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金曜日, 9月 30, 2011

フノラン

○フノラン

 フノラン(funoran)は海藻の布海苔に多く含まれている粘質多糖類で、α-ガラクトースとβ-ガラクトースが交互に鎖状に結びついた構造をしている。

 野田宏行(三重大学)は、高血圧や高脂血症、移植ガンへの効果をマウスを用いて実験し、フノランが血圧効果や動脈硬化指数の大幅な改善、血中ナトリウムの低減、エールリッヒ腹水ガンやザルコーマ180固形ガンなどに対し顕著な発育抑制と延命効果があったことを報告している。また、糖尿病に関しては長村洋一(藤田保健衛生大学)の高血糖マウスに対して布海苔顆粒を投与した実験があり、硫酸基を持つフラノンの分子構造が糖の取り込みを抑制すると推定している。

 フノランは歯の再石灰化を増強するキシリトールの働きを促進させる作用もあり、トクホの「歯を丈夫にするガム」の関与成分としても使われている。

木曜日, 9月 29, 2011

光明石

○光明石

 光明石は岡山県高梁市の阿部鉱山から産出する薄緑色の鉱石で、1956年に偶然発見された。同地はウラン産出地として名高い鳥取・岡山県境の人形峠に近いことから、ここでもウラン鉱脈があるのではないかとの予測のもと、発掘調査が実施された。その結果、ウランの埋蔵は確認されなかったが、調査の副産物のような形で発見されたのが、この石である。

 発掘作業をした人々から腰痛が消えた、手がすべすべになった等の報告がなされたため、調査の案内をした現地の佐藤峰次が、岩石1トンあたり50kg程度含まれる薄緑の石が原因なのではないかと考えて成分分析を依頼したところ、次のような十余種にのぼるミネラル分が検出された。<含有・ミネラル分>塩化カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、ケイ酸など

 これらのミネラル分については、マグネシウムとカルシウムに鎮静効果、炭酸に血管拡張・血液循環促進効果、塩化イオンに温熱効果、そして硫化イオンに皮ふを軟化させる効果が認められており、これらの成分があいまって、皮膚スベスベ効果、腰痛解消効果等をもたらしていたわけである。

 佐藤はこの石を、多くの病人の治療を助けたとされる光明皇后(奈良時代)にちなんで光明石と命名し、1968年、当時の厚生省に医薬部外品としての承認申請を出して認められた。現在のところ、医薬部外品としての承認は鉱石では唯一である。

 当初、佐藤が保持していた採掘・販売権は、その後設立された株式会社光明石製造所(本社=東京都足立区)に引き継がれた。また、光明の発音は、命名当時は皇后の名前のとおり、「こうみょう」とされたが、のちに耳になじみやすい「こうめい」と変わり、現在では「こうめいせき」と呼ばれている。

 医薬部外品承認により表記が認められている効果は、①疲労回復、②冷え性、③神経痛、④リウマチ、⑤肩のこり、⑥腰痛、⑦産前産後の冷え、⑧痔の8つの症状に対する効能効果である。この効果を最大限引き出すため、同製造所では採掘された光明石を破砕し、風呂に浸して使用する形にして供給・販売しており、現在、ここからの原料供給を受けた数社の販社が、独自商品の開発を含めて市場展開を行っている。

 光明石を浸した湯は、前記のように豊富なミネラル分を含むことから、入浴すると天然温泉と同等の、またはそれに近い効能を得られる。そのため、家庭用のほか各地のスパやホテル、旅館、学校などの浴場にも導入され、光明石人口温泉の表示のもと、広く利用されるようになっている。

水曜日, 9月 28, 2011

CMO

○CMO

 CMOはcetyl myristoleate(セチルミリストレイン酸エステル)の略。不飽和脂肪酸のミリストレイン酸のエステル化合物で、関節炎に対してグルコサミンコンドロイチン硫酸を凌ぐ効果があると米国で注目された物質である。ミリストレイン酸はn-5系の脂肪酸だが、従来のn-3、n-6、n-9系の主要に扱ってきた栄養学ではまだ代謝の機構について十分に研究されていない。

 CMOが哺乳類の生体に存在することは、1971年に米国国立衛生研究所(NIH)の研究員だったH・ディールによってスイスアルビノマウスの体内から発見されたが、その後、牛や鯨のほか、他のげっ歯類の動物でも確認されている。ヒトは進化の系統樹からみるとげっ歯類から遠くないため、ヒトの身体でも重要な役割をしている可能性があるという。

 ディールは当時、各種動物に作用する消炎剤の研究をしていたが、その研究の一環として人工的に関節炎を起こさせるためフロイントアジュバント(熱処理したバクテリア)を動物に注射していた。その際、スイスアルビノマウスだけが炎症を起こさなかったことに気づき、炎症から身体を保護している物質としてCMOを特定した。予想通り炎症の保護をしていると推測できる結果が得られたのである。この消炎作用についてディールは、、哺乳類全体に適応できる手法として米国特許を取得している。

火曜日, 9月 27, 2011

米糠アラビノキシラン

○米糠アラビノキシラン

 アラビノキシラン(arabinoxylane)は多糖のアラビナン(構成糖はアラビノース)とキシラン(構成糖はキシロース)からなるヘミセルロース(半繊維素)で、小麦フスマの成分として知られているが、米糠やトウモロコシなどにも多く含まれている。小麦フスマはそのまま食物繊維素材として利用されることが多いが、米糠から分離されたアラビノキシランは酵素反応によって得られる誘導体がつくられており、免疫賦活物質として研究が活発に行われている。

 米糠アラビノキシランは誘導体は、大和薬品がアメリカの免疫学者マンドゥ・ゴーナムらの協力を得て開発したもので、米糠のヘミセルロースを素材に、シイタケ菌(DAIWA-A95菌)の培地濾液中に含まれる炭水化物培養分解複合酵素を反応させるという修飾方法がとられ、これによってヘミセルロース本来の複雑な基本構造を損なうことなく反応性を高め、免疫賦活活性を与えることに成功したものだ。

 この生理活性物質の抽出技術の確立は1995年のことで、以後本格的な基礎・臨床試験が開始され、多くの動物実験やガン患者への経口投与などを通じて、顕著なNK細胞活性の向上や、リンパ球のT細胞、B細胞の活性が高まることが報告されている。ゴーナムらはさらに、HIV感染症(エイズ)に対して米糠アラビノキシラン誘導体が有効性を示すとする基礎実験結果を報告して注目された(96年7月、第11回国際エイズ会議)。また国内でも大学や医療機関で糖尿病・慢性肝炎に対する効果試験が行われている。

月曜日, 9月 26, 2011

β-グルカン

○β-グルカン

 グルコース(ブドウ糖)を構成糖とする単一多糖類を総称してグルカンという。植物や動物、キノコ類、酵母に多く存在している。グルカンの代表はデンプン、グリコーゲン、セルロースである。

 グルカンは多数のグルコースが結合(脱水縮合)したものだが、結合する炭素の位置や結合の仕方の違いよって性質の異なるものとなる。例えばデンプンは食べると消化吸収されてエネルギー源になるが、セルロースは食べても消化吸収されない。これはグルコース同士の結合の違いからくるものである。グルコースの結合には、ヒドロキシ基(水酸基)が下にくるα型と、上にくるβ型とがある。また、結合している炭素の位置によって「1.4結合」や「1.6結合」などと示される。デンプンはα-1.4結合のα-グルカン、セルロースはβ-1.4結合のβ-グルカンである。

