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水曜日, 4月 30, 2008

ガジュツ(莪朮)

〇ガジュツ(莪朮)

 ガジュツはインド原産のショウガ科の多年草で、紫ウコンとも言われる。

 南アジア一帯で広く栽培され、日本では沖縄、屋久島、種子島で良質品を産する。里芋に似た直径4~5cmの卵型の根茎の断面は淡黄色、中央部が淡い紫色を帯び、特有の芳香と強い苦みを持っているが、それを薄く切って乾燥させ粉末にしたものが生薬として用いられる。その形と顕著な薬効とによって、わが国では古くから弘法大師の石芋とも呼ばれていた。中国薬物書の古典本草綱目には、主治として消化器病、感染症、神経症、血の道症、腫瘍、小児喘息などが挙げられ、古今の彼我の文献には健胃、駆風、鎮痛、駆お血、通経薬として薬効顕著であることが紹介されている。ガジュツを主剤とした漢方薬もあり、それだけに有効成分とその薬理作用に関する研究も活発に行われてきた。

 全量の約1~1.5%に当たる精油成分からは多くのモノテルペン類(シネオールやカンファーなど)、セスキテルペン類(アズレンなど)、クルクミン類など微量成分を含めると100種近くが見い出され、それらの作用機序が解明されてきた。芳香性があるため飲んだ時にの中がすっきりとし、特有の苦味(モノテルペン類の配糖体)が刺激となって胃液の分泌を促し、同時に精油成分のシネオールも唾液や胃液の分泌を促すので消化力が高まるという健胃効果をもたらす。シネオールには胆汁の分泌を促す作用もあり、消化を助けるとともに血中コレステロールを下げる働きもする。また強い殺菌・防腐作用があり、同様の作用はカンファーにも認められている。カンファーはカンフル剤の主成分で強心作用がある。

 このような多様な成分の相乗効果によって生ずるガジュツの効果については数多くの報告がなされている。糸川秀治(東京薬科大学)はマウスによる実験で、ガジュツのエキスに抗腫瘍作用、肝障害の発生を抑える作用があることを認めている。また、水野修一(国立小倉病院)は臨床試験によって、胃潰瘍・十二指腸潰瘍・慢性委縮性胃炎の元凶と見られているヘリコバクター・ピロリがガジュツの投与によって胃内から消滅することを確認している。奥田拓道(愛媛大学医学部)らの研究グループは、アルコール抽出分画にアレルギー物質となるロイコトリエン生成に関わる5-リポシゲナーゼを抑制することを見出しており、これはガジュツが抗アレルギー作用を有すると考えられることから、今後の臨床的成果が待ちれる。

 中国では、抽出液の注射で子宮ガン・皮膚ガン・口唇ガンなどに著効を見たという報告が多い。また、慢性肝炎・膵炎、胃潰瘍、不整脈、高血圧、高血糖といった重篤な疾患以外にも、ニキビ、シミ、口臭、便秘、肩こり、腰痛、冷え性、脱毛症、夜尿症などの日常的な不調に対する効果も多数公表されるとともに、ウコンとの併用による相乗的な効果も報告されてきている。

火曜日, 4月 29, 2008

〇鉄

 元素記号はFe。成人の体内には4~4.5g存在している。その内、約70%は血液中のヘモグロビン、筋肉中のミオグロビン、酵素のチトクロームやカタラーゼにヘム鉄として含まれ、機能鉄として酸素の運搬や酸化還元反応、解毒作用に関与している。残りの30%は鉄貯蔵タンパク質(フェリチン、ヘモデシリン)に非ヘム鉄として組み込まれ、肝臓に蓄えられている。動物性食品に含まれる鉄の多くはヘム鉄(二価鉄)だが、穀類や野菜などの植物性食品に含まれる鉄は非ヘム鉄(三価鉄)の形態をとっている。鉄は十二指腸で二価鉄の状態で吸収される。そのため植物性食品の三価鉄は胃酸で二価鉄に還元されなければ吸収されない。この時、ビタミンCとの共存下で吸収率が高めることが知られている。ホウレン草は鉄とビタミンCの両方を含む食品であり、鉄の摂取源として理想的である。鉄が欠乏すると貧血、運動機能や認知機能の低下を招く。

