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月曜日, 10月 31, 2011

減塩食品

○減塩食品

 わが国で食塩の過剰摂取による弊害が叫ばれるようになったのは、食塩摂取量が他の地域に比べて多いとされる東北地方で脳卒中による死亡率が高いという疫学的調査結果が発表されてからである。これが契機となり1979年には厚生省(当時)の栄養審議会が、72年に決めた1日の塩分所要量15gを10gに下げるべきであるという答申を行い、これを目標値として全国的に減塩意識が高まった。

 現在使われている「日本人の食事摂取基準・2005年度版」で男性成人の目標値は10g未満で従来通りだが、女性は8g未満に改訂されている。平成15(2003)年の国民栄養調査によると、1日あたりの食塩摂取量は20歳以上の男性が11.7~13.5g、女性は9.8~12.0g、全体平均で11.2gである。

 日本人は世界的に見て食塩摂取量が多い民族とされている(欧米諸国の目安量は6g程度)。それは日本料理に欠かせない醤油や味噌などの調味料に塩が多く使われているからである。そのため、減塩食品の多くは醤油と味噌が中心である。

 減塩醤油は厚生労働省の特別用途食品制度で「低ナトリウム食品」に位置づけられており、100gあたり食塩含有量は9g以下とされている。これは一般的な醤油の約半分の量である。これとは別に、塩分濃度を通常醤油の8割程度にした「うす塩醤油」「あさ塩醤油」と呼ばれるものもある。また醤油には濃口と薄口があるが、薄口醤油は色や香りが薄いだけで塩分は濃口よりも多いので注意したい。

 味噌も、ナトリウムの含有量が通常味噌の50%以下のものが減塩味噌として特別用途食品になっている。このほか、塩化ナトリウム含有量を少なくした減塩塩もある。フィンランド製のパンソルトは塩化ナトリウムが57.6%、アメリカ製の岩塩ライトソルトは塩分49.5%の塩である。これらは塩化カリウムや塩化マグネシウムなど他のミネラル成分の配合を増やすことによって、相対的に塩化ナトリウムの割合を減らした製品である。

 減塩食品は確かに塩分は少ないが、塩味が薄いからといって多く使えば絶対量は減らず、元の本阿弥になってしまう。減塩食品による減塩効果を上げるためには調理法を工夫したり、個人の嗜好を変える努力が必要である。

土曜日, 10月 29, 2011

自然塩

○自然塩

 が生命の維持に欠かせない最重要物質の一つであることは言を俟たないものの、海に囲まれた日本では”たかが塩”と考えられがちであったが、生成された塩が主流を占めて近年、自然塩に含まれていたミネラル類を含む各種微量成分の働きの重要性が改めて見直されてきている。

 塩は、古くは天日干しの塩田方式や弱い火力によってゆっくり煮詰める方法で生産され、その頃は海水中の成分を全て含んだ塩が供給されていたのであるが、日本では1971年(昭和46年)に塩業近代化がスタートして以来、従来の塩田は全廃されて工業的生産に切り替えられ、やがてイオン交換式が主流を占めるようになった。この方式によって得られる塩を自然塩に対して化学塩とも呼ぶが、これによってほぼ純粋に近い精製塩となった反面、ミネラル類などの微量成分は失われることとなった。栄養素やカロリー偏重の近代栄養学の弱点が見直される中で、食塩の微量成分にも照明が与えられたのは比較的最近のことである。

 純粋なものが最善でないことは玄米と白米の比較でよく知られるようになってきている。白砂糖が虫歯をつくりやすくしたり、骨をもろくしたり、血液の抗菌性を弱めたりすることもわかってきている。こうしたことへの反省から、近年はタワー式天然性塩法などが開発されて自然塩に近いものを供給する努力が払われたり、食塩に天然にがりを加えた”ミネラル強化”型の加工塩も作られてきた。

 自然塩の世界が一気に広がったのは、明治以来90年以上にわたって続いてきた塩の専売制度が廃止された1997年以降である。同年4月に施行された塩事業法により、それまで日本たばこ産業(JT)が独占的に行っていた塩の製造・輸入・卸売が一般企業にも解放され(登録・届出制)、自由に塩を製造・販売することが可能になったのである。塩事業法では、自由性の専売塩(精製塩など)を生活用塩と呼び、自然塩などそれ以外のものは特殊製法塩として「平釜式、蒸気利用式、温泉熱利用式、その他真空式以外の特殊な製造方法で作られたものや、ニガリやゴマなど食品が混ぜられたもの」と定義されている。

 現在、自然塩の多くは天日塩と呼ばれるもので、海水の濃縮をある程度まで天日(太陽と風)で行った後、火を使って釜焚きして結晶させたものである。また、火を使わずに最終仕上げまでを天日のみで行う「完全天日塩」もある。濃縮した海水の約90%は塩化ナトリウムだが、それ以外にもニガリと呼ばれる塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄、亜鉛などが含まれている。自然塩は天日による濃縮を行うことによって、これらの微量ミネラル群が損なわれないように工夫した塩であるといえよう。

金曜日, 10月 28, 2011

○塩

 調味料の中で最も基本的なものであり、ヒトの体内では浸透圧調節などの生理作用を担う重要な物質である。世界の塩生産の2/3は岩塩であるが、日本ではもっぱら海水から製塩されている。

 現在、わが国で一般的に使われている塩は食塩、精製塩、並塩である。食塩は海水中の塩化ナトリウム(NaCl)をイオン交換樹脂膜電気透析法という工業的な方法で集めて濃い塩水を作り、これを真空釜で煮詰めて結晶にしたものである。精製塩は食塩よりさらに精製度を高めた塩で、さらさらして固まりにくい。並塩は業務用に使われる塩の標準品で、粗塩とも呼ばれている。塩の主成分は塩化ナトリウムで、食塩、精製塩共に99.1%を占める(並塩は96.5%)。食塩には微量であるがカリウム100mg(精製塩では2mg)、カルシウム22mg(同0mg)が含まれている(いずれも100g中)。

 わが国では明治以降、塩専売法に基づき塩の製造は国の管理下に置かれ、近年では日本専売公社(現・日本たばこ産業)が独占的に行ってきたが、1997年(平成9年)4月に同法が廃止され、新たに塩事業法が施行されて塩の製造や輸入の規制緩和が行われた。これにより、民間企業が昔ながらの塩田方式による製塩事業なども行えるようになり、工業的につくられる専売塩とは別に、自然塩と呼ばれる塩も数多く登場するようになっている。

木曜日, 10月 27, 2011

色々な食用油(2)

○サフラワー油

 キク科の一年草サフラワー(紅花)の種子から採取した食用油。紅花油ともいう。味にクセがなく、さっぱりしており、主にサラダ油として使われている。脂肪酸組成はリノール酸が75%以上を占め、植物油の中で最も多い含有量を示す。

