○五倍子(ごばいこ)
ウルシ科のヌルデの葉に寄生しているアブラムシ科のヌルデシロアブラムシ(ヌルデノミミフシ)などが樹木に作った虫癭(虫こぶ)を用いる。
このアブラムシは幼虫で越冬し、翌年の春に羽化してヌルデの木に産卵する。そこで雌雄の無翅雌虫を産み、これらが交尾した後さらに無翅雌虫を産み、この雌虫がヌルデの若葉に寄生する。その汁液を吸う刺激のため葉の組織が次第に増殖し、虫癭を形成する。その中で雌虫は単性生殖を行って仔を産み、それが秋に有翅雌虫となって飛散する。
秋に虫の入ったまま採取し、熱湯で数分煮たのち乾燥する。日本では虫癭を一般に木附子、また加熱して乾燥したものを白附子、熱湯を通したものを黒附子ともいう。
成分には多量のタンニンが含まれ、タンパク質と結合して凝固し、止血、止瀉、抗菌作用が認められる。工業的にはなめしや黒色染料、インク製造原料などに用いられる。かつて日本には五倍子の粉末を鉄汁で黒く発色させたもので歯を染める御歯黒の風習があった。
漢方では収斂・固渋薬として止瀉・止咳・止汗・止血の効能があり、慢性の下痢や咳嗽、脱肛、盗汗、鼻出血や痔出血に用いる。かつて五倍子の粉末に茶を加えて麹で発酵させた百薬煎が止瀉薬として用いられた。
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