 β-グルカンはキノコ類に多く含まれ、抗腫瘍活性が認められていることから抗がんキノコの主要成分として重要である。これまでに、シイタケ子実体から得られたレンチナン、カワラタケ培養菌糸体からのクレスチン、スエヒロタケ培養の培地生産物であるシゾフィランが抗ガン剤として医薬品になっている。レンチナンとシゾフィランは、β-1.3結合した主鎖とβ-1.6結合の側鎖からなるβ-グルカンである。クレスチンは、β-グルカンにタンパク質が結合した複合糖質である。

 抗腫瘍効果が高いといわれているアガリクス・ブラゼイ・ムリル(姫マツタケ)には中性多糖、酸性複合多糖、タンパク多糖、核酸成分などが存在している。中性多糖はβ-1.6グルカンやキシログルカン、酸性複合多糖はガラクトグルカンのウルナイド、タンパク多糖はペプチドグルカン、核酸成分はリボヌクレオチドタンパクである。

 このように、一つのキノコの中にもこれだけ多くの多糖が含まれており、それらの作用もまた違ってくる。伊藤均(三重大学医学部)の研究によると、マウスを使って抗腫瘍効果を検討した実験では、β-1.6グルカンが最も高い抑制率を示したという。また宿前利郎(東京薬科大学)の報告では、サルノコシカケ科やシメジ科、ハラタケ科のキノコに多く含まれるβ-1.3グルカンには、経口投与によっても顕著な抗腫瘍活性が認められたとしている。

日曜日, 9月 25, 2011

植物ガム

 植物ガムは、植物の種子や樹皮に含まれる細胞膜の粘脂物で種子ガムと樹液ガムがある。種子ガムはグァーガム、マメ科イナゴマメの種子から得られるローカストビーンガム、マタタビ科タラの種子から得られるタラガムなどがある。樹液ガムにはアラビアガム、アオギリ科カラヤの幹から得られるカラヤガム、マメ科トラガントの幹から得られるトランガントガムなどがある。

○グアガム

 インドやパキスタンに生育するマメ科植物グァーの種子から採られる植物ガムで、ガラクトースとマンノースからなる高分子多糖類である。グアガムは水溶性の食物繊維として、便通や便性の改善などの整腸作用のほか、血糖値上昇抑制作用、コレステロールの低減作用などが古くから知られている。ただ粘度が高く、一般の食品に配合すると味や物性の面で問題があるため、微生物の酵素で加水分解して低分子化し、粘度を下げて利用されている。トクホの「おなかの調子を整える食品」の関与成分の一つである。

○アラビアガム

 アフリカのスーダンやナイジェリアに生育するマメ科の潅木アカシア・セネガルの樹液から得られる植物ガムで、ガラクトース、アラビノース、ラムノース、グルクロン酸などを主成分とする粘質多糖類である。グアガムに比べると粘度が非常に低いため、アイスクリームの安定剤など食品加工業界で幅広く使われている。アラビアガムは難消化性なので食物繊維としての機能性もあるが、生理作用の研究は少なく、便量の増加による整腸作用や腸内環境の改善などが報告されている程度である。

○サイリウム

 インド産のオオバコ科の植物ブロンドサイリウムの種皮から得られる植物ガムで、正式にはサイリウムガムという。キシロース、アラビノース、ラムノース、ガラクツロン酸からなる粘性多糖を主成分に、ペクチンやヘミセルロースなどが含まれている。食物繊維としての機能は整腸作用や血糖値の安定、コレステロール低下作用、ダイエット効果などが報告されている。

○微生物ガム

 糖を基質として微生物が発酵生産するガム類を総称して微生物ガムという。多くは食品添加物として使われているが食物繊維としての機能もある。デキストランはショ糖に乳酸菌を作用させて作られる増粘性の多糖で、医薬品に利用されている。カードランはエチレングリコールにグラム陰性細菌を作用して生産されるゲル化性の多糖で、食物繊維を約90%含む。キサンタンガムはグルコース基質としてグラム陰性細菌によって生産される増粘性の多糖で、食物繊維としてコレステロール低下作用が報告されている。プルランはデンプンを基質にして黒酵母によって生産される低粘度の多糖で、食物繊維を約80%含んでいる。

土曜日, 9月 24, 2011

水溶性食物繊維(3)

○難消化性デキストリン

 難消化性デキストリンは、デンプンの加水分解物であるデキストリンを酵素で分解し、難消化性部分を分離生成した低分子の水溶性食物繊維である。デキストリンに水を加えて溶解し、アミラーゼによる加水分解、脱色・脱塩などの処理をして得られる。

 生理機能としては整腸作用のほか、血糖値の上昇抑制、コレステロールの低下作用が認められている。また、口腔内で唾液アミラーゼの作用を受けにくいため虫歯菌にも利用されない。難消化性デキストリンは水によく溶け、低粘性・低甘味で食品本来の味やテクスチャーを損ねることがないため、飲料や菓子、練り製品、スープなど多くの食材に幅広く用いられている。トクホの「おなかの調子を整える食品」での許可実績が圧倒的に多く、2005年2月にスタートした。

○イヌリン

 イヌリンはキク科植物のダリア、ゴボウ、キクイモなどの塊茎に含まれる貯蔵物質で、フルクトースが20~30個程度結合した多糖類の一種である。消化酵素ではほとんど消化されないため食物繊維として利用されるほか、脂肪と似た食感が得られることから、洋菓子類などで脂肪摂取量を低減した製品に応用されている。イヌリンはこれまで植物の根から抽出されるのが一般的だったが、酵素を使って砂糖から直接製造する技術も開発されている。

○フルクタン

 フルクトースが多数結合した単一多糖で、食品ではラッキョウに多くて含まれている。水溶性食物繊維として機能性があり、便通改善、コレステロールの低下、利尿作用などがある。福井県農業試験所と同加工食品研究所は、ラッキョウ球根部からフルクタンを抽出する技術を開発し健康食品として製品化したほか、フルクタン入り食パンやパスタなども製造している。

○ポリデキストロース

 米ファイザー社が開発した水溶性食物繊維で、グルコース、ソルビトール、クエン酸を89:10:1の割合で混合し、高温真空化で重合反応させて得られる合成多糖である。ヒトの消化酵素で分解されずに大腸へ達し、腸内細菌にも利用されにくいためエネルギー量は1gあたり約1kcalと低い。便量の増加、消化管通過時間の短縮、便性の改善などが認められている。ポリデキストロースを配合した機能性飲料「ファイブミニ(大塚製薬)」は、日本における食物繊維ブームの火付け役であり、トクホ商品にもなっている。

金曜日, 9月 23, 2011

水溶性食物繊維(2)

○カラギーナン

 カラギーナンは、寒天と同じ紅藻類のキリンサイ(ミリン科)、トチャカ(スギノリ科)、オキツノリ(オキツノリ科)の細胞間質に存在する粘質多糖で、D-ガラクトースと硫酸を主成分とする酸性多糖である。

