○吉草根(きっそうこん)
北海道から九州、朝鮮半島、台湾に分布するオミナエシ科の多年草カノコソウ(Valeriana fauriei)の根および根茎を用いる。中国ではカノコソウなどの根茎がクモの足に似ているため蜘蛛香という。
根には精油が含まれ、甘松香に似た芳香があるため、和の甘松香ともいわれている。同属植物のセイヨウカノコソウ(V.officinalis)の根は、薬用のワレリアナ根(バレリアン:Valerian)として知られる。
日本では江戸時代に蘭方医学の影響により、ワレリアナ根の代用生薬としてカノコソウが知られるようになった。日本薬局方にもカノコソウの名前で収載されている。日本の市場品はほとんど北海道で栽培されている北海吉草といわれるエゾカノコソウである。日本産の吉草根はワレリアナ根よりも精油を多く含み、優秀な品種とされている。
カノコソウの根茎は精油8%を含有し、成分にはボルニールイソバレレイトやケッシルアルコールなどが含まれ、鎮静作用などが認められている。吉草根やワレリアナ根のチンキは鎮静、鎮痙薬として動悸やヒステリー症状、あるいは虚脱状態の興奮剤として用いられる。現在、市販されている婦人用保健薬などによく配合されている。
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