 リノール酸は体内コレステロールを排出し、動脈硬化や高血圧の予防・改善に有効であることから、サフラワー油は一時”健康油”として大きなブームとなった。しかし最近では、リノール酸は酸化されやすく体内で過酸化脂質をつくりガンの原因となったり、リノール酸から合成されるアラキドン酸によってアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患や免疫力の低下を引き起こすことが指摘されるようにもなっている。つまり、過剰摂取による弊害である。そのため、リノール酸の含有量を少なくし、オレイン酸を多く含むように品種改良したオレイックサフラワー油もつくられている。

※ひまわり油

 日本ではなじみが薄いが世界的にはかなり多く使われており、ロシアで植物油といえばひまわり油が第1位である。ロシアではもっぱら種子から食用油を採るためにひまわりを栽培している。ひまわり油はリノール酸の豊富さ(含有率約60%)ではサフラワー油と並び、加えてビタミンEも豊富なために、動脈硬化や高血圧の予防に役立てる食品開発も試みられ、ひまわり油マーガリンやひまわり油サラダオイルも商品化されたが、リノール酸の過剰摂取は逆に動脈硬化やアレルギーの発症を促進するとの報告が多くあるため、摂取量の見直しもなされている。なお、ヒマワリの種子を処理して得られるミルク状の栄養食品はヒマワリ乳と呼ばれ、牛乳、豆乳に次ぐ、”第3の健康乳”として期待されている。

水曜日, 10月 26, 2011

色々な食用油(1)

※大豆油

 わが国ではナタネ油と並んで最も多く使われている食用油で、サラダ油やてんぷら油のほかマーガリンの原料にもなる。脂肪酸組成はリノール酸の含有比率が53.3%と高く、オレイン酸(23.5%)やリノレン酸(6.6%)の含有率も高い。

 フィンランドでは食事と動脈硬化の関係について興味深い実験を行っている。対象は30~69歳の男性で、この内、一つのグループには①牛乳の代わりにスキムミルクを大豆油で溶いたものを与える、②牛肉は脂肪分を除いて用いる、③植物性油は自由に用いる、という条件の食事を与えた。もう一つのグループには普通の食事を与え、コレステロールを1日500mgずつ摂取させた。この実験を7週間行った結果、大豆油を中心に食事制限をしたグループは普通食のグループに比べて動脈硬化の危険性が半分以下に抑えられた。つまり、大豆油のような植物性油を多く摂り、動物性油を減らすことが動脈硬化から派生する心臓病の予防にも役立つことが示されたわけである。こうした効果は、大豆油に含まれているリノール酸に血管に沈着するコレステロールを排除する働きがあるためとされている。

※米油

 米糠には約20%の脂質が含まれているが、これを溶媒抽出して作られるのが米油で、米糠油ともいう。あっさりとした味で、ドレッシングや揚げ物に向く。食用油の中では唯一、国産原料で作られている油である。脂肪酸組成はオレイン酸42.6%、リノール酸35%、リノレン酸1.3%など。米油にはシトステロール(植物ステロール)が多く含まれるため、コレステロールの吸収を防ぎ、動脈硬化の予防効果がある。

※コーンオイル

 コーンスターチ(トウモロコシでんぷん)の製造時に副産物として出る胚芽(脂質含有率約35%)からつくられる食用油。淡黄色から黄金色をしており、独特のコクと旨味がある。熱安定性が高く、揚げ物や炒め物などの加熱料理に向いている。サラダ油やマーガリンの原料にもなる。

 脂肪酸組成は必須脂肪酸である多価不飽和脂肪酸が全体の半分を占め、その中でもリノール酸の割合が54.9%と高い。また、一価不飽和脂肪酸のオレイン酸も29.8%と多い。そのほかビタミンEの含有量も多く、100g中17.1mgと植物性油脂の中では高いほうである。胚芽油であるコーンオイルには、米油と同じくシトステロールが含まれており、コレステロールの体内吸収を抑える作用がある。

火曜日, 10月 25, 2011

機能性食用油

○機能性食用油

 農林水産省が主婦を対象に行った食用油の消費実態調査では、約半数の消費者が健康や栄養面を考えて油を選択しており、植物油独特の風味も重視して料理によって使い分けているという結果が出ている。食用油に対するこのような消費者の健康志向を反映して、数年前から機能性食用油市場が拡大している。製油大手が投入している製品をみると、単に健康によい植物油というイメージ的な訴求ではなく、”体に脂肪が付かない油”、”コレステロールを抑制する油”といった具体的な健康機能性を付加している点が特徴である。

 先陣を切ったのは花王の健康「エコナクッキングオイル」で、1999年2月に脂肪がつきにくい食用油として発売され、半年で400万本を売り上げた。食用油ではじめてトクホ表示が許可されたことでも話題を呼んだ。エコナの主原料はジアシルグリセロールで、同じ脂肪酸組成のトリアシルグリセロール(従来の食用油の主成分)と比較して食後の血中中性脂肪の上昇を抑制する作用がある。また、長期間摂取した場合には内臓脂肪の増加を抑制することが確認されている。

 日清製油が開発した「日清バランスオイル・ダイエット」は中鎖脂肪酸を約10%含む食用油で、酵素を用いて油の構造に特徴を持たせている。中鎖脂肪酸はエネルギーとして分解されやすく、手術後の流動食や未熟児のエネルギー補給などに利用されているが、同社と香川大学との共同研究によって長期栄養試験をヒト対象で行った結果、体脂肪として蓄積されにくい油であることが認められた。

 2001年になると、機能性食用油のターゲットは脂肪からコレステロールへ移り、コレステロールの吸収を抑える食用油が次々と発売された。大豆や米など植物胚芽に含まれる植物性ステロールを配合した製品が多い。これは食事で摂取したコレステロールは胆汁酸と結合して体内で吸収されるが、植物性ステロールは胆汁酸と結合しやすいため、結合できなかったコレステロールが対外に排出されやすくなるからで、花王は健康エコナに植物性ステロール(β-シトステロール)を加えた製品をトクホとして発売した。日清製油は米胚芽油ベースの食用油「バランスオイル・コレステ」を投入した。通常の大豆油に比べて植物ステロールが4.5倍含まれる油だ。

 ホーネンコーポレーションの食用油「健康上々」もコレステロール値の抑制にターゲットを絞っているが、植物性ステロールを使わず、麹菌の一種である紅麹のエキスを配合した。ヒトの体内では肝臓から出る酵素の働きでコレステロールが生成されるが、紅麹に含まれるモナコリンやγ-アミノ駱酸といった成分がこの酵素の働きを抑制することに着目した。同社によると、体内の総コレステロールの2割は体外からの食物の摂取によるが、残りの8割は体内酵素の働きで形成されるという。紅麹エキスはこの8割のコレステロールを抑制するとしている。

