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土曜日, 2月 23, 2013

紫梗

○紫梗(しこう)

 インドやビルマなどに産するカイガラムシ科(アリマキ科)のラックカイガラムシ(Laccifer lacca)が樹木に分泌した膠物質を用いる。中国でも雲南省や四川省に産し、一般に紫草茸といわれている。日本ではこれを没薬あるいは花没薬といい、正倉院にも没薬の名で収蔵されている。

 ラックカイガラムシの雄は体長2~3mmくらいで朱紅色をしているが、雌には肢がなく円球状をしている。孵化した後に寄生している樹木の枝葉に集まり、雌は樹液を吸って紫色の膠質のものを分泌する。最初は半流動体であるが、乾燥すると固くなる。次第に枝はこの膠質物質で取り巻かれ、十分に形成された頃に収穫する。これをスティック・ラックといい、紫梗として用いる。

 外観は紫色で堅く、熱にあうと軟化して粘る。これからアルカリ性水溶液で抽出された赤色染料はラック色素(胡臙脂)であり、絵の具や食品の着色料などに用いられる。残りを精製したものからセラックができるが、これはワニスや絶縁材料、錠剤などのコーティング剤として用いられる。紫梗の色素成分はアントラキノン化合物の一種であるラッカイン酸である。

 漢方では清熱解毒の効能があり、麻疹や斑疹、月経過多、帯下などに用いる。粉末を外用薬として出血や湿疹、潰瘍に用いる。近年、紫梗エキスが皮膚ケラチノサイトからのサイトカイン産生を抑制し、皮膚症状を改善する効果があると報告されている。ちなみに中南米ではウチワサボテンに寄生するエンジムシ(臙脂虫:コチニールカイガラムシ)に由来するコチニール色素が染料などとして同様に利用されている。

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