○鶏血藤(けいけっとう)
中国の南部、台湾に分布し、沖縄県で観賞用として栽培されるマメ科のつる性植物ムラサキナツフジ(Millettia reticulata)などのつる茎を用いる。
この鶏血藤と呼ばれる生薬は広東・広西・甘粛省ではムラサキナツフジ、広東・広西・雲南省では蜜花豆(Spatholobus suberectus)、広東・広西・雲南省では白花油麻藤(Mucuna birdwoodiana)、江西、四川省では香花岩豆藤(Millettia dielsiana)などの植物が用いられている。特にムラサキナツフジの茎は昆明鶏血藤と呼ばれ、香花岩豆藤は豊城鶏血藤と呼ばれている。
このように鶏血藤の基原植物はさまざまであるが、切ると赤い汁が出ることからその名がある。それぞれの成分は不詳であるが、動物実験では昆明鶏血藤に子宮収縮作用、豊城鶏血藤に消炎作用や鎮静・催眠作用、蜜花豆に心臓抑制作用などが報告されている。
漢方では補血・行血・舒筋活絡の効能があり、月経異常や生理痛、麻痺、関節痛、打撲痛などに用いる。月経不順や無月経には四物湯・八珍湯などと、生理痛には川芎・延胡索・香附子などと、リウマチなどによる関節や筋肉の痛み、痺れには羌活・独活などと、脳卒中による麻痺には桃仁・紅花などと配合する。
近年、中国では再生不良性貧血や放射線治療による白血球減少などにも応用されている。鶏血藤を煎じつめて濃縮し固めたものを鶏血藤膠という。効能はほぼ同じであるが、鶏血藤よりも滋養作用や止痛作用が優れている。これを製剤化したものが鶏血藤浸膏片という名で販売されている。ただし、有名な雲南省凰慶の鶏血藤膏はマツブサ科の南五味子などを主薬とした複合剤である。
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