 昭和産業の「オレインリッチ」は悪玉コレステロールだけを低下させるといわれるオレイン酸を80%使用したヒマワリ油。酸化に強いため鮮度と風味が長持ちするほか、調理時に油酔いしにくいというのが特長である。このほか最近では、中鎖脂肪酸を関与成分としたナタネ油ベースの「ヘルシーリセッタ」(日清オイリオグループ)が体に脂肪がつきにくい食用油としてトクホを取得、ヒット商品にしている。

月曜日, 10月 24, 2011

黒糖オリゴ

○黒糖オリゴ

 黒糖オリゴとは黒砂糖中に約0.1~0.3%含まれ、白砂糖の害を防ぐ毒消しの役割を持つ非糖黒色成分をいう。

 白砂糖の主成分のショ糖(スクロース)はブドウ糖と果糖の二糖類で、容易に分解されて即席のエネルギー源となり、疲労回復剤となる。また、保水剤として、皮膚や粘膜の乾燥を防ぎ、化粧料、シロップ剤に利用され、その制菌作用で細菌の繁殖を抑制し、砂糖漬け等として広く用いられている。

 しかし、砂糖の大量摂取は胃粘膜の潰瘍を促進し、歯や骨を弱化する。また、血中の中性脂肪、血糖値、過酸化脂質を上昇させ、高脂血症、糖尿病、動脈硬化、肥満の引き金となり、アトピー性皮膚炎を促進するといった障害をもたらす。

 長寿県として知られる沖縄県には、古くから「白い砂糖は命を縮め、黒い砂糖は命長らえる」ということわざがある。これに注目し、1980年より近畿大学東洋医学研究所愛媛大学医学部医科学教室との共同で、吸着合成樹脂を用いて黒色成分のみを吸着・分離精製する技術を開発。これにより得られた非糖成分を黒糖オリゴ糖と名づけ、あわせて動物実験も行っている。

 それによると、1群5匹のラットを、①白砂糖75%を含む高ショ糖食を与えたコントロール群、②同じ飼料で1日量に黒糖オリゴ1g/kg、及び0.5g/kgを添加したものを投与した群、③普通食で飼育した群の3群に分け、2ヶ月間、自由摂取させて、それぞれの群の血清中の脂質、インスリン量を比較した。その結果は、①のコントロール群は中性脂肪が③の普通食群に比べて2.40倍に増加したのに対し、②の黒糖オリゴ1g/kg、0.5g/kg添加群はそれぞれ62.3%、87.6%にとどまり、黒糖オリゴが中性脂肪の上昇を抑制することがわかった。ここでは過酸化脂質、インスリン量についても同様の抑制結果がみられ、黒糖オリゴがこれらの値を有意に低下させることが明らかになった。

 また、ラットに0.5gのグルコースを与える負荷試験では、血漿中のグルコース、インスリン濃度は投与20分後に最大に達するが、このとき、グルコースと共に黒糖オリゴを与えた群は、コントロール群に比べて20分以後のグルコース、インスリン値がともに有意な差を持って減少した。マウスを用いた実験でも同様の結果を得た(薬学雑誌102、1982、医学と薬学57、2007)。

 黒糖オリゴは腸管腔灌流法により、グルコースの腸管からの吸収を抑制すると考えられるが、これらの効果はこのことを証明しているといえる。また、これらの効用の有効成分の一つとして、3-4ジメトオキシフェニールβグルコシドが発見されている。

 このように、黒糖オリゴは、臨床面でも高脂血症、糖尿病・動脈硬化、肥満等を予防・改善する働きがある。

金曜日, 10月 21, 2011

機能性ヨーグルト

○機能性ヨーグルト

 最近注目を集めているヨーグルトに機能性ヨーグルトと呼ばれる製品がある。含まれている乳酸菌が持つ生理機能が学術研究のデータによって裏付けられており、それを付加価値として開発されたヨーグルトである。商品のものに効能が表示されているわけではないが、マスコミ等を通じてその機能性が広く知られるようになっている。

 機能性ヨーグルトの草分けは、ピロリ菌を排除する乳酸菌が入っていることで人気を呼んだプロビオヨーグルトLG21(明治乳業)である。2000年3月に発売され、瞬く間にヒット商品となった。ピロリ菌は日本人の半数が保菌者であることや、日本人に多い胃潰瘍や十二指腸潰瘍、慢性胃炎、胃ガンなどを引き起こすことから新聞や健康雑誌などで盛んに取り上げられ、一般消費者の認知度も高い。同ヨーグルトに使われている乳酸菌はラクトバチルス・ガッセリOKK2716(通称LG21菌)で、経口摂取すると胃粘膜に接着し、乳酸を分泌してピロリ菌を排除する性質がある。東海大学の古賀泰裕らの研究によると、ピロリ菌保菌者の30人にLG21入りヨーグルトを8週間摂取してもらったところ有意な減少が確認できただけでなく、この内の3人はピロリ菌が検出限界以下になったという。また、胃粘膜の荒れも改善されたことが報告されている。

 LC1ヨーグルト(ネスレスノー)も胃のピロリ菌抑制に有効であるとされている。同製品には、スイスのネスレ中央研究所で単離された乳酸菌ラクトバチルス・ジョンソニーLC1(通称LC1菌)が使われており、経口摂取によって腸壁に接着し、病原菌の物理的排除、抗菌物質の分泌、免疫細胞の活性化などに働くことが認められている。

 植物性乳酸菌ヨーグルト(亀田製菓)は、同社が米から分離した日本発の植物性乳酸菌ラクトバチルス・カゼイ・カメダ1株(通称K-1菌)を使った製品で、植物性食品を多く摂っている日本人の胃腸によくフィットする点を売りにしている。東京農業大学菌株保存室との共同研究で、同菌には整腸作用のほか細胞の突然変異を抑える抗変異原性のあることが明らかにされている。

 ラクトフェリンヨーグルト(森永乳業)は牛乳に含まれる微量タンパク質のラクトフェリンを配合した製品。ラクトフェリンは抗微生物活性やビフィズス菌増殖、免疫調節、抗酸化活性、細胞増殖調節といった生理作用がある。

 小岩井KW乳酸菌ヨーグルト(小岩井乳業)は花粉症を改善する乳酸菌が用いられている。この菌はグループ会社のキリンビールフロンティア技術研究所が昭和女子大学大学院生活機構研究所と共同で開発したラクトバチルス・パラカゼイKW3110(通称KW乳酸菌)で、花粉症アレルギーの原因となるヘルパーT細胞の”Th1/Th2バランス”を改善する作用があるという。同社では花粉症に対するヒト試験も実施している。花粉症のボランティア28名を、KW乳酸菌ヨーグルトを接し揺するグループと従来のヨーグルト摂取する対照グループの2つに分け、花粉症飛散期(03年1~4月)に1日200mlのヨーグルトを摂取してもらい4週おきに採血と自覚症状のアンケートを行った。その結果、KW乳酸菌のグループで従来ヨーグルトのグループと比べて2倍以上のTh1/Th2バランスの改善がみられた。また、のどの痛みや目の痒み、鼻水などの症状にも改善傾向が認められたという。

