○土木香(どもっこう)
ヨーロッパ、北アジア原産で北米などでも野生化しているキク科の大型多年草オオグルマ(Inula helenium)の根を用いる。日本には江戸時代に薬用として渡来し、大和や信濃などで栽培されていたと伝えられている。
木香とはインド原産のキク科のモッコウ(Saussurea lappa)の根をいうが、木香の代用にされることから土木香の名がある。木香よりも弱いが、土木香にも芳香がある。欧米ではリキュールやベルベットの香料、菓子原料として、またドイツではスープなどにも入れられる。
根にはアラントラクトンを主成分とする精油やイヌリンが含まれ、アラントラクトンは家畜の駆虫作用や抗菌作用などがある。本来、ヨーロッパの薬草(エレキャンペーン)であり、発汗、利尿、去痰薬として知られている。かつては結核の特効薬といわれ、今でも喘息や気管支炎などの呼吸器系の治療に用いられている。また疥癬やヘルペスなどの皮膚病の外用薬としても用いられる。
漢方では木香と同様に健胃・理気・止痛の効能があり、脇腹部の脹満や疼痛、嘔吐、下痢、マラリアなどに用いる。江戸時代には腹痛や胃腸炎の製薬として知られた木香丸には香附子・黄柏・胡黄連とともに土木香が配合されていた。現在でも家庭薬の賦香料として用いられている。
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