゲ(マメ科)という意味で、秋に径は5mmで長さ30cmくらいの細長い果実がササゲのように多くできる。果実は熟すと裂けてしまうので、緑色から褐色に変わる少し前に採取して日干しにする。

 果実にはイリドイド配糖体のカタルポシドが多量に含まれ、このカタルポシドには強い利尿作用がある。またその他のクエン酸やカリウム塩などの成分にも利尿作用が認められる。日本では浮腫を治療する民間薬として有名で、かつては漢方医や漢方薬局の家の庭によく植えられていた。腎炎、妊娠浮腫、脚気などの浮腫に効果があり、しばしば南蛮毛などと配合する。

 今日でも家庭薬として用いられている利尿剤にはしばしばキササゲが配合されている。ただし多量に服用すると悪心、嘔吐、徐脈などの副作用がみられる。