 LGGヨーグルト(タカナシ乳業)はアトピー性皮膚炎の改善が広く認められている乳酸菌ラクトバチルス・ラムノーサスGG(通称LGG菌)を使用している。同菌はフィンランドのバリオ社が保有する乳酸菌で、1997年に同社が乳幼児のアトピー性皮膚炎の症状が抑えられたという研究結果を発表して世界的に注目された。

 ロイテリ菌ヨーグルト(チチヤス乳業)はスウェーデンのバイオガイア社が保有する乳酸菌ラクトバチルス・ロイテリを使った製品で、腸内有害菌や虫歯菌の繁殖を抑える作用がある。

木曜日, 10月 20, 2011

ステロール

○ステロール

 ステロールは油脂に含まれる不鹸化物のひとつで、ステロイド核(4つの環状構造)と炭素数8個の炭化水素基を持つアルコールの総称である。ステリン(ドイツ語)ともいう。動物油脂に含まれるコレステロール、植物油脂中のシトステロール、シイタケや酵母に含まれるエルゴステロールなどがある。

※コレステロール

 コレステリンともいう。動物の組織中に広く存在するステロールで、細胞膜の構成成分として、また胆汁酸や性ホルモン、副腎皮質ホルモンの材料として重要な物質である。血液中にはリン脂質とタンパク質に包まれたリポタンパク質の形で存在する。

 コレステロールの約8割は体内で合成され、それ以外は食品から摂取される。コレステロールを多く含む食品の過剰摂取は、血管壁にコレステロールが付着して動脈硬化や高脂血症の原因となる。「日本人の食事摂取基準・20005年度版」では、1日あたりのコレステロール摂取の目標量(上限)を成人男性で750mg未満、女性では600mg未満としている。卵黄や魚卵、レバー、エビ、イカなどはコレステロールを多く含む食品として知られている。

水曜日, 10月 19, 2011

脂肪

○脂肪

 食品に含まれる脂質の90%以上は脂肪である。脂肪は脂肪酸とグリセロール(グリセリン)がエステル結合したもので、アシルグリセロールという。1分子の脂肪酸が結合したモノアシルグリセロール、2分子のジアシルグリセロール、3分子のトリアシルグリセロールであるが、一般に脂肪(中性脂肪)と呼ばれているのはトリアシルグリセロールである。ジアシルグリセロールトクホの機能性食品油の関与成分として使われている。

※中性脂肪

 単に脂肪、油脂などとも呼ばれる。グリセロールに3分子の脂肪酸がエステル結合した単純脂質で、トリアシルグリセロールという。結合している脂肪酸の種類によって物性が異なり、室温で液状のものを油(オイル)、固体のものを脂(ファト)と区別している。一般に動物性脂肪は飽和脂肪酸を、植物性脂肪は不飽和脂肪酸を多く含んでいる。脂肪は食品中の脂質成分として最も含有量が多く、ヒトの生体内では貯蔵脂質として皮下や腹腔などに貯えられ、必要に応じてエネルギー源(1gあたり9kcal)として利用される。

火曜日, 10月 18, 2011

注目アミノ酸

※グルタミン

 人の腎臓組織でグルタミン酸とアンモニアから合成される。人体中に最も豊富に存在するアミノ酸だが、疾病・疲労・ストレスなど特殊な条件の下では必須アミノ酸となる。グルタミンは細胞核酸の原料として免疫細胞の増殖や機能発現に必須とされており、激しい運動などによって血中グルタミン濃度が減少すると免疫機能が低下し、風邪をひきやすくなるなどの障害が出る。グルタミンは小麦グルテンに多く含まれている。

※タウリン

 含硫アミノ酸の一種で、物質名はアミノエチルスルホン酸。胆汁酸の成分であるタウロコール酸の材料として脂質の消化吸収に関与している。タウリンには血圧を正常値に保つ働きのほか、心臓強化、貧血の予防、血中コレステロールの減少、肝臓解毒作用の強化、不整脈・アルコール障害の改善作用などがある。食品ではサザエ、トコブシ、ホタテ貝、アサリ、マグロやサバの血合い、タコ、ズワイガニ、ヤリイカなどの魚介類に多量に含まれている。タウリンそのものは医薬品成分指定されている。

※アルギニン

 成長ホルモンの合成に関与し、免疫力増強や脂質代謝の促進、筋力増強、男性の精子数の増加などに作用する。魚の白子などの核タンパクに質に多く含まれる。ヒトの体内で合成されるため必須アミノ酸ではないが、成長期の子供には必須とされている。

※アスパラギン

 ヒトの体内ではアスパラギン酸とアンモニウムイオンが結合して合成される。名前の由来はアスパラガスから発見されたため。甜菜類、発芽した豆類、ジャガイモにも含まれる。

※グルタミン酸

 ヒトの体内ではクエン酸回路の中でケトグルタル酸から合成され、オルニチンオルニチンやアルギニン、プロリンなどのアミノ酸に変わることができる。グルタミン酸は脳組織に多量に存在し、脳活性のエネルギー源となっている。欠乏すると脳障害を起こしたり鬱状態になったりするが、過剰摂取も脳細胞を傷つけて精神障害が現われる。グルタミン酸は海藻や小麦粉、サトウキビなどに多く含まれる。グルタミン酸ナトリウムは昆布の旨味成分として分離され、化学調味料として使われている。

※チロシン

 体内ではフェニルアラニンから合成される。甲状腺ホルモンのチロキシン、副腎から分泌されるアドレナリン、神経伝達のドーパミン、毛髪や皮膚の黒色色素メラニンなどの前駆物質となる。チロシンが欠乏すると子供では知能障害、成人では無気力症などが引き起こされる。

※シスチン

 含硫アミノ酸で、毛髪や爪を形成するケラチン(硬タンパク質)に多く含まれている。体内ではメチオニンから合成される。食品では豚肉や牛肉、筋子などに多く含まれる。

月曜日, 10月 17, 2011

必須アミノ酸

○必須アミノ酸

 不可欠アミノ酸ともいう。タンパク質を構成するアミノ酸は20種類あるが、その内のロイシン、イソロイシン、リジン、フェニルアラニン、メチオニン、スレオニン、バリン、トリプトファン、ヒスチジンの9種類が必須アミノ酸である。

※ロイシン

 アミノ酸評点パタンでは440mg/gNと必須アミノ酸の中で最大量だが、多くの食品に含まれているので普通の食生活をしている限り不足することはない。ロイシンには肝機能を高める作用があるが、過剰に摂取すると他のアミノ酸とのバランスを崩し、免疫力を低下させる。牛肉、レバー、ハム、牛乳などに多く含まれる。