 食事摂取機銃05年版では、の推奨量は1日当たり男性は18~69歳で7.5mg、70位以上で6.5mg、女性は18歳以上(月経あり)で10.5mg、同(月経なし)で6.5mg、上限量は成人男性で45~55mg、成人女性で40~45mgとしている。また保健機能食品制度では、鉄を1日摂取量当たり2.25~10mg含む食品には鉄の機能を表示することができる。

※ヘム鉄

 赤血球のヘモグロビン(色素タンパク質)に含まれる二価鉄。食品ではレバーや赤身肉、カツオなどの動物性食品に多く含まれている。植物性食品に含まれる三価鉄に比べ、吸収率が高い。トクホの関与成分にもなっており、貧血気味の人に適した食品として清涼飲料やゼリーなどがある。

月曜日, 4月 28, 2008

α-リポ酸

〇α-リポ酸

 2004年3月の食薬区分改正で食品にも使えるようになったα-リポ酸は、別名をチオクト酸といい、ドイツでは糖尿病合併症予防の治療薬として、アメリカでは肝臓疾患治療に利用されてきたビタミン様物質である。その作用は大きく2つあり、糖の代謝促進と抗酸化作用である。食事から摂取した糖質は体内で解糖の最終産物であるピルビン酸に変化してミトコンドリアに運ばれ、そこでα-リポ酸によってアセチルCoAに転化し、TCA回路(クエン酸回路)で代謝される。

 α-リポ酸の体内量が少なくなると、糖がエネルギーとして代謝されず肥満の原因となる。一方、抗酸化作用はビタミンC・Eの400倍の強さを持つといわれているが、その酸化物質としての特異性は、細胞膜の脂肪性領域と水溶性領域の両方で働くことができることである。つまり、水溶性ビタミンや脂溶性ビタミンのようにその作用が限定されず、さらに分量が小さいので体の隅々まで浸透しやすい。α-リポ酸は治療目的で使用する場合の摂取量は1日当たり600mgとされているが、サプリメントとして摂取場合は、メーカー推奨量が1日100mg程度ある。

土曜日, 4月 26, 2008

クエン酸

〇クエン酸

 クエン酸はレモンやライムなど柑橘類に多く含まれる爽快な酸味を持つ酸で、レモン1個に約4gのクエン酸が含まれている。ヒトの血液中には総量にして0.1g近く含まれ、常に体中を巡り、生命維持に欠かすことのできないエネルギーを獲得する場面で重要な役割を担っている。

 ヒトの体内でブドウ糖がエネルギーに変わるには2つの方式がある。1つは解糖、もう一つはクエン酸回路だが、この回路のキーを握っているのがクエン酸である。実際にクエン酸を摂取することによって、運動能力の向上、疲労回復、肩こり・腰痛の予防・抗菌・抗ウイルス作用が見出されている。

 クエン酸のもう一つの働きにキレート作用がある。キレートとはギリシャ語でカニのはさみを意味する「ケーレー」に由来する言葉で、金属のイオンを化合物の両端に挟み込み、その金属イオン特有の性質を覆い隠す。クエン酸は生体内でカルシウムやマグネシウム、あるいはアルミニウムなどのミネラルイオンと結合し、イオンとしての作用を現わさないようにする働きがあるため、保存血液の抗凝固剤や大腸ガンの検査時に使われるマグネシウム塩類下剤に応用されている。また、クエン酸と鉄のキレート化合物であるクエン酸鉄はアルツハイマー病の治療薬として用いられることもある。それはクエン酸のキレート形成能力とその無害性によるものである。

 クエン酸は柑橘類のほか、梅干し天然醸造酢などにも多く含まれており、最近は各種機能性素材とクエン酸が組み合わされ、さまざまな健康食品が登場している。

金曜日, 4月 25, 2008

ハスカップ

〇ハスカップ

 ハスカップはスイカヅラ科に属する低木で、7月下旬に1~2cmほどの濃い紫色の実をつける。名前はアイヌ語に由来する。学名はLonicera caerulea var.cmphyllocalyx。和名はクロミノウグイスカグラ(黒実鶯神楽)。日本では北海道のほか本州中部の高山のごく一部で見られるが、原産地はロシアのバイカル湖周辺とされており、中国北部の産地にも古くから自生していることが確認されている。ただし、現在栽培されているのは北海道のみ。アイヌの人々の間では、この実が古くから「体を軽くし、不老長寿に役立つ果実」として珍重され、特に心臓病や貧血、慢性疲労、冷え症などに効果があるとされている。