 ゲル化剤としてプリンやジャムに、増粘剤としてケチャップなどに利用されているほか、練歯磨やシャンプーにも配合されている。食物繊維としての機能は血中コレステロールの上昇抑制、血液の凝固防止、胃潰瘍の改善などが知られている。

○アルギン酸

 アルギン酸は、渇藻類の昆布やワカメ、ヒジキなどの細胞間質に存在するヌメリ成分で、マンヌロン酸とグルロン酸の2種類のウロン酸がβ-1.4結合した粘質多糖類である。褐藻類を薄いアルカリ液で煮て、アルギン酸ナトリウムやアルギン酸カリウムとして抽出される。水に溶かすと粘度の高い液体となり、食品の安定剤としてアイスクリームやジャム、ゼリーに使われている。

 アルギン酸を分解する酵素はアルギナーゼで、細菌や海中に生息する生物には存在するが、ヒトの消化液には含まれていないため難消化性の食物繊維として機能する。

 アルギン酸の生理作用としては、便量の増加、排便の促進などの整腸作用、コレステロールの上昇抑制作用がある。また、アルギン酸カリウムは腸内でナトリウムを吸着して糞中に排泄させ、血圧上昇を抑制する働きがある。このほか、アルギン酸ナトリウムの分子を小さくして粘度を低くした低分子アルギン酸はコレステロールの吸収を抑えることがヒト試験で明らかにされており、清涼飲料水に配合されてトクホ製品になっている。

木曜日, 9月 22, 2011

不溶性食物繊維

○セルロース

 セルロースは植物の細胞壁の主成分で、自然界に最も多く存在する単一多糖類である。ヒトはセルロースを分解する酵素(セルラーゼ)を持たないため小腸で消化吸収されることはなく、もっぱら食物繊維として機能性を発揮する。セルロースは日常の食事で摂取する食物繊維の大部分を占めており、特に穀類の外皮に多く含まれている。セルロースの生理作用としては、便量の増加や便秘改善などの整腸作用、悪臭物質や有害物質を減らして腸内環境を改善する作用がある。

○小麦ふすま

 小麦フスマは小麦の皮や胚芽の混合物で、小麦を精白したときにカスとして出る。成分の約60%は多糖で占められ、その内の2/3はヘミセルロース(アラビナンとキシランからなるアラビノキシラン)である。

 小麦フスマの生理作用としては大腸ガン(結腸ガン)の予防効果が知られているが、このほかにも腸内有用菌(ビフィズス菌)の増殖、コレステロール上昇抑制、血圧上昇抑制、ナトリウム排泄促進などの効果が報告されている。小麦フスマには繊維以外に、フィチン酸やセレン、フェノール、ステロール、ビタミンEといった抗酸化成分も含まれている。食品としてはシリアルやビスケットとして供せられる。

○リグニン

 リグニンは、セルロースやヘミセルロースと共に植物の細胞壁を形成している高分子化合物である。セルロースやヘミセルロースは多糖類だが、リグニンは芳香族炭化水素重合体(ポリフェノールの重合物)である。木材乾燥物に約30%も含まれていることから木質素とも呼ばれている。リグニンを多く含む食品はカカオ、ピーナッツ、緑豆などの豆類である。カカオマス(カカオの胚乳を焙煎しペースト状にしたもの)にはリグニンが9.8%(セルロースは3.4%、ヘミセルロースは4.2%)含まれており、これを原料とするチョコレートは1.5~4%のリグニンを含有している。ココア飲料にも多い。

 リグニンはヒトの消化酵素で分解されないためほとんど吸収されない。また大腸の腸内細菌でも発酵・分解されにくいので、便のかさを増やし便性を改善して整腸効果を発揮する。さらに胆汁酸を吸着して体外へ排出する働きがあり、血中コレステロールの増加を抑制する作用がある。このほか発ガン物質として結合した大腸ガンを抑えるという報告もある。

水曜日, 9月 21, 2011

水溶性食物繊維(1)

○ペクチン

 ペクチンは果実や野菜類など多くの植物に含まれる天然物質で、細胞間の接着剤として、また組織の安定剤として機能している。ガラクツロン酸(ウロン酸の一種)が鎖状にα-1.4結合したペクチン酸(複合多糖)が主成分で、植物組織中ではセルロースなどと結合し、水に不要のプロトペクチンとして存在している。未熟な状態の果実に含まれているプロトペクチンは、成熟するに従って酵素の作用をうけペクチン酸に変わる。プロトペクチンを水や希酸で加熱すると水溶性のペクチンになる。

 ペクチンはゲル化(液体をゼリー状にする)作用、保水性、粘性に優れているため、ジャムのゲル化剤、マヨネーズの乳化剤、ケチャップの増粘剤など食品加工で幅広く使われている。また微生物培養地、、胃腸薬などにも利用されている。

 食物繊維としてペクチンの生理作用は、上記のゲル化能、保水性、粘性により、糖質の消化吸収を遅らせて血糖値の上昇を穏やかにし、インスリンの分泌を節約する作用、胆汁酸の吸収を阻害してコレステロールを低減する作用などが知られている。大腸に達したペクチンは腸内細菌による発酵をうけ、その大部分が分解されて短鎖脂肪酸となり1gあたり約2kcal(ショ糖の半分)のエネルギーとなる。

○こんにゃくマンナン

 グルコマンナンともいう。コンニャクイモの塊茎に含まれる天然物質で、グルコースとマンノースがβ-1.4結合した複合多糖である。こんにゃくマンナンに水と消石灰を加えて加熱すると、凝固して食用コンニャクとなる。

 コンニャクマンナンは保水性が高く、水を吸収すると膨潤して容積を増す。また、粘性の高い水溶液をつくる性質がある。ヒトの消化酵素では分解されないため、高容積・高粘度の状態で腸管を通過し、その過程で食物繊維としての機能を発揮する。生理作用としてコレステロールの低減、糖尿病の予防、腸の老廃物や有害物質の排出、肥満防止などが知られている。

火曜日, 9月 20, 2011

クロム

○クロム

 クロムは18世紀にシベリアで発見された元素で、元素記号Cr。銀白色の金属である。常温で安定しており、空気中、水中で錆びない。3価クロムと6価クロムとがあるが、食品中を含めて自然界に存在するクロムはほとんどが3価クロムであり、ヒトにとって必須微量元素のひとつである。ちなみに6価クロムは人為的に作られたものが多く、生体への作用は3価クロムとは全く異なり、強酸化作用があって毒性が強い。

 ヒトが摂取したクロムは主に小腸で吸収されるが、吸収率は低く、0.5~2%程度とみられている。したがって、生体内に存在するクロムの量は極微量であり、また加齢とともに減少する唯一のミネラルである。生体内では、糖質代謝、コレステロール代謝、結合組織体者、タンパク質代謝の維持に関与しており、インスリンを活性化して、糖尿病や高脂血症を予防する効果がある。

 厚労省の「日本人の栄養所要量・食事摂取基準策定検討委員会」がまとめた基準(2005年版=平成17~21年の5年間使用)によると、クロムの推奨摂取利用は1日あたり・男性18~49歳40ug、50~69歳35ug、70歳以上30ug、女性18~69歳30ug、70歳以上で25ugとなっている。多く含まれている食品としては、可食部100gあたりで、干しひじき270ug、わかめ(乾)100ug、マイワシ(丸干し)76ug、アナゴ48ug、あさり45ug、ベーコン39ugなどがある。