※イソロイシン

 成長促進、血管の拡張、肝機能亢進、筋力増強、神経機能を高める作用がある。鶏肉や豚肉、チーズなどに多く含まれる。

※リジン

 糖質の代謝、カルシウムの吸収に関与し、食欲増進、成長促進、肝機能亢進、疲労回復作用がある。鶏・豚・牛肉やイワシなどに多い。植物性タンパク質は含有量が少ない。

※フェニルアラニン

 摂取されると体内で分解されてチロシンになり、神経伝達ホルモンのドーパミンなどが生成される。鎮痛・抗鬱作用がある。大豆やカツオ節、脱脂粉乳などに多く含まれる。

※メチオニン

 硫黄を含んでおり、体内で含硫アミノ酸のシスチンやシステインを生成する。血中のヒスタミン濃度を下げる作用があるほか、鬱症状の改善作用も知られている。牛乳、羊肉、カツオ節、枝豆、干し湯葉などに多く含まれる。

※スレオニン

 成長促進、脂肪肝の抑制、貧血予防、食品亢進作用がある。卵や大豆、干し湯葉などに多く含まれる。

※バリン

 成長促進、血液の窒素成分の調整、筋肉や肝機能の強化作用がある。多くの食品に含まれているので、普通の食生活をしている限り不足することはない。

※トリプトファン

 ヒトの体内ではニコチン酸(ナイアシン)の合成に使われる。そのため欠乏するとペラグラ(皮膚炎や神経障害など)を発症する。また脳内で鎮痛・精神安定に作用するセロトニン、若返りホルモンといわれるメラトニン、鬱病などへの効果が期待されるノルアドレナリンなどの神経伝達物質を作る。トリプトファンは植物性タンパク質には少なく、カツオ節や脱脂粉乳などに多く含まれる。

※ヒスチジン

 成長促進に深く関わっており、子供の成長に不可欠のアミノ酸。神経機能を高める働きもある。カジキマグロ、カツオ、ホンマグロなどに多く含まれる。なお、タンパク質の腐敗によりヒスチジンからヒスタミンが生じるため、それを食べると多量のヒスタミンが存在することになり、各種アレルギーを引き起こす。

土曜日, 10月 15, 2011

卵類

※ヨード卵

 ヨード卵は海藻やヨードなどの餌を食べて育った鶏が産んだ卵で、100g中に1.3mgのヨウ素を含んでいる。ヨード卵の作用・効用はラットを使った実験によっていくつか確認されている。

 一つは肝臓のグリコーゲン貯蔵量を高める作用である。これによってスタミナがつき、疲れにくくなる。これは中性脂肪やコレステロールを分解する働きのあるリポタンパクリパーゼという酵素を活性化するためで、エネルギー源であるグリコーゲンを肝臓や筋肉に貯える代わりに、脂肪代謝を促進してエネルギー化するためである。リポタンパクリパーゼは体の毛細血管壁に分布している酵素で、血管を流れる中性脂肪(リポタンパク)を脂肪酸とグリセリンに分解し、エネルギーに変える働きを持っている。このため、リポタンパクリパーゼの活性が高まれば、余分な中性脂肪の分解を促進して血液中の脂質を自然に減少させることができる。

 ヨード卵には動脈硬化や高血圧の予防に役立つというデータもある。動物実験によると、餌がヨード卵粉、普通卵粉の2グループに分け、1日2回の食事前と休息期の計3回の測定で、血中の脂質(中性脂肪)、コレステロール、リン脂質はどれもヨード卵を食べているネズミのほうが低い数値が出た。これはヨード卵を食べることによって脂肪の代謝がより活発に行われ、肝臓から放出する脂質の量が低下するためとされている。血液中の中性脂肪やコレステロールの濃度を調整する最も重要な機構は肝臓での脂質の合成と、それに引き続いて起こる血液への脂質の放出度にある。固の放出度はヨード卵を食べたほうが低いことがわかった。このように、ヨード卵は中性脂肪の代謝を促進し、その血中濃度を低く抑制する生理作用が実証されている。

ビタミン強化卵

 1日に必要なビタミンEやDを含む卵で、厚生労働省の栄養機能表示(保健機能食品制度)をパッケージに施している。大手の鶏卵生産会社が開発したもので、一つはビタミンEを100gあたり10mg含み、卵2個で1日あたりの必要量を摂取できることから「ビタミンEは細胞の健康維持を助ける栄養素です」と機能表示している。もう一つは1日に必要なビタミンDを1個で90%摂取可能な卵で「ビタミンDは骨の形成を助ける栄養素です」と表示している。

※β-カロテン強化卵

 千葉県畜産センター養鶏試験場が開発した卵で、β-カロテンが通常の卵より15倍多く含まれている。鶏に与える餌に牧草を混ぜ合わせることで、草に含まれるβ-カロテンが卵に豊富に含まれるようにした。通常飼料にイタリアンライグラスという牧草を1日1羽あたり約40g与えると、この鶏が産む卵黄100g中のβ-カロテン量は約200ugになる。β-カロテンは体内の活性酸素や脂質酸化を抑制して細胞の老化を防ぐ作用がある機能物質で、ビタミンAの前駆体として知られている。

※うずら卵

 蕎麦やとろろに落としたり、茹でて中華料理の具材などに使われるウズラ(鶉)の卵は、大きさは鶏卵の4分の1程度だか、栄養成分には鶏卵を上回るものがある。タンパク質の含有量やアミノ酸組成はほぼ同じだが、鉄は3.1mg(生全卵100g中)で鶏卵の1.8mgの2倍近く含んでいる。また、ビタミンA(レチノールが350ug、ビタミンB2が0.72mgと鶏卵の140ug、0.43mgをそれぞれ上回っている。コレステロール量は同等(全卵で470mg)である。

金曜日, 10月 14, 2011

鶏卵

○鶏卵

 鶏卵は卵類の中で最も流通量が多く、廉価で栄養価的にも優れていることから、身近な滋養食品として幅広く利用されている。特徴的な栄養成分はタンパク質で、生卵100g中に12.3g含まれれている。アミノ酸スコアは100.消化率97%と高いことも特徴。微量成分では鉄が1.8mg(生100g中)、ビタミンB2が0.43mg(同)含まれている。鶏卵(特に黄身部分)はコレステロールの含有量も多い(全卵100g中に420mg)。そのため卵の摂り過ぎは動脈硬化などの血管障害に結びつくと指摘されてもきたが、最近の研究では卵に含まれるレシチン(リン脂質)にコレステロールを除去する働きもあり、コレステロールの含有量はさほど大きな問題にはならず、むしろ良質なタンパク源としての機能を評価すべきであるとする見解も多い。

 市販されている鶏卵には、雄と交配した雌鳥が産んだ有精卵、放し飼いの鶏が産んだ地卵、ヨードを混ぜた飼料で育てた鶏のヨード卵、ビタミンDやEを強化したビタミン強化卵、β-カロテン強化卵などがある。

