○芍薬(しゃくやく)
白芍は外皮を除いて湯通ししたもの、赤芍は中国東北部の野生種の皮を去らずに乾燥したものを使用する。現在、四川省で栽培された芍薬の皮を去らずに乾燥させたものが日本薬局方のシャクヤクに適合することから、日本で赤芍として使用されている。
中国北部原産のボタン科の多年草シャクヤク(Paeonia lactiflora)の根を用いる。日本には、奈良時代に渡来したといわれ、室町時代には栽培の記録がある。現在では奈良県や北海道で栽培されている。シャクヤクの属名をペオニアというが、これはギリシャ神話の医神、パイオンに由来するもので、西洋でも古くから薬用植物として知られていた。
同属植物にボタン(P.suffruticosa)がある。ボタンは落葉低木であるのに対し、シャクヤクは多年草であり、冬にはその地上部が枯れてしまう。シャクヤクは初夏に大きな花を咲かせるためよく観賞用として栽培されているが、薬用にするときには蕾を全部摘み取ってしまい、植え付けから4~5年栽培した後の肥大した根を用いる。日本の芍薬は「第13改正日本薬局方」では乾燥重量でペオニフロリン2%以上を含むものを規定されている。
芍薬は最古の本草書「神農本草経」の中品に収載され、「シャクヤク、味苦、平、邪気腹痛を主り、血痺を除き、堅積、寒熱、疝瘕を破り、痛みを止め、小便を利し、気を益す」とあり、赤白の区別はされていなかったが、宋代の頃から区別されるようになった。今日、中国では芍薬は赤芍と白芍に区別され、通常、古くは白い花のものを白芍、赤い花のものを赤尺といっていたこともある。
現在、日本では赤尺は日本薬局方に適合しないことが多いため、白芍のみを芍薬として用いている。また日本では皮を去って生干しした芍薬が用いられているが、中国では皮を去った後、湯通ししてから乾燥させた芍薬(真芍)が白芍として流通している。中国医学において白芍と赤尺の効能は異なり、白芍はおもに補血・止痛として、赤芍はおもに活血・清熱薬として用いる。
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