○キナ皮(きなひ)
アンデス山中を原産とするアカネ科のアカキナノキ(Cinchona pubescens)などの枝や幹、根などの樹皮を用いる。ペルー住民は古くからキナノキの樹皮をマラリアなどの熱病に用いていた。これが17世紀にヨーロッパに伝えられたマラリアの特効薬や解熱薬として有名になり、需要が増加した。
しかし南米は列強によって分割され、キナの輸入が難しくなってきたため、各国が熱帯の植民地での栽培を試み、1854年にオランダ人はジャワでの移植に成功した。現在はアカキナノキを台木とし、キニーネ(quinine)含有量の多いボリビアキナノキ(C.ledgeriana)を接木して栽培される。20世紀初頭、マラリア患者の心房細動がキニーネの服用で軽快するという経験から、抗不整脈薬として開発されるようになった。
キナ皮にはキニーネ、シンコニン、キニジンなどの多数のアルカロイドが含まれ、キニーネには抗マラリア、陣痛促進作用、解熱作用、キニジンには抗不整脈作用がある。明治時代には万能薬的に用いられ、戦時中にはマラリアの治療に盛んに利用された。
今日でもキニーネ塩酸塩やキニーネ硫酸塩は抗マラリア剤として用いられている(1930年には合成抗マラリア薬が開発された)。またキニジンは不整脈治療剤として用いられているが、近年、合成されるようになった。キナ皮はヨーロッパでは強壮剤、解熱剤、健胃剤として利用するほか、民間では創傷や皮膚の潰瘍に外用する。
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