○紅麹
清酒・醸造酢・味噌・醤油などの発酵食品に用いられる麹菌は、黄麹と呼ばれる酒類だが、中国や台湾では紅色をした紅麹が、紅酒、紅老酒、紅乳腐などの醸造に古くから用いられてきた。
紅麹は黄麹より繁殖力が弱く管理が難しいため、日本では沖縄の加工豆腐に使われる程度で、1970年代初めに発ガン性の疑いが指摘された合成着色料に代わる天然食用色素として利用されるまで、それほど活用例はなかった。
もともと紅麹は本草網目に「消食活血、健脾操」(消化を助け決行を良くし、内臓を賦活し胃を軽快にする)と記された漢方薬でもあるが、1980年代以降、日本での機能性食品としての見直しが始められ、コレステロール合成阻害物質、ガンの予防効果、特に顕著な血圧降下作用、血圧上昇抑制作用が相次いで発見された。そしてバイオ技術による量産体制の確立と平行して血圧調整の有効成分γ-アミノ酪酸が確認され、1996年に関与する成分として特定保健用食品も誕生している。
現在、紅麹を使った清酒・醸造酢・味噌など多彩な発酵食品がラインナップされているが、発酵食品以外でも、健康機能性を付加することを目的として、様々な一般食品にも使われ始めた。紅麹で健康機能性を強調した食品は、どれもコレステロールや血圧が気になる人をターゲットにしたものが多い。
製油大手のホーネンコーポレーションは、食用油の原料に紅麹エキスを加え、コレステロールの体内合成を抑制する作用を持たせた機能性食用油を販売している。