 近年その機能性が注目されてサプリメントとして用いられるようになり、女性向けの美容サプリメントとしても開発されている。

 ハスカップの実には目の疲れに効果的なアントシアニンが豊富に含まれており、なかでも抗酸化活性の高いシアニジン系アントシアニンが、総アントシアニンの100%(主成分はシアニジン-3-グルコシド)を占める。このほか、ビタミンCや、老化防止効果があるビタミンE、抗酸化成分や鉄分などのミネラルが含まれている。

木曜日, 4月 24, 2008

黒酢

〇黒酢

 酢は調味料の一つで日女的な食品だが、これを健康酢の位置にまで高めたのが黒酢である。米酢の一種であるが、特に長期間(6か月以上)発酵・熟成させることによってアミノ酸と糖が反応して黒褐色化することから黒酢と呼ばれている。アミノ酸をはじめとする多くの栄養分を含んでおり、血圧降下作用があるなどの健康効果が広く知られたこともあって、今日の健康酢ブームの主役に躍り出た。

 黒酢の発祥地は鹿児島県福山町で、つぼ酢がそのルーツである。しかし中には過熱気味の黒酢ブームを反映してか、長い熟成期間を置かずに、食酢をカラメルで着色して黒酢と称するようなものまで現れ、消費者を混乱させている。

 このような状況を踏まえ農林水産省は2003年7月、それまで米酢の規定しかなかったJAS規格に、新たに「米黒酢」の規格を設けた。それによると「穀物酢のうち、原材料として米(玄米のぬか層の全部を取り除いて精米したものを除く)、またはこれに小麦もしくは大麦を加えた者ののみを使用したもので、米の使用量が穀物酢1Lにつき180g以上であって、かつ、発酵および熟成によって褐色または黒褐色に着色したもの」と定義された。黒酢は調味料としても利用できるが、価値が高めのことから、特に健康飲料として製品化されるケースも多い。

水曜日, 4月 23, 2008

食用菊

〇食用菊

 は日本の秋を象徴する花として知られるが、中国では延命長寿の花として紀元前7世紀ころから培養され、奈良時代に日本にもたらされた外来植物とされている。旧暦9月9日の重陽の節句は「菊の節句」とも言われ、この習慣が平安時代に中国からもたらされたころから、菊を鑑賞する習慣が生じたとされる。菊は万葉集には詠まれていないが、古今和歌集のころから多くの和歌に詠まれている。その高い品格と清らかなイメージは、鎌倉時代初期に後鳥羽上皇が菊の花のデザインを好み、天皇家家紋としたことで決定的になったといわれている。江戸時代に入ると栽培、育種が盛んになり、多数の品種が生み出された。幕末のころは中国・ヨーロッパに輸出され、それぞれの国の菊事情を一変させるほどの人気を呼び、育種が盛んに行われるようになった。

 食用菊は、大きく分けて花弁が筒状のものと平たいものの2種類がある。特に食用として栽培されている菊を指す。料理のつまに使われるつま菊などの小輪種や、花びらのみを食用とする大輪種がある。つま菊以外は山形、青森など東北地方、新潟県などで栽培される。苦みが少なく甘みがあるのが特徴で、ゆでておひたしや酢の物、和え物、吸い物、天ぷらなどに用いられる。また菊海苔、干し菊など、蒸した後に薄く四角に乾燥させた加工品もある。現在は数多くの品種があり、冬の一時期を除いた一年中の採取が可能になっている。黄色の越天楽、いわかぜ(ともに山形県)、南部菊、阿坊宮(ともに青森県)、金からまつ(新潟県)、湯沢菊(秋田県)や、うすむらさき色のもってのほか(山形県)、延命楽、かきのもの(新潟県)などの品種がある。同一品種で別名のものもある。タンパク質、カリウム、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンC、β-カロチンなどを含む。

火曜日, 4月 22, 2008

ギャバ(γ-アミノ酪酸)

