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火曜日, 9月 20, 2011

クロム

○クロム

 クロムは18世紀にシベリアで発見された元素で、元素記号Cr。銀白色の金属である。常温で安定しており、空気中、水中で錆びない。3価クロムと6価クロムとがあるが、食品中を含めて自然界に存在するクロムはほとんどが3価クロムであり、ヒトにとって必須微量元素のひとつである。ちなみに6価クロムは人為的に作られたものが多く、生体への作用は3価クロムとは全く異なり、強酸化作用があって毒性が強い。

 ヒトが摂取したクロムは主に小腸で吸収されるが、吸収率は低く、0.5~2%程度とみられている。したがって、生体内に存在するクロムの量は極微量であり、また加齢とともに減少する唯一のミネラルである。生体内では、糖質代謝、コレステロール代謝、結合組織体者、タンパク質代謝の維持に関与しており、インスリンを活性化して、糖尿病や高脂血症を予防する効果がある。

 厚労省の「日本人の栄養所要量・食事摂取基準策定検討委員会」がまとめた基準(2005年版=平成17~21年の5年間使用)によると、クロムの推奨摂取利用は1日あたり・男性18~49歳40ug、50~69歳35ug、70歳以上30ug、女性18~69歳30ug、70歳以上で25ugとなっている。多く含まれている食品としては、可食部100gあたりで、干しひじき270ug、わかめ(乾)100ug、マイワシ(丸干し)76ug、アナゴ48ug、あさり45ug、ベーコン39ugなどがある。

 前記のように食品中の含有量が微量で体内への吸収率も低いことから、クロムは現代人には不足しがちなミネラル分のひとつに数えられている。クロムが不足すると、インスリン活性・感受性の低下、窒素代謝異常、体重減少、抹消神経障害、昏迷、角膜障害などが起こることがわかっている。とくにインスリン活性・感受性の低下は生活習慣病の一つである糖尿病の発症と密接につながっており、現代人にとってその対策が焦眉の課題となっている。というのも、日本人の糖尿病の95%はいわゆる「Ⅱ型」、つまりインスリン非依存型であり、インスリンは分泌されているにもかかわらず、活性が弱かったり、インスリンと結合する細胞のインスリン受容体の働きが悪くなったりするのが原因とみられている。これらはインスリン抵抗性と呼ばれ、血中にインスリンが相当量あるのにブドウ糖が細胞内に取り込まれず、血糖値が高いという状態(=Ⅱ型糖尿病)を引き起こす大きな要因ともなっている。

 一方、細胞内にインスリン抵抗性を改善する成分「GTF(グルコース・トレランス・ファクター=ブドウ糖耐性因子)」が存在する。GTFは1957年、米農務省人間栄養研究所理事であったウォルター・メルツ博士が豚の肝臓中から発見した物質で、博士はその核心をなす物質がクロムであることを確認した。クロムが不足すると、生体はこのGTFを作れなくなり、インスリン抵抗性を高める結果となる。逆にいえば、GTFは十分に足りている状態であればインスリン抵抗性は弱められ、糖尿病改善に大きな効果があると考えられたが、合成にはいたらなかった。

 その後、米ウィスコンシン大学フランク・マオ博士(内分泌学)らの研究チームがGTFの組織の詳細を解明、2000年には最先端のバイオテクノロジー活用により安定したGTFを作り出す技術が開発された。

 健康食品としてのクロムの最新製品は、このGTF技術を作ったもので、特に最近注目されているのがクロムフェリンである。これは、牛の初乳に含まれる微量のタンパク質ラクトフェリンにクロム酵母を結合させたもので、体内に取り込まれるとGTFに転換され、インスリン活性・感受性を高める働きをする。アメリカFDAの認可を受け、すでにアメリカ、オーストラリア、ドイツ、イギリス、フランス、オランダ、マレーシア、韓国、中国、台湾、日本などにおける臨床データで約80~90%の改善例が報告されているという。こうした新タイプの健康食品の開発は、糖尿病改善に新たな展望をもたらすことにもつながると目され、期待が集まっている。

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