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水曜日, 6月 20, 2012

甘草

甘草(かんぞう)

 ウラル地方、シベリア、モンゴル、中国北部に分布するマメ科の多年草ウラルカンゾウ(東北甘草・Glycyrrhiza uralensis)、スペインカンゾウ(西北甘草・G.glabra)、新疆甘草(G.inflata)などの根及び匍匐茎を用いる。日本薬局方においては、G.uralensisまたはG.glabraを基原植物としている。

 日本市場においては東北甘草が良品とされているが、中国では西北甘草が一般的に用いられている。甘味が強いために甘草という名があり、甘味料として醤油、漬物、菓子、タバコなどに用いられている。英語ではリコリス(Licorice)といい、リコリス菓子やルートビアなどの原料として利用されている。

 甘草は漢方薬との中で最も多く配合され、ほかの薬物の効能を高めたり、毒性を緩和することから国老という別名もある。カンゾウは洋の東西問わず古くから薬として用いられている。西洋ではヒポクラテスの全集やテオフラストスの植物誌などにカンゾウについての記述がみられ、中国最古の本草書である神農本草経の中にも上薬として甘草が収載されている。

 カンゾウは甘味味成分としてグリチルリチンを5~10%含み、グリチルリチンは砂糖の約150倍の甘さがある。グリチルリチンの薬理作用にはステロイド様作用、抗炎症作用、抗潰瘍作用、鎮咳作用などがあり、とくに肝機能改善薬として広く用いられている。また近年、エイズ治療薬としても注目されている。新薬にも強力ネオミノファーゲンCやグリチロンなどいくつかのグリチルリチン製剤がある。

 漢方では補気・清熱解毒・止痛などの効能があり、胃腸の虚弱、虚労、腹痛、下痢、動悸、咽頭腫痛、消化性潰瘍、腫れ物、薬毒などに用いる。一般に甘草を生で用いれば清熱解毒の作用が強く、炒めて炙甘草にすると補気作用が強くなる。また百薬の毒を解すといわれるように他の生薬の刺激性や毒性を緩和する目的でも配合される。この場合も本来は炙甘草を用いるべきであるが、日本ではしばしば生甘草が用いられている。甘草の多量投与による副作用として浮腫、高血圧、低カリウム血症などの偽アルドステロン症、ミオパチーなどが知られており、特に高齢者や女性、また利尿剤併用時に注意すべきである。

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