〇ギャバ(γ-アミノ酪酸)

 γ-アミノ酪酸の英語名の頭文字をとったギャバ(GABA)の略称が一般名に用いられている。哺乳動物の脳から抽出された1950年以降、多くの研究が行われている。ヒトの体内においては、グルタミン酸が脱炭酸する酵素反応によって生成されるアミノ酸で、脳内の主要な抑制性神経伝達物質として存在する。脳の酸素供給量を増やして脳細胞を活性化させ、イライラや不安を鎮める作用がある。近年では、生体内の代謝系に関する作用として血中コレステロール低下作用抗肥満症効果血圧上昇抑制効果、アルコール代謝促進作用などが報告されている。免疫系の作用としてアレルギー予防、アトピー性皮膚炎改善効果、発ガン抑制作用なども報告され、今後の科学的な解析においてさらに明らかになっていくことが期待されている。

 ギャバは哺乳動物科のほか、植物にも存在することが知られている。発芽させることによってさらに増加することも知られている。発芽玄米には白米の約10倍のギャバが含まれているという報告もある。このほか肉類、鶏、魚類、野菜、果物、発酵食品度にも含まれている。

 これらの作用を検討した研究が近年行われている。横越英彦(静岡県立大学食品栄養科学部)は、20~30代の22人の男女を対象に、朝のラッシュ時の満員電車内で増幅するストレスに対する軽減効果を検討、ギャバの摂取によってストレスが半減するという結果が得られたことを平成18年11月に報告している。また日本農芸化学会2007年度大会では、ヒトを対象としたギャバの摂取試験の結果が(株)ファーマフーズの研究グループなどから報告されたが、このうちギャバ配合の機能性飲料による心身疲労軽減効果について検討した報告では、50mgのギャバが配合された飲料の摂取群に疲労感の軽減効果及びストレス緩和効果について有意差が認められたとしているほか、カルビー(株)はギャバを強化したジャガイモを主原料とした菓子の摂取による抗ストレス作用を唾液中のストレスマーカーにより検討し、ストレス館や不安感の抑制に影響した測定数値が報告されている。

 このほか平成19年の第61回日本栄養・食糧学会大会では、横澤隆子(富山大学和漢医薬学総合研究所)が腎摘出ラットにおけるGABAの腎不全進行抑制作用について、また関連企業からギャバの腎線維化の抑制作用について報告している。

 最近の食品研究では、平成19年9月に日本食菌工業の国産姫マツタケ(子実体)100g中のギャバの含有量が1160mgにのぼることが確認された。これは発芽玄米100g当たりのギャバ含有量の58~77倍に相当する量で、これまで確認されているヒメマツタケの食品機能との関係も含めて、さらに解析研究が進展するかの性が生じている。

月曜日, 4月 21, 2008

蟻(あり)

〇蟻(あり)

 は膜翅類アリ科の成虫で、世界に2万種近く生存し、日本だけでも約250種類がいる。古来より乾燥蟻粉末は補腎、養肝、健脾の効ありとされ、周代(紀元前1050~256年)は貴族の滋養強壮剤とされた。漢代(紀元前202~後220年)には蜂蜜と混ぜて骨の鎮痛、強化に「金剛丸」という丸薬として用いられた。また、明代の本草綱目には玄駒の名で記され、搗いて化膿腫や疸毒の外用治療薬とされている。

 現在、中国で食用、薬用、日本で健康食品に用いられる蟻は衛生的な面から木の上に巣を作る疑黒多刺蟻に限定されている。成分としては必須アミノ酸をすべて含むタンパク質を50%以上含み、鉄、マンガン、カルシウム、亜鉛等のミネラルやビタミン1、B2、B12、Eなどを豊富に含有している。また薬効成分としては、鎮痛、消炎、筋肉増強作用を持つとされる昆虫変態ホルモン「エクソジン」、消炎作用を持つサポニン類、殺菌力を持つ蟻酸、多種類の酵素などが見いだされている。

