○EPA
かつてはエイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid)と呼ばれていたが、近年、イコサペンタエン酸に改められた。ただし略称のEPAはそのまま使われている。炭素数20個、二重結合5ヵ所のn-3系不飽和脂肪酸で、融点はマイナス54℃。イワシやタラなどの魚油に多く含まれる。血液中の中性脂肪やコレステロール濃度の低下作用、血小板凝集能の抑制作用等が認められている。
EPAが注目されるようになったのは、1970年代にデンマーク・オールボア病院のダイアベルグがイヌイット(エスキモー人)を対象に行った疫学的調査の結果によってである。それによると、魚やアザラシを主食とするイヌイットは肉食中心にデンマーク人に比べて動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞などの生活習慣病が大幅に少なかった。例えばデンマーク人の死亡原因が心筋梗塞だけで40%以上も占められているのに、イヌイットは発症率が高い60歳以上だけを対象にしても3.6%でしかなかった。その原因がイヌイットの食生活にあると考えて研究の結果、魚魚肉に含まれるEPAの有効作用にあるとわかったのである。
最近の研究では、横山光宏(神戸大学)日本人約2万人を対象にした大規模臨床試験(5年間の追跡調査)で、EPA薬の摂取により心臓病のリスクが19%減少したという試験結果を発表している(2005年、米国心臓協会学術集会)。EPAは健康食品素材としても広く使われており、(財)日本健康栄養食品協会による「イコサペンタエン酸(EPA)含有精製魚油加工食品規格基準」(1986年6月一部改正)がある。日本水産は中性脂肪が気になる人向けの飲料としてEPAとDHAを関与成分として初のトクホ「イマーク」を販売している。
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