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木曜日, 12月 06, 2012

呉茱萸

○呉茱萸(ごしゅゆ)

 中国の長江流域、広東省、海南省、広西チワン族自治区、陝西省などに分布するミカン科の落葉低木ゴシュユ(Evodia rutaecarpa)の成熟する少し前の未成熟果実を用いる。そのほかホンゴシュユ(E.officinalis)の果実なども利用される。

 呉茱萸は中国原産であり、呉というのは江蘇省一帯のことである。日本にも江戸時代に薬木として渡来し栽培されているが、雌株だけだったため種子のない果実しかできなかった。なお日本ではグミに茱萸の漢名を当てているが、これは誤用であり、中国で茱萸といえば呉茱萸あるいは山茱萸のことである。ちなみに中国ではゴシュユの種子から油を搾ったり、葉を黄色染料に用いている。

 薬用にされる未成熟果実は直径5mmくらいの小さな偏球形で基部に果柄がついている。独特の強い臭いがあり、味は辛くて苦い。呉茱萸の成分にはアルカロイドのエボジアミン、ルテカルピン、シネフリン、鎖状テルペンのエボデン、苦味成分のリモニン、芳香成分のオシメン、サイクリックGMPなどが含まれ、駆虫、抗菌、鎮痛、健胃作用などが知られている。近年、エボジアミンにカプサイシンと同様のバニロイド受容体を介した脂質代謝促進作用が認められ、肥満防止に効果があるとして注目されている。

 新鮮な果実は服用すると嘔吐を起こすこともあり、1年以上経過したものを用いる。また多量に服用すると咽に激しい乾燥感が生じる。漢方では呉茱萸は大熱の性質があり、厥陰肝経の主薬とされ、温裏・疏肝・止痛の効能がある。とくに虚寒による腹痛や脇痛の常用薬であり、嘔吐や頭痛などにも用いる。この効用は乾姜とよく似ているが、乾姜が上焦を温めるのに対し、呉茱萸は下焦を温めるといわれ、とくに下腹部痛や生理痛、下痢などに効果がある。民間では浴湯料として知られ、腰痛や冷え性などに用いられている。