 前記のように食品中の含有量が微量で体内への吸収率も低いことから、クロムは現代人には不足しがちなミネラル分のひとつに数えられている。クロムが不足すると、インスリン活性・感受性の低下、窒素代謝異常、体重減少、抹消神経障害、昏迷、角膜障害などが起こることがわかっている。とくにインスリン活性・感受性の低下は生活習慣病の一つである糖尿病の発症と密接につながっており、現代人にとってその対策が焦眉の課題となっている。というのも、日本人の糖尿病の95%はいわゆる「Ⅱ型」、つまりインスリン非依存型であり、インスリンは分泌されているにもかかわらず、活性が弱かったり、インスリンと結合する細胞のインスリン受容体の働きが悪くなったりするのが原因とみられている。これらはインスリン抵抗性と呼ばれ、血中にインスリンが相当量あるのにブドウ糖が細胞内に取り込まれず、血糖値が高いという状態(=Ⅱ型糖尿病)を引き起こす大きな要因ともなっている。

 一方、細胞内にインスリン抵抗性を改善する成分「GTF(グルコース・トレランス・ファクター=ブドウ糖耐性因子)」が存在する。GTFは1957年、米農務省人間栄養研究所理事であったウォルター・メルツ博士が豚の肝臓中から発見した物質で、博士はその核心をなす物質がクロムであることを確認した。クロムが不足すると、生体はこのGTFを作れなくなり、インスリン抵抗性を高める結果となる。逆にいえば、GTFは十分に足りている状態であればインスリン抵抗性は弱められ、糖尿病改善に大きな効果があると考えられたが、合成にはいたらなかった。

 その後、米ウィスコンシン大学フランク・マオ博士(内分泌学)らの研究チームがGTFの組織の詳細を解明、2000年には最先端のバイオテクノロジー活用により安定したGTFを作り出す技術が開発された。

 健康食品としてのクロムの最新製品は、このGTF技術を作ったもので、特に最近注目されているのがクロムフェリンである。これは、牛の初乳に含まれる微量のタンパク質ラクトフェリンにクロム酵母を結合させたもので、体内に取り込まれるとGTFに転換され、インスリン活性・感受性を高める働きをする。アメリカFDAの認可を受け、すでにアメリカ、オーストラリア、ドイツ、イギリス、フランス、オランダ、マレーシア、韓国、中国、台湾、日本などにおける臨床データで約80~90%の改善例が報告されているという。こうした新タイプの健康食品の開発は、糖尿病改善に新たな展望をもたらすことにもつながると目され、期待が集まっている。

日曜日, 9月 18, 2011

ミネラル

○ミネラル

 ミネラル(mineral)は、鉱物を意味する英語のマイン(mine)からきた言葉で、無機質といわれる。人体を構成する物質は60%が水(細胞内液、組織間液、血漿)、35^36%が有機化合物(タンパク質・脂質・糖質)で、ミネラル(無機質)は4~5%にすぎない。しかもその約半分は骨の主要成分であるカルシウムで、他の生体金属元素は遥かに少ない。にもかかわらず、それらは生体内の浸透圧の調整、体内物質の輸送、酸・塩基平衡、筋肉の維持機能、酵素の補助因子など、生命活動に不可欠の物質として存在しており、健康維持の上でも重要な栄養素であることが広く認められている。

 食品に含まれるミネラルは精製・加工の段階で失われることが多い。その一方で、加工食品に添加されるリンやナトリウムなどのミネラルは過剰摂取の傾向があり、現代の食生活ではミネラル類の摂取がアンバランスな状態になりやすいとも指摘されている。

 ミネラルは必須ミネラル(日々の食事から摂らなければならないもの)と非必須ミネラルに分けられ、現在、29種のミネラルが必須とされている。この内、生体内での存在量や必要量、食事からの摂取量が多いものを必須主要ミネラル、それ以外のものを必須微量ミネラルと呼んで区別している。

 なお、厚生労働省の健康増進法施行規則第16条では、亜鉛、カリウム、カルシウム、クロムセレン、鉄、銅、ナトリウム、マグネシウム、マンガン、、要素、リンの12種を栄養成分として定めている。

土曜日, 9月 17, 2011

ビタミン

○ビタミン

 糖質・脂質・タンパク質などが生体内で十分に機能するために必要な有機化合物の総称。生体内で合成できないか、きわめて合成されにくいため、食品などから摂取しなければならない。ビタミンという名称は、1911年にポーランドのC・フンクが米ぬかのエキスから白米病に有効な物質を遊離して、それが炭素・水素・窒素からなるアミノ化合物のアミン(amine)であると考え、生命(vita)に必要なアミン、すなわちビタミン(vitamine)と命名したことに始まる。

 1910年に農芸化学者の鈴木梅太郎が、精米時に捨てられる米糠に脚気を防ぐ成分が含まれていることを発見、その物質をオリザニンと名付けた。これがビタミンB1の発見である。ついで米国のE・マッカラムやH・スティーンボックらは牛乳やバターなど油脂分の中にも有効成分の存在を認め、前記のオリザニンを含むこれら未知の成分を脂溶性A「」「水溶性B」と名付けた。

 さらに1918年、米国のL・メンデルらはオレンジの酸性水溶性エキスに壊血病を防ぐ成分を発見、その翌年に英国のJ・ドラモンドがこれを「水溶性C」と名付けると共に、これらをビタミンと総称し、それぞれA・B・Cと符号をつけて呼ぶことを提案した。以後、順次発見されていく過程でアルファベット符号がつけられてきたが、後にそれがビタミンでないと判明したり、あるいは別の物質名で呼ばれることになったりしたことから、現在認められている13種類のビタミン類(脂溶性のビタミンA・D・E・K、水溶性のB1B2・B6・B12・C、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン)のアルファベット符号は飛び飛びである。また、これらのほかにビタミン様作用物質と呼ばれる有機化合物という。

 ビタミンは必要量はわずかだが必須の栄養素である。水溶性のビタミンは摂り過ぎた分は排泄されるが、脂溶性のものは過剰症が心配される。

金曜日, 9月 16, 2011

UC-Ⅱ

○UC-Ⅱ(非変性天然Ⅱ型コラーゲン)

 UC-Ⅱは英語名(Undenatured Type2 collagen)から名づけられたもので、その名のとおり、天然成分から抽出した、もとの自然の形が変性させられていないタイプのⅡ型コラーゲンである。Ⅱ型コラーゲンとは19種あることが知られるコラーゲンファミリーの中のひとつで、従来からよく知られているⅠ型コラーゲンとはアミノ酸配列が異なる。Ⅰ型が主に皮膚や腱に含まれるのに対して、Ⅱ型は軟骨や硝子体に多く含まれている。

 最近、関節の健康はもとより、美容・アンチエイジングに関与することが知られてきているⅠ型コラーゲンだが、健康食品等の形に加工する際、高温・化学処理等が行われると、もともと持っていた自然の活性が失われ、体内で消化吸収されにくくなってしまう。この欠点をカバーする形で開発されたのでUC-Ⅱであり、アメリカのインターヘルス社が登録商標を有する。多くのコラーゲン関連の健康食品がサメの軟骨などを原料としているに対し、若い鶏の胸骨から作られている点も大きな特徴といえる。

