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木曜日, 8月 30, 2012

薫陸香

○薫陸香(くんろくこう)

 薫陸香の名は「名医別録」に収載されているが、本草綱目では乳香と薫陸香は同じものとして扱われている。現在、中国では一般に薫陸香は乳香の別名とされている。しかし、乳香はカンラン科の植物の樹脂であり、薫陸香はインドの乾燥高地に自生する同属植物のボスウェリア・セラータ(Boswellia serrata)の樹脂と考えられている。

 この樹脂はインドではサライグックル(Salai guggul)と呼ばれ、一般にインド乳香と呼ばれている。かつて古代オリエントやエジプトでは用いられた乳香がインドに伝わり、インドではこれとよく似たボスウェリア・セラータの樹脂に本物の乳香を混ぜて加工したものを用いていたが、5~6世紀にこれが中国に伝わり薫陸香し呼ばれた。

 8世紀には本物の乳香がアラビアから伝わるようになったため、乳香と薫陸香の区別が曖昧になったと考えられる。また同じウルシ科の植物で地中海沿岸に産するものの樹脂をマスチック(Mastic)といい、古代オリエントでは口中剤としてチューインガムのように噛む習慣があった。これも薫陸香や乳香と混同されていたが、現在では洋乳香という。この洋乳香はギリシャのキオス島に多く産することからキオス・マスチックといい、インドに産する薫陸香はインデイアン・マスチックという。