○豚肉
豚肉は食肉の中で日本人の年間消費量が最も多い。豚は食用以外の目的では飼育されなかった家畜であるが、その歴史は古く、中国やギリシャでは紀元前から、日本では日本書紀に豚の飼育に関する記述が残されている。現在、わが国で飼育されている豚のほとんどが大ヨークシャー種、ハンプシャー種、デュロック種、ランドレース種のいずれかを掛け合わせた雑種である。
豚はヒレ、ロース、モモ、肩、バラの部位に分かれるが、肉質の硬さに大きな差はなく、さまざまな料理に利用できる。ただし豚肉は寄生虫の心配があるため、生では食べることができない。十分に中まで加熱することが大切である。無菌豚と呼ばれるSPF豚は特定の病原菌に感染していない豚のことで、日本ではマイコプラズマ性肺炎、豚萎縮性鼻炎、豚赤痢、トキソプラズマ病、オーエスキー病の5種類の病原菌を指す。SPFはSpecific(特定)、Pathogen(病原菌)、Free(不在)の略。
豚肉はタンパク質と脂質の供給源であり、肉類の中ではビタミンB群が多い。特にビタミンB1は牛肉の約10倍もあり、豚肉が疲労回復によいといわれるのはそのためである。ビタミンB1は炭水化物をエネルギーに変えるために必要な物質で、B1が不足すると疲れやすくなる。部位の中ではヒレ肉やモモ肉に多い。
豚レバーは日本人に不足気味といわれている鉄分とビタミンB2を豊富に含んでいる。脂肪にはコレステロールを下げる働きのある不飽和脂肪酸のオレイン酸を多く含むが、飽和脂肪酸の含有量も多いので過剰摂取には注意したい。
長寿県で知られる沖縄では、豚肉・昆布・豆腐を長寿三大食品と呼んでいるが、豚肉は下茹でしてから使うのが一般的だ。脂肪の多い豚肉を茹でることで余分な脂肪を落とし、かつ栄養の高いタンパク源として伝統的に食してきたことが、沖縄の長寿を支えてきたといえる。