 開発に大きな功績があったのは、デビット・トレンザム博士で、博士を中心としたハーバード大学医学部グループならびにその他の研究機関が1993~1998年にヒト臨床実験を行い、効果を確認している。

木曜日, 9月 15, 2011

タンパク質

○タンパク質

 タンパク質はほとんどの生物の細胞に含まれる高分子窒素有機化合物で、糖質・脂質と共に三大栄養素の一つである。糖質や脂質は主にエネルギー源として利用されるが、タンパク質は筋肉、皮膚、臓器などを構成する基本物質として、また酵素やホルモン、免疫抗体、遺伝子などの生理活性物質としても機能している。タンパク質はアミノ酸が多数連結したポリペプチド鎖からできている。使われるアミノ酸は約20種だが、結合の配列順序が無数にあり、生成されるタンパク質も無数に近い。食品に含まれるタンパク質はヒトの体内でペプシンなどの消化酵素によりアミノ酸にまで分解される。そして、これらが材料となりDNAの遺伝情報に基づいて新たなタンパク質(体タンパク質)がつくられる。

 タンパク質には、アミノ酸だけが結合した単純タンパク質(アルブミン、グロブリン、グリテリン、プロラミン、プロタミンなど)、単純タンパク質が糖や脂質など他の物質と結合している複合タンパク質、熱や酸などで変性された誘導タンパク質(各種ペプチド類、ゼラチンなど)がある。タンパク質は生命活動によって体内で分解・再合成を繰り返すことで僅かずつは消費されるので、毎日必要量を補わなければならない。「日本人の食事摂取基準・2005年度」では、タンパク質の1日推奨量を成人男性で60g、女性で50gとしている。またタンパク質比率は男女とも20%未満、70歳以上は25%未満を目標量としている。

水曜日, 9月 14, 2011

脂肪酸

 脂肪酸は脂質を構成する基本成分で、8~22個程度の炭素が鎖状に結合して末端にカルボキシ基を持つ化合物(カルボン酸)である。炭素の数や結合の仕方の違いによって性質や機能の異なるさまざまな脂肪酸が存在する。脂肪酸は2炭素単位で生合成されるため、ほとんどの脂肪酸の炭素数は偶数個である。炭素数が6個以下のものを短鎖脂肪酸、8~12個のものを中鎖脂肪酸、14個以上のものを長鎖脂肪酸という。また、炭素数18個以上のものをまとめて高級脂肪酸ともいう。脂肪酸の構造は炭素(C)が鎖状につながり、それぞれの炭素に2個の水素(H)が結合した形をしているが、なかには炭素同士が二重に結合する箇所を持つものがある。二重結合を持たない脂肪酸を飽和脂肪酸、持つものを不飽和脂肪酸といい、性質や機能が大きく異なっている。

○飽和脂肪酸

 炭素原子は他の原子と結びつく手が4本、水素原子には1本ある。飽和脂肪酸では炭素原子は前後の炭素原子と手を結び合って、余った残り2本の手で上下に1個ずつの水素と手を結び合い、すべて炭素原子に水素が結合している。飽和では”水素をもうこれ以上受け入れることができない”という意味である。

 飽和脂肪酸は融点が高いため、常温で固体である。融点は炭素数が増えるに従って高くなる。ヒトよりも体温の高い牛や豚などの体内では液状になるものもあるが、ヒトの体内では凝固しやすく、血液の粘度が増して血行を悪くさせる。飽和脂肪酸を多く摂りすぎると、血中のコレステロールや中性脂肪が増えて動脈硬化の原因となる。「日本人の食事摂取基準・2005年度版」では、飽和脂肪酸エネルギー比率(総エネルギーに占める飽和脂肪酸の割合)の目標値を男女とも4.5~7%未満としている。

 飽和脂肪酸にはカプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などがある。これらは動物性脂肪やパーム油、ヤシ油などに含まれているが、含有量が多いのはパルミチン酸とステアリン酸である。また、ヒトの体内でも合成される。

○不飽和脂肪酸

 炭素と炭素が2本の手でつながることを二重結合といい、この結合を持つ脂肪酸を不飽和脂肪酸という。二重結合が一つの単価不飽和脂肪酸、2つ以上の多価不飽和脂肪酸がある。不飽和脂肪酸はいずれも炭素数が18個以上の長鎖脂肪酸だが、二重結合があるために融点が低く、常温で液状である。不飽和脂肪酸の融点は二重結合の数が増えるに従って低くなる。オリーブオイルに含まれるオレイン酸(炭素数18、二重結合数1)の融点は14℃だが、魚油に含まれるDHA(炭素数22、二重結合数6)の融点はマイナス78℃である。

 飽和脂肪酸は血漿コレステロール濃度を上昇させるが、不飽和脂肪酸は低下させる作用を持つ。また、生理活性物質(プロスタグランジン、ロイコトリエン)の合成材料になるものもあり、生体にとって重要な物質である。その反面、不飽和脂肪酸は酸化されやすいため過酸化脂質を生成して動脈硬化や発ガン、老化の原因物質となる指摘もある。

火曜日, 9月 13, 2011

脂質

○脂質

 脂肪や油など、水に溶けにくく有機媒体に溶けやすい性質を持ち、脂肪酸(カルボン酸)を基本成分とする物質を総称して脂質という。脂質は糖質・タンパク質と共に三大栄養素の一つで、最も効率の良いエネルギー源として、また生体膜の構成成分としても重要である。脂質の内、リン脂質や糖脂質は生体膜の構成成分として、ステロールは胆汁酸やステロイドホルモンの材料として機能している。また、一部の脂肪酸は生理活性物質(プロスタグランジンなど)の合成材料になる。

 肉や魚など食品に含まれる脂質の90%以上は脂肪で、脂肪1gから得られるエネルギー(熱量)は約9kcalと、糖質やタンパク質の2倍以上である。日本人の脂肪エネルギー比率(総エネルギーにしめる脂肪の割合)は昭和20年代の10%以下から、現在では約26%(平成16年国民栄養調査)になっており、脂肪の摂りすぎによる肥満や冠動脈性心疾患の増加が指摘されている。「日本人の食事摂取基準・2005年度版」では、脂肪エネルギー比率を男女とも29歳までは20~30%、30~69歳は20~25%、70歳以上は15~25%を目標量としている。

月曜日, 9月 12, 2011

多糖類(2)

○セルロース

 エネルギー源にはならないが食物繊維として重要。繊維素ともいう。植物の細胞壁の主成分として自然界に最も多く存在する単一多糖類である。構造はグルコースが直鎖状にβ-1.4結合している。

 人ではセルロースを分解する酵素を持たないため、消化吸収してエネルギー源として直接利用することはできないが、腸内では食物繊維として機能性を発揮する。牛や馬などの草食動物には胃の中にセルロースを分解する微生物を持っているため、エネルギー源として利用できる。

