○カミツレ
ヨーロッパ原産のキク科の一年草カミツレ(Matricaria chamomilla)の花もしくは全草を用いる。日本には江戸時代にオランダから伝えられ、現在、鳥取や岐阜、岡山などで栽培されている。
カミツレの花はノジギクに似て中央は黄色い管状花、周囲は白色の舌状花で特有の芳香がある。カミツレの花はオランダ語のカミルレがなまったもので、英語ではカモマイルという。この一年草のカミツレはジャーマンカミツレとも呼ばれ、これとは別に多年草のローマカミツレ(Anthemis nobilis)というよく似た植物がある。このローマカミツレは頭花が大きく香りも少し異なるが、一般には同じように利用されている。
カミツレは紀元前2千年の古代バビロニアでも薬として使用されたといわれ、現在でもヨーロッパの代表的な民間療法の一つである。花の精油成分には芳香のあるビザボロールやマトシリンなどが含まれ、マトシリンは蒸留すると青色のアズレン誘導体、カマズレンに変化する。芳香性苦味健胃薬や発汗薬、消炎・抗アレルギー薬、鎮静・安眠薬、駆風薬として幅広く用いられるほか、香料としてリキュールや香水、シャンプーなどにも利用されている。
風邪の初期や頭痛、下痢には花ひとつまみに熱湯を注ぎ、カミツレティーとして飲む。またリウマチや痔核、冷え性、心身の疲労などに花や葉茎を木綿袋に入れて浴湯料として使用する。かつてカモミールの水蒸気蒸留によってアズレンが抽出されていた。アズレンは胃炎や胃潰瘍の内服薬のほか、口内炎や扁桃炎の含嗽薬、湿布の軟膏剤などに用いられている。ちなみにローマカミツレはスペインではシェリー酒の風味付けとしても用いられている。
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