○馬蘭子(ばりんし)
中国の北部から東北部、朝鮮半島に分布するアヤメ科の多年草ネジアヤメ(Iris pallasii)の種子を用いる。神農本草経には蠡実、名医別録には茘実とある。根は馬蘭根、花は馬蘭花、葉は馬蘭葉といい、これらも薬用とする。花が小型のアヤメのように美しいため日本でも観賞用に植栽され、葉がねじれているためネジアヤメ(捩菖蒲)と呼ばれている。
種子にはパラソームA・B・Cなどが含まれ、避妊作用や抗癌作用などが報告されている。漢方では清熱燥湿・止血の効能があり、黄疸型の肝炎や下痢、性器出血、鼻血、咽頭腫痛などに用いる。蛇の咬傷やキノコ中毒にも効果があるといわれている。
馬蘭根、馬蘭花、馬蘭葉にはいずれも清熱・解毒の効能があり、おもに咽頭の炎症に用いられる。中国では古くから抗癌薬として使用されており、1996年には製剤化されている。