○営実
日本の各地、朝鮮半島に分布するバラ科のつる性落葉低木ノイバラ(Rosa multiflora)の果実を用いる。中国ではノイバラの花を薔薇花、根を薔薇根と称して薬用にする。そのほか近縁種のテリハノイバラ(R.wichuraiana)やフジイバラ(R.fujusanensis)などの果実も用いる。これら果実は偽果であるが、薬用には赤く成熟する一歩手前の、少し青味がかったものを採取し、それを乾燥して用いる。
営実にはフラボノイドのムルチフロリンA・B、ムルチノサイドA・B、紅色素のリコピンなどが含まれる。漢方では通便・利水消腫・活血・解毒の効能があり、浮腫や脚気、瘡毒、月経痛などに用いる。
実証の腹水に大黄・甘草と配合する(営実湯)。営実は神農本草経の上品に収載されているが、中国では余り用いられず、むしろ日本の民間薬としてよく知られている。日本の民間では古くより便秘や浮腫の瀉下・峻下薬として知られ、今日でも家庭薬の下剤にはしばしば配合されている。ただし使用量が多くなると激しい下痢となるので注意を要する。また腫れ物や痤瘡には煎液で洗ったり、冷湿布として用いる。
欧米では近縁種のドッグローズ(R.canina)などの偽果をローズヒップと呼んで花弁とともに、ビタミンCの豊富なハーブティーとして愛飲している。