木曜日, 10月 13, 2011

キノコ類

○キノコ類

 キノコは昔から世界各地で食され、その種類も膨大であるが、第1に特有の風味や香りを持つ嗜好食材として、第2にタンパク質や脂質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素供給源として、第3に免疫力の向上、抗菌、体調リズムの調節、病気回復、老化抑制などの生理活性機能によって、改めて菌食の必要性を教えてくれる注目の健康食品素材であるといえよう。なからは食べるというよりも専ら漢方薬、民間薬として用いられるものも多く、その成分が抽出されて抗癌剤に用いられているものもある。キノコの成分を概観しておこう。

【一般成分】

 キノコは全般に脂質が少なく、食用キノコの可食部の乾燥重量比で2~5%程度であるが、タンパク質が多いもの(20~50%含有)、糖質が多いもの(50~80%含有)、両者が相半ばしているものなど、それぞれに特色がある。薬用キノコとされる一群には、例えばマイタケやヒメマツタケのように賞味されるものもあるが、特有の苦さや固さなどのために専ら薬用に供されるものも多く、それらの一般成分は食用に順ずる。

【無機成分】

 キノコは全体としてみるとミネラルの種類が多く、霊芝のゲルマニウム、シイタケの亜鉛やマンガンのように、それぞれ特定の元素を凝縮する性質が認められており、キノコの種類によって含有量の差は数千倍に達するが、カルシウム、カリウム、リン、鉄、銅、マンガン、亜鉛、ゲルマニウムなどいずれかのミネラルがとりわけ多いという特徴がある。食用キノコのビタミン類はシイタケのビタミンD(エルゴステロール)が著名であるが、ほかにビタミンB1はエノキダケ、ハツタケ、マッシュルーム、マイタケに多い。またB2はハツタケ、ホンシメジ、マッシュルーム、マツタケなどに多く含まれる。ナイアシンの含有はどの種類にも比較的多く、ヒラタケ、ホンシメジ、マイタケ、ナメコなどに特に顕著である。

【生理活性と薬効成分】

 日常生活において一般的な栄養摂取量として満ち足りていながら、生活習慣病の多発と若年化、ガンの増大、アレルギー性疾患の多様化など多くの問題を抱える中でキノコの薬効成分が研究され、例えばシイタケやアガリクスを筆頭としてその主要成分である多糖類(β-グルカン)を持つ抗腫瘍活性(抗がん性)以外にも、イルーディン(テルペノイド化合物)、エリタデニン(核酸誘導体)、ウデノン(酵素阻害物質)など各種の薬効成分かせ発見されて、①抗菌・抗ウイルス作用、②強心作用、③血糖降下作用、④コレステロール低下作用、⑤抗血栓作用、⑥血圧降下作用を示すことなどが立証されている。これらの効能はキノコを直接食べることでも得られるが、漢方や民間療法では煎じる汁を服用することがよく行われる。

【抗腫瘍活性】

 既にキノコからの3種類の抗癌剤が開発され、医薬品として供給されている。発売の順に記すと、まずクレスチン(PS-K)であるが、これはサルノコシカケ科のカワラタケの一系統の培養菌糸体から製造され、1977年に肺ガン、消化器ガン、乳ガンの治療薬として市販されれた。ついで85年には、シイタケの子実体から製剤されたレンチナンが胃ガンの注射薬として開発され、翌86年にはスエヒロタケから得られたシゾフィランが子宮頸がんなどを適応とする注射薬として登場している。

 これらの中心成分はいずれも構造的特徴を持つβ-グルカンであり、これが制ガンを目的に漢方的、民間薬的に用いられている多くのキノコ、例えばヒメマツタケ、霊芝、マイタケ、チョレイ、フクロタケ、チャーガなどに共通する成分であることは興味深いことである。キノコの成分で制ガン製を期待されるものとしては、ほかにエルゴステロール、ピログルタミン酸、糖タンパク質、核酸、ステロイド剤、テルペノイド類、ゲルマニウムなども数えられる。これらのみせる効果はガン細胞を直接攻撃するのではなく、生体に本来備わっている免疫力を高める結果であると考えられている。

水曜日, 10月 12, 2011

はちみつ

○はちみつ

 ハチミツ(蜂蜜)は、ミツバチが採集した花蜜がミツバチの体内で酵素(α-グルコシダーゼ)によって変化したものである。花蜜それ自体にはショ糖(スクロース)が5~40%含まれ、これが花蜜の甘さを形成しているが、ミツバチの酵素はショ糖を分解してブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)の混合液に変える。この混合液を熟成させたものがハチミツである。

 ハチミツの成分は水分20%、ブドウ糖40%、果糖40%である。甘さは花蜜に比べて格段に強い。その理由のひとつは、果糖はショ糖に比べて約1.5倍の甘味を持っていること、もう一つは水分が少なく、糖分が濃くなっていることによる。花蜜は水よりも比重が少し重い程度で、ミツバチが巣に持ってきた時点では約1.1倍に濃縮された状態にある。働き蜂は蜜房に自らの羽で風を送ることによって、これを1.33~1.5倍という高い濃度に濃縮する。同時に、グルコースオキシダーゼ(酵素)の作用でブドウ糖が低pHのグルコンさんに変わり、その時発生する過酸化水素などと共に殺菌作用のある理想的な保存状態が長期間にわたって保たれる。

 ショ糖はヒトの体内で単糖にまで分解されなければ吸収されないが、単糖である果糖はそのまま吸収されてエネルギー源となる。このように消化・分解の過程を経ずにエネルギー源となるハチミツは疲労回復に有効で、貴重な即効的栄養源であるといえよう。糖分以外にはタンパク質、ミネラル、ビタミン類がバランスよく含まれ、酵素やアセチルコリン、抗生物質なども含有している。ハチミツの効用をまとめると以下のようになる。

 ①疲労回復に即効。ブドウ糖や果糖には栄養増進、強心・利心・利尿・解毒などの作用があり、糖類の中で最も早く吸収されるため、尿酸の分解作用とともに疲労回復に役立つ。②生活習慣病に有効。ハチミツ中のミネラルはコレステロールを除き、内臓の働きを活発にして高血圧・心臓病などに有効性を発揮する。さらに肥満防止、脳卒中・貧血・前立腺肥大の予防があり、不眠症頭痛・神経痛などによい。また、ガンや潰瘍の進行を防ぐ効果も期待されている。③豊富なビタミンB群、パントテン酸の作用で老化防止、美容効果が高い。

火曜日, 10月 11, 2011

サポニン

○サポニン

 サポニン(saponin)は大豆人参、ジャガイモの皮などに含まれるえぐみや苦味の成分で、配糖体の一種である。水溶液が石鹸のように泡立つ性質があることから、石鹸を意味するサポに由来してこう呼ばれる。サポニンは水と油の両方に溶ける性質を持っており、血管について脂肪を除去する働きや、血中コレステロールの低下、過酸化脂質の除去などに有効であることが認められている。

※大豆サポニン

 大豆の肺軸に含まれるサポニンで、大豆の苦味や渋味、えぐみの成分。生の大豆に約0.3%含まれている。大豆サポニンは脂質の過酸化抑制と代謝促進に関係しており、高脂血症、動脈硬化症などの改善に効果があるとされる。大豆サポニンを利用した健康食品については、(財)日本健康栄養食品協会による「大豆サポニン加工食品規格基準」(1991年8月公示、93年一部改正)がある。

