○桔梗(ききょう)
日本、抽選半島、中国などにかけて分布するキキョウ科の多年草キキョウ(Platycodon grandiflorum)の根を用いる。日本各地に自生しているが、生薬のほとんどは中国などから輸入している。
万葉時代にはアサガオと呼ばれ、秋の七草にあるアサガオはキキョウのこととされている。桔梗の名は根が結(桔)実して硬(梗)いことに由来する。桔梗を韓国語ではトラジといい、根を塩漬けなどにして食べる習慣がある。一般にキキョウの寿命は1~3年といわれているが、まれに長年生き延びているキキョウが発見されることがあり、韓国では大変体によいものとして珍重してきた。近年、このドラジの栽培に成功し、とくに21年以上育成したキキョウの根を長生ドラジとして商品化している。根には有毒のサポニンが含まれるが、ゆでて水にさらせば食べられるので日本でも重要な救荒植物であった。
根にはキキョウサポニンのプラチコジン、ポリガラシンなどが含まれ、鎮痛、鎮咳、去痰、抗炎症、解熱作用などが知られている。漢方では宣肺・止咳・去痰・排濃の効能があり、咳嗽、咽頭腫痛、下痢、腹痛などに用いる。とくに呼吸器疾患の要薬として知られている。
また桔梗は「船楫の剤」とも呼ばれ、他の薬剤の効果を上部の病変部に運ぶ働きがあるという説もある。このため肺など上焦の疾患に桔梗が適している。龍角散や浅田飴など多くの鎮咳・去痰の家庭薬にも配合され、同様の効能のあるセネガと配合したセネガ・キキョウ水もよく知られている。ただ、多量、あるいは長期に桔梗を服用するとサポニンのため胃が荒れ、吐き気を催すことがある。
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