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水曜日, 10月 26, 2005

ケフィアについて

○ケフィア

 ケフィア(ケフィールとも)の名は我が国ではヨーグルトほどポピュラーではなかったが、コーサカス地方で常用される歴史的な発酵乳飲料(乳酸菌飲料)で、近年その健康への効果が再認識されて一挙にクローズアップされてきた。ちなみにヨーグルトは主に牛乳に乳酸菌(ブルガリア菌、テルモフィルス菌、ラクチス菌など)を加えて発酵するが、ケフィアは現地では羊、山羊、牛の乳を一度過熱、冷却した後、ケフィア菌(種菌)を加えて一昼夜発酵させる。するとケフィアグレインとも呼ばれる黄色のカリフラワー状の塊ができるので、そこへ数倍量の加熱殺菌済み冷却乳を添加し、2~3日してから飲むことが行われている。

 ケフィア菌は乳酸桿菌、乳酸球菌などの乳酸菌、および特殊な乳糖発酵酵母からからなるが、その発酵過程はまず乳酸菌発酵によって酵母の繁殖に適した酸性条件が作られ、次いで酵母によるアルコール発酵でケフィアに酸味と泡立ちが与えられる。

 類似の発酵乳に中央アジアの遊牧民が馬乳から作るクミスがあり、腸疾患や貧血などへの薬効が認められているが、ケフィアについては早くも1877年にロシアの学者が胃腸病、便秘、下痢、糖尿病への効果を報告、1908年にはロシア生まれのフランス人でノーベル生理医学賞を受賞したメチニコフが「ケフィアは腸内の悪玉菌を抑え、免疫能や生理機能を高め、動脈硬化を改善し、老化を防止する」という主旨の長寿論を発表した。この頃からコーサカス地方の住民が長寿であることに強い関心が払われるようになったが、特に1970年代以降は世界的に研究が進み、アメリカ、旧ソ連、ハンガリー、日本などで相次いでケフィアの血中コレステロール低下作用、心臓・腎臓病の改善、肥満の解消、肝臓の再生機能の賦活、ウイルス感染抑制作用、ガン細胞増殖の抑制などの研究発表がされた。

 制ガン効果については日本国立予防衛生研究所、久保道徳(近畿大学薬学部)、九州大学農学部など日本の研究に見るべきものがある。久保はICR系のマウスのエールリッヒ固形腫瘍に対するケフィアの抗腫瘍作用を経口投与で検討し、有効であることを確認した研究論文の中で、「これらの抗腫瘍作用は、腫瘍作用に対する直接作用ではなく、免疫系、特にマクロファージを介した作用であることが明らかにされつつある」と述べ、「ケフィアに抗腫瘍作用が経口投与で認められたことは意味深い」と結んでいる。

 なお、ケフィア菌(種菌)を入手して自分で加えて発酵させるのがヨーグルトキノコだが、よい菌を選び、作り方と管理法に慣れないと雑菌が混入して腐敗、食中毒を起こす恐れがあるので十分注意しなくてはならない。

マリアーナケフィール