○桑の葉
桑はクワ科の落葉高木で、漢方では冬に採取した根皮を「桑根白皮」「桑白皮」といい、消炎・去痰・利尿などに用いている。また、葉を集めて乾燥したものは「桑葉」と呼ばれ、これも生薬として使われている。桑の葉はとくに晩秋の霜に当たったものが良品とされている。
桑の乾燥葉100g 中にはキャベツの60倍のカルシウム、総カロチンはホウレンソウの約10倍、血圧を下げるγ-アミノ酪酸も300~400mg と豊富。シトステロールなどの殺菌・消炎作用を持つステロール類、カビを抑える作用を持つカプロン酸、サリチル酸メチルなどが含まれる。
桑の葉を煎じて飲んでいると、血圧が下がったり、肥満を予防する効果があることは古くから経験的に知られてきたが、桑の葉には高血圧・高脂血症・糖尿病・ガンなどの生活習慣病を予防するすぐれた効果があることが、1992年から5年間にわたって神奈川県衛生研究所などが参加して行った「機能性食品の共同研究」(96年、神奈川県科学技術政策推進委員会発表)で明らかにされている。
それによると、桑の葉から抽出したエキスを使った動物実験の結果、①コレステロール値、中性脂肪値の改善(ウサギの実験)、②肝臓の脂肪と機能の改善(マウスの実験)、③血糖値の上昇を抑え糖尿病を予防する(ラットの実験)、④インスリンの分泌不足とイスタリン分泌細胞の破壊を防止する、⑤体脂肪を抑制、脂肪の排泄量を増やす(ラットの実験)、⑥正常血圧には影響を与えずに高血圧を下げる(ラットの実験)、⑦緑黄色野菜や緑茶と同様に、ガンの予防に効果がある(ラット・マウスの実験)などが確かめられている。また、肥満を防止し内臓脂肪を抑制してダイエット効果のあることが、群馬県医療短期大学の下村らの研究によって報告されている(1996年、日本肥満学会)。
これら一連の研究の中でとくに注目されたのは、血糖値を抑制し糖尿病を予防する効果で、その機能性成分として桑の葉に特異的に含まれる1-デオキシノジリマイシン(DNJ)の作用が明らかにされた。DNJは、糖質を分解するα-グルコシターゼという酵素の働きを阻害し、ブドウ糖の吸収を阻害することによって血糖値の上昇を抑制すると考えられている。この効果は糖尿病発症ラットで確認され、神奈川県衛生研究所では、ヒト成人においても同様の効果があることを報告している。このDNJ は桑の葉以外の植物には見出されておらず、桑葉には乾燥量で約0・1%のDNJが含まれている。
健康食品としての桑の葉は、お茶として飲用するティーパック、エキスを固めた粒状タブレット、顆粒粉末など、さまざまなタイプのものが市販されている。