※ジンセノサイド

 人参に含まれるサポニンの総称で、人参サポニンともいう。1854年に米国のガリッケスが人参の薬効成分としてパナキロンと名づけたサポニンを分析したことに始まり、これまでに30種類以上のジンセノサイドが発見されている。

 高麗人参には鎮静作用と興奮作用を併せ持つジンセノサイドが含まれており、大脳を沈静させる作用がある反面、体の細胞や臓器の働きを活発にして体調を整える作用がある。また、アメリカ人参には中枢神経の興奮を抑制し、緊張性のストレスを緩和するジンセノサイドRb群が多く含まれるため、高覧人参に比べて頭をスッキリさせ、集中力をつける作用が強いといわれる。

土曜日, 10月 08, 2011

注目ファイトケミカル

フェルラ酸

 フェニルプロペン化物の一種で、植物の細胞壁を形成するリグニンの前駆体として特に米ぬかに多く含まれる。ラジカル消去と活性酸素消去という2つの作用が知られ、食品や化粧品分野での活用、また医薬品原料としても注目されている。1995年に「化学的合成以外の食品添加物」として、20001年には紫外線カットの化粧品原料として認可され、さらに04年6月には食薬区分の改正で非医薬品成分に移行した。

○γ-オリザノール

 米胚芽油や米糠から分離された機能成分で、トリテルペンアルコールのフェルラ酸エステル。米油には1.5~2.9%含有。生長促進・間脳機能調節・抗酸化作用が認められている。物質としてのγ-オリザノールは食薬区分で医薬品成分に指定されている。

○オクタコサノール

 長い炭素鎖を持ったアルコールの一種(オクタコシルアルコール)で、小麦胚芽やアルファルファ、リンゴの皮などに含まれている微量成分。オクタコサノールは運動時におけるスタミナや持久力の向上、酸素利用効率を高めることに有効であることが、米イリノイ大学のトーマス・クレトンによって明らかにされている。筋肉神経性の障害にも有効で、筋萎縮症などの治療にも使われている。

○カプサイシン

 唐辛子の果皮に含まれる辛味成分。体内のエネルギー消費を促進させる働きがあり、結果的に肥満を防止するという効果がある。体内に入ったカプサイシンは中枢神経を介して交感神経を刺激し、副腎皮質からアドレナリンやノルアドレナリンなどの分泌を促すため、エネルギー代謝が盛んになって肝臓や筋肉内のグリコーゲンの分解が促進される。

○イソシオシアナート

 キャベツやカリフラワーなどアブラナ科の野菜に含まれるイソシオシアン酸の一種で、ガンの原因となるDNA損傷を抑える作用がある。また、ブロッコリーに含まれる同類のサルフォラフェインには発ガン物質の影響を抑える作用のあることが知られている。

○ミントポリフェノール

 ペパーミントの葉からミントオイルを除去した抽出物に含まれる成分。花粉症の症状を緩和することが、2003年に岡山大学薬学部のヒト試験で確認されている。

レスベラトロール

 ブドウ樹が真菌や紫外線から身を守るために産生する抗酸化物質のひとつで、灰色カビ病が発生したときに感染の拡大を防ぐ物質として単離されたポリフェノール。ヒトの体内で悪玉コレステロール(LDL)を減らし、血管の炎症や血栓の形成を抑える働きがあるとされている。また、ガン細胞の成長に必要な新生血管の増殖に際して、腫瘍からの血管成長因子の放出を抑えるという報告もある。

○ゲニポシド酸

 杜仲葉に配糖体として含まれる物質で、血圧を下げる作用がある。ゲニポシド酸が吸収されると副交感神経が刺激され、それにつながる抹消動脈の平滑筋を刺激して血管が拡張する。そのため血流の抵抗が減少し、血圧の上昇が抑制される。

○エラグ酸

 ポリフェノールの一種で、植物に広く分布する黄色の色素成分。ゲンノショウコの茎や葉に多く存在する。エラグ酸には強力な抗酸化作用のあることが明らかにされており、老化防止やガン細胞の増殖抑制に関する研究が行われている。

○グリチルリチン

 マメ科の甘草の根茎に含まれる甘味成分で、トリテルペン配糖体。胃液分泌を抑制する働き、消化器の潰瘍を治癒する働きのあることが早くから認められていたが、最近の研究では免疫抑制活性、肝機能増強作用、解毒作用、鎮静作用なども報告されている。グリチルリチン製剤は肝臓病の治療薬として用いられている。このほか、ショ糖の150倍という強い甘味があるため、味噌や醤油の甘味添加物としても使用されている。

金曜日, 10月 07, 2011

硫化硫黄物

○硫化硫黄物

 ニンニクタマネギなどユリ科の植物が持つ独特の臭気は硫黄化合物によるものである。硫黄化合物には抗酸化作用があり、老化やガンの予防に有効であることが知られている。また血液の粘度を低める作用もある。

※アリシン

 ニンニクの臭気成分で、前駆物質のアリインが酵素のアリイナーゼで加水分解されて生じる。アリインとアリイナーゼは細胞中では別の場所に存在して反応することはないが、ニンニクを切ると細胞が破壊され、両者が接触して反応が始まりアリシンが生成される。アリシンはヒトの消化管の中でビタミンB1と反応してアリチアミンという物質に変わる。アリチアミンの血中濃度は長時間維持されるため、ビタミンB1の働きが通常より長く持続するという効果がある。

※ジアリルジスルフィド

 硫化アリルの一種で、ニンニクの臭気成分アリシンが変化したもの。血液の凝固を抑制して、血栓ができるのを防ぐ作用がある。

※硫化プロピル

 生タマネギに含まれている辛味成分で、血糖値を下げる作用がある。また、タマネギを刻むと細胞が破壊されて酵素が働き、トリスルフィドという物質に変化する。トリスルフィドは中性脂肪や総コレステロール値を下げ、血栓を予防する働きがある。

木曜日, 10月 06, 2011

テルペノイド

○テルペノイド

 テルペノイドは柑橘類や香辛野菜などの香りや苦味、辛味成分の成分で、テルペン、イソプレノイドともいう。体内で発ガン物質を無毒化する機能を強化したり、発ガン遺伝子の働きを弱める作用があるとされている。

※リモノイド

 柑橘類の香りや苦味成分の総称で、ミカンの皮に含まれる香り成分のリモネン、グレープフルーツの苦味成分であるリモニンなどがある。いずれも発ガン物質を解毒する作用があるといわれている。