ヘミセルロース

 半繊維素ともいう(ヘミはギリシャ語で”半分”を意味する)。セルロースやリグニンと共に植物の細胞壁を構成している多糖類である。構成糖の違いからキシラン、アラビナン、ガラクタン、マンナンなどがある。キシラン(構成糖はキシロース)は、木材、藁、トウモロコシの芯などの主成分。アラビナン(構成糖はガラクトース)はアラビアゴムや大豆に含まれている。ガラクタン(構成糖はガラクトース)は果実の表皮に多く含まれ、マンノースを構成とするマンナンは硬い表皮を持つ種子や果実に多い。多くの植物では、これらの単一多糖がさらに別の単糖類と結合した複合多糖類として存在している。ヘミセルロースは穀類、豆類、小麦フスマなどに多く含まれ、不溶性食物繊維としてセルロースと似た作用がある。また免疫賦活などに有効な機能性物質としても注目度が高い。

日曜日, 9月 11, 2011

多糖類(1)

○デキストリン(dextrin)

 糊精ともいう。デンプンを熱や酸などで加水分解する際に生じる低分子の中間性生物の総称。ご飯を炊いたときにフタに薄くつくオブラート状のものもデキストリンの一種である。デキストリンを酵素で分解し、難消化性部分を分取したものを難消化性デキストリンと呼び、水溶性食物繊維として利用されている。

○グリコーゲン(glycogen)

グリコーゲンは動物の肝臓や筋肉に存在する貯蔵多糖類である。グルコースのみで構成される単一多糖で、構造はデンプンのアミロペクチンに類似している。食事で摂取したデンプンは消化酵素の働きでグルコースとなって肝臓に吸収され、その一部は血液に出てエネルギー源となるが、それ以外はグリコーゲンとして肝臓や筋肉に蓄えられる。(通常、肝臓には70g、筋肉に400g)

 肝臓のグリコーゲンは、血液中のグルコース濃度が低下したときなどに分解してグルコースとなり血液中に供給される。筋肉中のグリコーゲンは、筋肉の収縮する時のエネルギー源として使われる。グリコーゲンは動物の死後、急速に分解されてしまうため、一般の食肉中には少ない。牡蠣はグリコーゲンを豊富に含む食品として知られているが、時期により含有量は大きく変化し、マガキは冬、イワガキは夏に最大となる。

土曜日, 9月 10, 2011

少糖類

 少糖類は、単糖が2~10個程度グリコシド結合(縮合)してできた糖で、オリゴ糖とも呼ばれる。結合する単糖の数によって二糖類、三糖類、四糖類などに分けられるが、ヒトでは二糖類(スクロース、マルトース、ラクトース)が重要である。また、これらの糖を材料に酵素の働きなどを利用して工業的に作られる各種オリゴ糖があり、健康機能面から関心を集めている。

○スクロース(sucrose)

 ショ糖ともいう。グルコースとフルクトースがα-1.2結合した二糖類で、砂糖の主成分である。果物や花蜜など多くの植物に存在するが、特にサトウキビやサトウダイコンなどに多く含まれている。食事で体内に取り組まれたスクロースは、サッカラーゼという酵素によってグルコースとフルクトースに切断され、小腸で吸収されてエネルギー源となる。

○マルトース(maltose)

 麦芽糖ともいう。2個のグルコースがα-1.4結合した二糖類で、発芽種子、特に麦芽に多く含まれている。甘さはスクロースの3分の1程度。水飴の柔らかな甘味の主成分になっている。デンプンやグリコーゲンを加水分解すると得られる。マルトースは、小腸でマルターゼという酵素によって2個のグルコースに切断され吸収される。

○ラクトース(lactose)

 乳糖ともいう。ガラクトースとグルコースがβ-1.4結合した二糖類で、動物の乳汁中にのみ存在する。人乳に約7%、牛乳に約4%含まれている。甘さはショ糖の5分の1程度だが、消化・吸収に優れているため、乳児の栄養源として欠かせない糖である。また、カルシウムやマグネシウムの吸収を高める働きもある。

 ラクトースは、小腸でラクターゼという酵素によってガラクトースとグルコースに分解され吸収される。ラクターゼが欠損する人では、ラクトースの分解が阻害され吸収不全となり下痢などの胃腸障害を起こす。これを乳糖不耐症という。

金曜日, 9月 09, 2011

糖アルコール

○糖アルコール

 単糖類のカルボニル基を還元して得られる多価アルコールを総称して糖アルコールという。ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、ラクチトールなどがある。糖アルコールはグルコースと同じ程度の甘さを持つが、生体内での化学反応が進行しにくいためエネルギー源になりにくい。そのため低カロリー甘味料として幅広く利用されている。

※ソルビトール(sorbitol)

 グルコース(ブドウ糖)が還元されてできる六価の糖アルコール。自然界ではナナカマドやプルーンの実、海藻類に多く含まれている。工業的にはグルコースをニッケル触媒下で還元して生産される。甘味度はグルコースとほぼ同じだが、カロリーは3分の2と少なく、血糖値を急激に上昇させたり虫歯の原因にならないので、シュガーレス甘味料として錠果などに広く利用されている。

※マンニトール(mannitol)

 マンノースが還元されてできる六価の糖アルコール。天然に広く存在し、特に干し昆布の表面に付く白粉中に多い。甘味度はグルコースとほぼ同じだが、カロリーは約2分の1と少なく、低カロリー甘味料として利用される。

※キシリトール(xylitol)

 キシロースが還元されてできる五価の糖アルコール。工業的にはトウモロコシの芯などに含まれる多糖キシランを分解してキシロースを得、それをニッケル触媒下で還元して生産される。甘味度はショ糖とほぼ同等。

 キシリトールには虫歯の原因となる酸を抑制する作用があり、欧米では早くから虫歯になりにくい甘味料として利用されてきた。日本では当初、医薬品成分に指定されていたが、1997年に食品添加物としての使用が認められ、キシリトール入りのガムやキャンディ、歯磨きが相次いで登場した。トクホの虫歯になりにくい食品の関与成分の一つにもなっている。

※エリスリトール(erythritol)

 果実や清酒など発酵食品に微量に存在する四価の糖アルコール。工業的にはグルコースに酵母を作用させて発酵法で作る。甘味度はショ糖の約80%程度である。エリスリトールは小腸で吸収されるが、その9割以上は代謝されずに尿中に排泄され、残り1割が大腸で発酵をうけて短鎖脂肪酸に代謝される。そのため1gあたりのエネルギー値は0.3kcal(ショ糖の13分の1)と少なく、血糖値の上昇や虫歯の原因とならない。健康甘味料や清涼飲料水に広く利用されている。

※マルチトール(maltitol)

 還元麦芽糖ともいう。グルコースとソルビトールが結合した糖アルコールで、マルトース(麦芽糖)を高圧水素添加により還元して製造される。甘味度はショ糖の80%。生体酵素による分解度が遅く、一部は小腸で消化吸収されるが、大半は大腸へ達して腸内細菌による発酵をうけ、1gあたり約2kcal(ショ糖の半分)のエネルギーにしかならない。摂取後の血糖値の上昇が低いため糖尿病患者用の甘味料として使われることが多い。ダイエット食品や虫歯になりにくいガムにも利用されている。

※ラクチトール(lactitol)

 還元乳糖もという。ラクトース(乳糖)のグルコース基が還元された糖アルコールで、ラクトースを高圧水素添加により還元して製造される。甘味度はショ糖の約半分以下。難消化性、非う蝕性があり、血糖値の上昇を抑える作用が認められている。

※パラチニット(palatinit)