 現在では主としてB型肝炎、変形性関節炎、リウマチ性関節炎の鎮痛改善の用途に頻用されているほか、精力増強貧血や骨粗鬆症の予防改善にも利用される。

 その効果は、中国の周らによるB型肝炎患者168名への投与では、有効率86.9名と報告されている(中薬理と臨床6、1994年)。また呉らのB型肝炎85症例の有効率は81%であったとされた(山東医薬36巻7期、1995年)。さらに、日本の東京理科大学における蟻主剤の健康食品による変形性膝関節炎22症例の4週間投与後の有効率は、痛みに対して73%、こわばりにたいして50%、関節の屈伸に対して64%であった(薬理と治療32、No1.、2004年)

日曜日, 4月 20, 2008

オリザブラン(米糠水溶性多糖類)

〇オリザブラン(米糠水溶性多糖類)

 米ぬかは東洋医学で米皮糠(べいひこう)と呼ばれ、慢性脚気や食道狭窄症の改善、胃の消化力や腸の蠕動運動の促進、自律神経正常化等に用いられている。栄養源としてはもタンパク質約1.32%、脂質約18.3%、炭水化物約38.3%のほか、ビタミン、ミネラル類も多量に含むなど、すぐれた特質を有する。また、日本では石鹸代わりの「ぬか袋」として銭湯で売られていた時期もあり、長年、皮膚やの美容化粧品としても利用されている。

 米ぬかの主成分はオリザノールと呼ばれ、ぬか油(トリテルペンアルコールフェルラ酸エステル)、ビタミンE、脂肪酸、高級アルコールといった、水に不溶の油溶成分に起因すると考えられてきた。しかし、米ぬかが美容を目的として使用されるときは、ぬか袋のように入浴洗顔時に湯水とともに用いることが多いことから、林輝明は、水に溶けにくい油溶成分よりも水可溶成分のほうにいっそうの美容作用を示す有効成分が含まれているのではないかと考え、東北大学薬学部の曳野教授と共同研究を開始、1987年に、米ぬかに約1.8%含まれる水可溶成分の米糠多糖類を抽出した。そして、その主体となる4種類のオリザブランA、B、C、Dを分離し、構造を決定して、生理活性を調べている。その結果、これらの多糖類は血糖降下作用(糖尿改善)、尿素を上回る皮膚への保水作用、荒れ肌改善作用、創傷治癒作用があることが判明した。

土曜日, 4月 19, 2008

CMO

〇CMO

 CMOはctyl myristokete(セチルミリストレイン酸エステル)の略。不飽和脂肪酸のミリストレイン酸のエステル化合物で、関節炎に対してグルコサミンコンドロイチン硫酸を凌ぐ効果があると米国で注目された物質である。ミリストレイン酸はn-5系の脂肪酸だが、従来のn-3、n-6、n-9系を主要に扱ってきた栄養学ではまだ代謝の機構について十分に研究されてない。

 CMOが哺乳類の生体に存在することは、1971年に米国立衛生研究所(NIH)の研究員だったH・ディールによってスイスアルビノマウスの体内から発見されたが、その後、牛や鯨のほか、他のげっ歯類の動物でも確認されている。ヒトは進化の系統樹からみるとげっ歯類からは遠くないため、ヒトの体でも重要な役割をしている可能性があるという。ディールは当時、各種動物に作用する消炎剤の研究をしていたが、その研究の一環として人工的に関節炎を起こさせるためのフロイントアジュバント(熱処理したバクテリア)を動物に注射していった。その際、スイスアルビノマウスだけが炎症を起こさなかったことに気付き、炎症から体を保護している物質としてCMOを特定した。次にこれを別種のネズミに注射してその反応を見たところ、予想通り炎症の保護をしていると推測できる結果が得られたのである。この消炎作用についてディールは、哺乳類全体に適応できる手法として米国特許を取得している。

金曜日, 4月 18, 2008

麦飯石

〇麦飯石

 水道水を入れるとミネラルウォーターに変わるという石。麦飯石の名はその外観からきている。黄褐色または淡灰色の鉱物中に白色の長石という灰色をした石英がちりばめられており、その外観が麦ごはんに似ているところから名付けられた。

 ミネラルウォーターは地中のミネラルがちょうどほどよく水に溶けた状態になっている。麦飯石の組成をみると、鉄、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、マンガンなどのミネラル類が豊富に含まれており、これらが水中に溶出する。これは微量だが、細菌などの繁殖を防ぐ働きがあるとされる。麦飯石にはまた非常に多くの孔がある。それは325メッシュ(0.043mm径)という微細なもので、ミネラルがイオン化して水に溶けやすくなり、吸着作用やイオン交換作用がいつまでも強く残り、長期の使用にも耐えるという。