※ショウガオール

 日本産生姜の根に含まれる辛味成分で、抗菌・殺菌・解熱・鎮痛作用がある。また、ヒスタミンを抑制する抗アレルギー効果も認められている。

※ジンゲロン

 生姜の根に含まれる辛味成分で、強力な殺菌作用(チフス菌やコレラ菌)のほか、抗酸化作用も認められている。

※ギンコライド

 イチョウ葉から分離・同定された成分で、テルペノイド一種。これまでの研究で、①血小板凝集作用や血栓の生成阻害作用、②大脳虚血の拮抗阻害作用、③心臓アナフィラキシーに対する拮抗作用、④炎症やアレルギーの阻害作用、⑤角膜再生の活性化作用、⑥中枢神経の覚醒作用、などが明らかにされている。

水曜日, 10月 05, 2011

タンニン

○タンニン

 タンニンは植物の組織内に存在する渋味成分で、、ポリフェノール化合物である。茶葉の種類によって含有量は多少異なるが、分解するとフェノール類が得られる。タンパク質を凝固させる性質があることから皮革のなめしに使われる。タンニンは未熟な柿の果実などに多く含まれている。また緑茶のカテキン、紅茶のテアフラビンもタンニンの一種である。

※カテキン

 水溶性のポリフェノール化合物で、茶葉に含まれている茶カテキンがよく知られている。茶葉の種類によって含有量は多少異なるが、へ平均すると乾燥葉重量の8~15%である。茶カテキンは抗酸化力が非常に強く、発ガン抑制、動脈硬化予防、脂肪代謝異常の改善、血圧上昇の抑制、血栓予防、抗糖尿病、抗アレルギー、抗ウイルス、抗菌、虫歯予防、口臭防止、腸内細菌叢正常化など多岐にわたる分野で研究経過が発表されている。食品分野では、花王が茶カテキンを関与成分にして体脂肪予防でトクホを取得したヘルシア緑茶がヒットし商品になった。

※エピガロカテキンガレート

 茶カテキンの約半量を占めている。1999年にスウェーデンのカロリンスカ研究所がエピガロカテキンガレートがガン細胞の血管新生を阻害させることをインビトロ実験で明らかにし、英国の科学雑誌ネイチャーに掲載された。

※エピカテキンガレート

 茶カテキンの一種で、化学製品から出る内分泌かく乱物質(環境ホルモン)の働きを阻害する作用がある。環境ホルモンは体内で性ホルモンの受容体と結びついて人体に有害な働きをすると考えられているが、エピカテキンガレートは女性ホルモン受容体と結合する性質があるため、内分泌かく乱の結合を邪魔し、結果的に環境ホルンの働きを防ぐことになる(宝酒造バイオ研究所、環境ホルモン学会で発表)。

※テアフラビン

 タンニンの一種で、紅茶に含まれる赤色色素。葉中のカテキン類が発酵の過程で酸化されて生じる。テアフラビンの健康機能性についてはあまり研究が進んでいないが、抗酸化作用が期待される成分であることから、生活習慣病の改善に寄与すると考えられている。

火曜日, 10月 04, 2011

フラボノイド

○フラボノイド

 狭義のフラボノイド類には、構造の違いからフラボノール類(淡黄色)、フラボン類(淡黄色)、フラバノン類(無色)、フラバノノール類(無色)、イソフラボン類(無色)があり、その多くは糖と結合して配糖体として存在している。

※ケルセチン

 フラボノイドの内、フラボノールに分類されるポリフェノール化合物。同類にケンフェロール、ミリセチンなどがある。タマネギやホウレンソウ、ケール、パセリなどに多く含まれ、LDLコレステロールの酸化を抑制することで、動脈硬化を防ぐ作用のあることが知られている。ケルセチンは通常、配糖体のルチンとして存在することが多い。

※ルチン

 ケルセチンに糖のルチノース(グルコース+ラムノース)が結合したフラボノイド配糖体で、ビタミンCの研究過程で発見された抗酸化物質。ビタミンPとも呼ばれる。ソバ(蕎麦)やトマト、アスパラガスに多く含まれている。ルチンは毛細血管の透過性を保ち、血管がもろくなるのを防ぐ。また、血圧を下げる作用があるため、血管補強剤や毛細血管の止血剤として高血圧、脳出血、血圧以上など出血性の疾患に使われている。

※アピイン

 フラボン形色素のアピゲニンに糖のアピオースとグルコースが結合したフラボノイド配糖体で、セロリやパセリの葉に含まれている。神経の鎮静作用がある。

ヘスペリジン

 フラバン系色素のヘスペレチンに糖のルチノースが結合したフラボノイド配糖体で、温州みかんなどの柑橘類に含まれている。ルチンと同じく、毛細血管の透過性を保ち、血管壁を丈夫にするほか、毛細血管の収縮作用や血圧効果作用がある。

※ナリンギン

 フラバノン系色素のナリンゲニンに糖のラムノースが結合したフラボノイド配糖体で、グレープフルーツや夏みかんなどの柑橘類に含まれている。血中の中性脂肪を分解して肥満予防に有効であるとされるがナリンギンはカルシウム拮抗薬(高血圧の薬)や睡眠薬の一部に作用すると、薬効を強くして副作用を引き起こすことが知られており、グレープフルーツジュースなどとこれらの薬剤との併用は避けるべきである。

※ゲニスチン

 イソフラボン系色素のゲニステインが糖と結合した配糖体で、大豆の胚軸に多く含まれている。大豆イソフラボンの一種。

土曜日, 10月 01, 2011

アントシアン

○アントシアン

 アントシアン(anthocyan)は、赤、紫、青色を呈するフラボノイド色素で、多くの植物にアントシアニジン配糖体として存在している。

※アントシアニジン

 フラボノイド色素のアントシアニジンに糖が結合した配糖体。ブルーベリーやサツマイモの皮、黒豆などに青紫の色素成分として存在している。活性酸素の発生を抑制する抗酸化物質として知られているが、ロドプシン(網膜の色素体で、光の刺激を脳に伝える働きをする)の合成を促進して、目の疲労回復や近視予防の効果が認められていることからサプリメント素材として人気を呼んでいる。アントシアニンはまた、肝機能の改善にも有効に働くことが知られている。軽度の肝機能障害に対して、紫芋のジュースが有効に作用したという研究報告がある。

※プロアントシアニジン

 フラボノイドの一種で、ポリフェノール化合物。強い抗酸化作用のあることが知られており、ワイン醸造時に種子も一緒に発酵させる赤ワインに多く含まれていることに着眼し、ブドウの種子から有効成分として分離された。プロアントシアニジンの抗酸化力を調べた研究(キッコーマン)では、緑茶に含まれるカテキンやトコフェロール(ビタミンE)に比して約5倍の相対抗酸化力を持つことを確認したという。この高いフリーラジカル消去作用は、老化・発ガン・生活習慣病・白内障などの誘引とされる活性酸素の発生と、それに伴う過酸化物質の蓄積や栄養成分の過酸化的分解を防ぐことから、栄養補助食品の素材のほか、加工食品(蓄肉・飲料・発酵食品・菓子類・乳製品・調味料など)の酸化防止剤、化粧品素材などに活用されている。