 パラチノースを還元してつくられる糖アルコール。還元パラチノースともいう。甘味度はショ糖の約30~40%。生体酵素による分解速度が遅く、一部は小腸で消化吸収されるが、大半は大腸に達して腸内細菌による発酵をうけ、1gあたり約2kcal(ショ糖の半分)のエネルギーにしかならない。常用しても虫歯になりにくいことがヒト試験で証明されており、トクホの虫歯になりにくい食品の関与成分になっている。ガムやチョコレートなどの甘味料として用いられる。

木曜日, 9月 08, 2011

糖質

○糖質

 糖質は、デンプンや砂糖に代表される炭水化物(糖類)と、これに関連する有機化合物の総称で、植物や動物、菌類などに広く存在する物質である。

 炭水化物は、炭素(C)・水素(H)・酸素(O)の3元素からなり、分子の構造が「炭素」と「水」が化合した「Cm(H2O)n」をしていることから、こう呼ばれている。従来は「糖=炭水化物」とされてきたが、糖の中には、多糖類のキチンのように窒素(N)を含み、炭水化物とは異なる構造を持つものも多数存在することがわかってきた。そのため現在は、炭水化物以外の糖も含め、それらを広く糖質として扱っている。

 糖質は脂質・タンパク質と共に三大栄養素の一つであり、主に動物のエネルギー源として利用される。ショ糖やデンプンなど、小腸で消化吸収される糖質1gから得られるエネルギー(熱量)は約4kcalである。これに対し、難消化性オリゴ糖や食物繊維(多糖類)などは消化吸収されずに大腸へ達し、腸内細菌による発酵をうけて短鎖脂肪酸を生産し、0~2kcalのエネルギーとなる。「日本人の食事摂取基準・2005年度版」では、成人が1日に必要とするエネルギー量は、中程度の身体活動レベルで男性が2400~2650kcal、女性が1950~2050kcalとされ、この内、50~70%を糖質(炭水化物)から摂取することを目標量としている。

 糖質は単糖類・少糖類・多糖類に分類される。単糖は分子構造的にこれ以上分解されない最小単位の糖で、グルコース(ブドウ糖)やフルクトース(果糖)などがある。少糖は単糖が2~10個程度結合したもので、オリゴ糖とも呼ばれる。スクロース(ショ糖)やマルトース(麦芽糖)、ラクトース(乳糖)などのほか、これらを材料に酵素の働きを利用してできた高分子化合物で、デンプンやグリコーゲンのように生物のエネルギー源になるもの、セルロースやペクチンのように植物の骨格材料として存在するものなど、数多くの種類がある。

 単糖類や少糖類、多糖類には、それぞれに異なった健康機能性がある。食物として摂取した糖質は消化酵素によって最小単位の単糖にまで分解され、小腸壁で吸収される。これらの単糖は門脈を経て肝臓に運ばれ、すべてがグルコースに変えられてエネルギー源となり、一部はグリコーゲン(多糖)に合成されて貯蔵される。また、中性脂肪やアミノ酸に変えられ、貯蔵エネルギーやタンパク質の合成にも利用されている。このほか、一部の単糖はタンパク質などと結合して糖鎖の形になり、血液型の決定や免疫反応、細胞を識別する情報の担い手としても働いている。

 少糖は主に甘味料の成分として利用されるが、近年新たに開発される各種オリゴ糖の中には、腸内の有用細菌を増殖させる作用や血糖値低下作用、歯の抗う蝕作用を持つものがある。

 また多糖類の内、セルロースやペクチンなどはヒトの消化液では分解されず、消化も吸収もされないことから長らく栄養的に重要視されていなかったが、近年、これらの難消化性多糖類にコレステロールの上昇を抑制する作用や血糖値の上昇を抑える作用、腸の蠕動運動を活発化して排便を促進させる作用のあることがわかり、食物繊維として一躍注目されるようになった。

水曜日, 9月 07, 2011

ハーブティー(3)

○フィールドポピーティー

 フィールドポピーはケシ科の一年草で、学名はPapaver rhoeas。ドイツやフランスの麦畑や道路端に焔のような真っ赤な色で咲くので、コーンポピー(麦のケシ)とも呼ばれている。この花びらを乾燥させたつくるフィールドポピーティーには鎮静作用があり、飲むと”安眠が約束される”といわれている。アヘンを含むケシとは別種なので、危険も心配もなく、従って栽培はまったく自由。のどの痛みや咳にも効果がある。

○サフラワーティー

 サフラワーはキク科の一年草で、学名はCarthamus tinctorius。日本では紅花として知られている。古くから優れた染料や薬として利用されてきた花弁がハーブティーとしても利用される。花は咲き始めは黄色だが、しだいに橙色から紅色に変わる。橙色の頃に花柄ごと切り取って干し、乾燥したところで花びらだけを抜き取ってお茶のように用いる。サフランと同様の明るい黄色で、香りもよく似たハーブティーができ、効能もそれに似て鎮静・鎮痛・通経などである。

火曜日, 9月 06, 2011

ハーブティー(2)

○サフランティー

 サフランは南ヨーロッパを原産とするアヤメ科の多年草で、学名はCrocus sativus。真っ赤な花柱はパエリヤやブイヤベースなど地中海料理の着色や風味づけに使われる。此花の雌しべの先(柱頭)だけを摘み取り乾燥させたものがハーブのサフランで、カップに3~6本入れて湯を注ぐだけで明るい黄色のサフランティーができあがる。香りは婦人薬の中将湯に似ており、効果も同じように血の道症・不眠・イライラ・肩こり・のぼせ・頭痛などの不定愁訴に効き、駆お血作用があるとされる。

○ミントティー

 ミントはシソ科の多年草で、日本ではハッカ(薄荷)という。葉に精油成分(メントール)が含まれ、古くから発汗・解熱・健胃の生薬として用いられたきたほか、胃腸薬や各種内服用製剤、軟膏などにも広く利用されている。精油成分のやや少ないペパーミント(学名はMentha piperita)やスペアミント(学名はMentha spicata)などの種類が、スッキリした清涼が好まれてハーブティーに利用される。中世ヨーロッパでは、紅茶は特権階級のもので一般庶民が飲むことは禁じられていたが、ハーブティーは飲用を許されていたので、人々はミントティーやカモマイルティーをそれぞれ、”サンタマリア・ティー”とか”ノートルダム・ティー”などと称して飲んでいたという。

○ハイビスカスティー

 ハイビスカスはアオイ科の常緑低木で多くの種類があるが、ハーブティーに使われるのはアフリカ原産のサブダリハ(学名Hibiscus sabdariffa)と呼ばれる種類である。これはハワイや沖縄などで観賞用にゴージャスな赤い花を咲かす種類とは異なり、花は小さく貧弱だが、その花(というより萼)を干したものを使う。お茶のように入れると、爽やかな酸味と鮮やかな紅色の飲料となる。疲労回復、造血作用などの効用があり、欧米ではスポーツ選手に愛飲者が多い。クセがないので誰にでも喜ばれ、シャーベットやゼリーにも使われるほか、東南アジアでは葉も一種にサラダや漬物(日本の梅干や赤ジソのように)として利用されている。

日曜日, 9月 04, 2011

ハーブティー(1)