水曜日, 4月 16, 2008

カンカ(砂漠人参)

〇カンカ(砂漠人参)

 カンカ(カンカクニクジュニウ)はハマボウフウ科ニクジュヨウ属植物。砂漠人参とも使用され、砂漠でも育つ強靭な生命力を有する。神農本草経には「肉蓯蓉」として記録され、補腎薬や滋養強壮を目的に多くの漢方薬に配合されている。主にタクラマカン砂漠など砂漠地帯でタマリクス(紅柳)の根部に寄生する多年草の植物で、中国ではウイグル族の民間薬として使われ、漢方生薬として重要な構成生薬であるばかりでなく、カンカ自体が認知症の改善薬として認可されている。

 成分はウイルス感染を防いで免疫力を高める効果があるといわれるエキナコシド(echinacoside)や、ポリフェノールの一種で抗腫瘍作用や肝臓保護作用、ストレス負荷による性行動や学習行動の低下を回復させるといわれるアクテオシド(acteoside)をはじめ、アルカノイド、フラボン類、アミノ酸、フェニルエチルアルコール配糖体、イリドイド類、D-マンニトール、β-シトステロール、多糖類等や無機微量元素を含んでいる。このほか血管拡張作用、抗疲労作用、抗酸化作用、抗老化作用、免疫増強作用、美白作用などが確認されている。

 中国ウイグル自治区のホータン(和田)地区では、産業振興と砂漠緑化の両面から、カンカの人工栽培とタマリクスの植林を進めている。一方、わが国では近畿大学がカンカの有用性に着目、中国中薬民族薬研究所などと共同で「新規機能性食品素材開発共同プロジェクト」を推進するとともに、2006年8月にホータン地区の農民(ニヤ)県政府と提携し、カンカに関する学術研究と砂漠緑化を進めてきた。2007年3月には国際カンカ研究会が発足し、第1回国際カンカ・シンポジムが近畿大学で開催された。2006年には近畿大学薬学部の村岡修と京都薬科大学の吉川雅之との共同研究において、強い抗酸化作用を有する高濃度のポリフェノールが含まれていることや血管拡張作用を示すカンカノシドのA~G、カンカノース、カンカノールなど新規成分が発見されている。

火曜日, 4月 15, 2008

フィチン酸

〇フィチン酸

 化学物質名はイノシトール六リン酸。inositol(イノシトール)とphosphate(リン酸塩)からIP6と略記されることも多い。フィチン酸は米糠や胚芽、穀類、種子などに多く存在し、米ぬかには約8%含まれている。キレート作用があることから、食用油の酸化防止などに利用されている。

 最近の研究では、フィチン酸にガン細胞の発生と増殖をコントロールする働きのあることがわかり、世界の研究者が注目している。特に米国メリーランド大学医学部のA・シャムスディンはIP6の研究の第一人者として世界的に知られており、日本でもその著作「天然抗ガン物質IP6の驚異」(坂本孝作訳、講談社、2000年)が邦訳され、多くの関心を集めた。1998年に京都で開催された「米糠国際シンポジウム」では、シャムスディンをはじめ多くのアメリカの研究者が参加し、その発表の大半はIP6がテーマとして取り上げられ、免疫活性のほか、少量アスピリンのように血液凝固を防ぐことで心筋梗塞や脳血栓を予防すること、高脂血症の予防、尿結石抑制への有効性などが報告された。

月曜日, 4月 14, 2008

キクカ(菊花)

〇キクカ(菊花)

 キクカ(菊花)はキク科の植物で、釣藤散、菊花散などに配合されるなど、生薬として用いられている。日本薬局方外生薬規格集が規定する基原は「Chrysanthemum indicum又はそれらの種間雑種の頭花」とされている。中国の中華人民共和国薬典ではこの2つを区別し、キクおよびその品種の頭状花を乾燥したものを「菊花」、シマカンギクまたはその近縁種の頭状花を乾燥したものを「野菊花」としている。

