○山椒(さんしょう)
日本の北海道から九州、朝鮮半島の南部に分布するミカン科の常緑低木サンショウ(Zanthoxylum piperitum)およびアサクラザンショウ(Z.piperitum f.inerme)の果皮を用いる。種子は淑目という。中国では同属植物の果皮を花椒として用いるが、これを日本ではサンショウに代えて用いる。しかし、近年では中国産の花椒が、日本薬局方で規定されている山椒の代わりに利用されることもある。
アサクラザンショウは兵庫県の朝倉で偶然発見されたサンショウの品種で、ほとんど刺がなく果実が大きいため日本各地で栽培されている。サンショウの木材は硬く、すりこぎに賞揚されている。サンショウは日本固有の香辛料で、春先の新芽や若い葉は「木の芽」、花は「花ざんしょう」、青い果実は「実ざんしょう」、熟した赤い果実は粉にして「粉ざんしょう」とさまざまに用いられている。
果実は完熟すれば辛味が少なくなる。しかし未熟なときは辛味が強いが、乾燥しても種子が出ない。このため品質には採取時期が重要である。薬用には果柄や種子がよく除かれているものを用いる。また辛味成分は保存期間が長くなると減少するので注意を要する。
果実には精油成分のリモネンやシトロネラール、辛味成分のサンショールやサンショウアミド、痙攣毒のキサントキシンなどが含まれる。キサントキシンは魚類に強い痙攣を起こすが、他の動物に対する毒性は弱い。辛味成分には殺虫作用や局所刺激作用のほか、健胃、整腸、利尿作用が認められている。山椒は一般薬にも芳香辛味性健胃薬や苦味チンキの原料として利用されている。
漢方では温裏・止痛・駆虫の効能があり、冷えによる腹痛や下痢、回虫症などに用いる。また湿疹や掻痒症、ひび、あかぎれに煎液を外用する。漢方処方で蜀椒とあるのは中国では花椒を用いるが、日本では山椒に代えて用いている。山椒のほうが花椒よりも良質とされているが、現在では薬用や食用としてカホクザンショウ(花椒)やイヌザンショウ(Z.shinifolium)の果実が輸入されている。ちなみに打ち身や捻挫の外用薬として知られる楊柏散にはイヌザンショウの葉のついた枝を乾燥して粉末にしたものが配合されている。
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