○ローズティー

 ローズティーには、①バラの花の実を利用したローズヒップティーといわれるもの、②中国産の球塊(メイグァイ)という日本のハマナスに似たバラの花弁や、西洋の大型のバラの花弁を乾かしてお茶の葉のようにして飲むもの、③紅茶や中国茶に花弁を混ぜ合わせて、その香りを移して飲むもの、の3種類がある。

 最近、女性の間で人気が高いローズヒップティー(rosehip tea)は、バラ科のドッグローズ(dog rose、学名はRosa camina)の実(ヒップ)を干して砕き、お湯を注いでつくるハーブティーである。ドイツなど北ヨーロッパで冬の間ビタミンC不足から起きる病気を防ぐ(経験上)ため愛飲していたもので、”北国のレモン”ともいわれる。ドイツではこのバラの実にカルカーデ(ハイビスカス)を配合して飲んでいる。

○カモマイルティー

 カモマイルはヨーロッパ原産のキク科シカギク属の一年草で、学名はMatricaria recutita。カモミール(仏)、カミツレ(蘭)ともいう。小さな花を摘んで乾燥させハーブティーとして利用する。カモマイルには大型のジャーマン種と小型のローマン種という異なる種があるが、効能もよく似ているため普通は問題とされない。独特の香りが好悪を分けるが、風邪の初期(喉や鼻の痛み)には非常によく効き、昔から”医者の草”と呼ばれ、医療用ハーブとしても長い歴史がある。

 発汗を促し、頭痛など各種の痛みを和らげるなど効能が多いが、女性に特有の諸症状にもよく効くので、ドイツでは”ムッテル(母)のクロイター(薬草)”と呼ばれる。北欧系女性の金髪が美しいのは、このティーでリンスするからだとも言われている。他の多くのハーブ同様、お茶やコーヒーとは逆に鎮静作用があり、就寝前に飲むと睡眠誘導効果もあるので、グッドナイト・ティーという別名もある。

土曜日, 9月 03, 2011

色々な健康茶(3)

○南天茶

 南天はメギ科の常緑灌木で、別名を南天竹、南天燭という。生薬名は南天実。”難を転じて福にする”という縁起から広く親しまれ、例えば赤飯に南天の葉が添えられているのは、「食中毒の心配はありません」ということからである。

 主な成分はナンジニン、アセトン、ベルベリンで、果実にはアルカロイドのドメスチンが含まれている。ドメスチンは咳止め作用のある成分として知られている。効用と用い方は、①痛風、脚気(根を煎じて飲む)、②咳、扁桃腺炎、口内炎、咽頭炎(葉と実を濃く煎じて飲む)、③疲れ目、視力強化、白内障(果実を煎じて飲む)、④やけど、腫れ物、蜂刺され(葉の生汁を塗る)、⑤食あたり、魚の中毒(葉を噛んでいると毒物を吐く)などである。

苦丁茶

 苦丁茶は中国の南部、及び西部で保健茶として飲用されている茶で、独特の苦味と清涼感を特徴とする。中国でも茶の中では生産量が少なく、大変貴重な高級茶とされる。場所によって、モクセイ科、オトギリソウ科、モチノキ科、ムラサキ科、バラ科などさまざまな植物の葉を用いて作られている。

 四川省産の苦丁茶には、清熱、降圧、防暑の効あり、雲南省の苦丁茶には、防暑、消炎、増智、抗疲労等の効ありとされる。また四川省さんなどのLigustrum属植物を基原とする苦丁茶中には、モノテルペンやフェニルエタノイド配糖体が含まれ、特にモノテルペン配糖体にはコレステロールの吸収や生合成に関与するACATという酵素の阻害作用があることが報告されており、血中脂質改善効果が期待されている。

金曜日, 9月 02, 2011

色々な健康茶(2)

○露草茶(つゆくさちゃ)

 ツユクサはツユクサ科の一年草で、別名はボウシバナ、アイバナ、ホタルグサ。ツユクサの青い色素は、友禅や絞り染めの下絵を書くのに用いられる。花、茎、葉、根の全てが薬用になり、主な成分としては青色素のデルフィニジン、コンメリニン、タンニンなどが含まれる。その効用は、①心臓病、腎臓病、下痢、むくみ、尿閉塞、発熱、喘息、神経痛(全草を煎じて飲む)、②動悸、息切れ、胎毒、肥満(葉と茎と葉で青汁を作って飲む)、③咽頭炎、扁桃腺炎(煎じ汁でうがいをする)、④結膜炎(絞り汁で目を洗う)、痔(花弁を揉んで貼る)、腫れ物、毒虫指され、口内炎(花と葉の搾り汁をつける)などとされる。

○萩茶(はぎちゃ)

 ハギはマメ科の亜灌木植物で、良く芽を出すことか生芽の別名がある。ススキと共に秋を代表とする草で、秋の七草の一つに数えられている。葉を刻んで乾燥させたものを煎じて常飲すると、めまい、のぼせ、ノイローゼ、咳、腫れ物などに効用がある。

○雪の下茶(ゆきのしたちゃ)

 ユキノシタはユキノシタ科の常緑多年草で、生由来は雪の下にあっても青々としているところからきている。別名は鴨脚草。生薬名の虎耳草は葉の形が虎の耳に似ていることから。主な成分としてベルゲニン、クロロゲン酸などの配糖体を含んでいる。その効用は幅広く、①心臓病、腎臓病、むくみ(生葉20枚位を煎じてお茶代わりに飲む)、②咳、風邪(葉を10gと甘草2gを煎じて飲む)、③顔面神経痛(キャベツ、大根の葉タンポポの青汁に加えて少量を毎日飲む)、④小児病、百日咳、ひきつけ(葉の絞り汁を飲む)、⑤のぼせ、めまい(葉の青汁を盃に1杯ずつ飲む)などとされている。

木曜日, 9月 01, 2011

色々な健康茶(1)

○女郎花茶(おみなえし茶)

 オミナエシ(女郎花)はオミナエシ科の多年草で、日当たりの良い草原に自生する。血眼草という別名もある。秋の七草の一つである。根を煎じて飲む。含有成分にはオレアノール酸を含み、大阪大学薬理学部が敗醤根(オミナエシの根の生薬名)の制ガン作用について研究発表をしている。その効用は①制ガン作用のほか、鼻血、むくみ、肺脳腫、胆のう炎、婦人のお血、こしけ、腫れ物(根の煎じ汁を服用する)、②眼病、充血(根の煎じ液で洗眼するとよい、血眼草ともいわれるのはこのため)などとされる。

○薊茶(あざみ茶)

 アザミ(薊)はキク科の多年草で、葉や総苞には棘がある。触れると痛い目にあい、”欺かれる”ことからこの名がついた。別名はチジリソウ。根を煎じて飲む。主な成分としてクロロゲン酸を含み、これはコーヒー豆中でカフェインと結合している物質である。効用は胃腸病、浮腫、夜尿症のほか、化膿性疾患(根と葉をつぶして患部に貼ると痛み止めになる)などである。

○撫子茶(なでしこ茶)

 ナデシコはナデシコ科の多年草で、別名はカワラナデシコ。秋の七草の一つである。主な成分として、根にトリテルペノイドのギプソゲニン酸という配糖体が含まれている。効用は、①むくみ、生理不順(種子10gを水400mlを水40mlで半分になるまで煎じて1日3回飲む)、②膀胱炎(全草を刻んで煎じて飲む)などとされる。