 菊花は味が甘く料理や喫茶用にも用いるが、野菊花は味が苦く食用には用いられない。中国では神農本草経の上薬に収載されるほか、唐代の「新修本草」、明代の「本草綱目」にも記載されている。日本では「本草和名」「医心方」にも記載されており、古くから薬物と考えられてきた。薬能としては「菊花は能く頭目風熱解し、肝を平らにし、目を明らかにする効がある」と言われ、風邪をひいて熱のある者、頭痛でフラフラする者、目が充血して痛む者、あるいは目がかすむ者に用いるとされる。特に野菊花については清熱、解毒の効に優れており、悪性のおでき、目の充血や腫れ、あるいは頭が痛くてフラフラするときによいとされる。含有成分は精油、セスキテルペン、フラボノイドおよびその配糖体が知られている。

 近年の研究では、菊花には抗原抗体作用および毛細血管抵抗力増強作用が、また野菊花には降圧作用および抗菌・ウイルス作用が報告されている。京都薬科大学生薬学教室では、野菊花に糖尿病合併症予防が期待できるアルドース還元酵素阻害活性と、血管内皮機能を調節するNOの産生抑制活性を見出している。また抗アレルギー作用のある新規成分型として、3種のオイデスマン型セスキテペンと5種のゲルマクラン型セスキテルペン、2種のフラバノン配糖体、1種のフェニルブタノイド配糖体を単離し化学構造を決定するとともに、野菊花の抗アレルギー作用成分を見出し、フラボノイド類における構造と活性、アレルギー反応を有意に抑制する作用機序を明らかにしたことを報告している。

日曜日, 4月 13, 2008

乳酸菌酵母分泌物

〇乳酸菌酵母分泌物

 乳酸菌生産物質が乳酸菌を培養・発酵させて作るのに対して、乳酸菌酵母分泌物は原料のベースに乳酸菌なと酵母菌の2つの菌を使い、両者を「共棲培養」という技術で発酵させる。乳酸菌と酵母菌はともに腸内細菌の善玉菌で、お互いの分泌物(生産物質)をエサとして繁殖するという特徴がある。すなわち、2つの菌を一緒に培養すると、乳酸菌だけの時より発酵が飛躍的に促進されるわけである。

 この乳酸菌酵母分泌物を生み出す母体となったのは、農学博士・小牧久時(現・国際地球環境大学名誉総長)が開発し、1988年に「腸内細菌叢を改善する健康食品製造法」として特許をとった「小牧原液」である。小牧は乳酸菌がなかなか腸まで到達できないという問題を解決するにあたり、腸内では乳酸菌は酵母菌の分泌物の助けを借りて繁殖し、酵母菌もまた乳酸菌の分泌物の助けを借りて繁殖している、という事実から推論を組み立てた。「乳酸菌と酵母菌、双方の微生物は分泌物を挟んで共栄共存の関係にある。そうであるなら、より大切なのは乳酸菌、酵母菌の生きた菌体ではなく双方の菌体成分である。分泌物ならば、胃液に分解されることなく腸に到達できる。腸内を善玉菌優勢にするには、双方の分泌物を届けてやればよい」と考えたわけである。

 小牧はこの考えをもとに、菌同士の相性等を精査した結果、多くの乳酸菌、酵母菌の中から16種の乳酸菌と24種の酵母菌を選び出した。これら40種の善玉菌に、栄養が非常に高いことで知られるニンニクの無臭成分「サチヴァミン複合体」を与えて共棲培養し、そこへ、腸内到達率・増殖率が極めて高く組成に優れたタイプの乳酸菌=有胞子乳酸菌を加えて作られたのが、「腸内細菌叢改善食品」であり、この製品は1989年の世界発明博覧会・生物分子部門でグランプリを受賞している。製品の完成までは31もの工程をけ経る上、40種の異なる培養条件を満たすには1000リットル以上の大きなタンク培養器が必要となる。また、添加物・抗生物質を一切使わないという条件下で細菌の侵入を防ぐためには、完璧なクリーンルームが必要条件とされるなど、高度や設備と管理技術が要求される製品でもある。

金曜日, 4月 11, 2008

乳酸菌生産物質

〇乳酸菌生産物質

 乳酸菌生産物質とは、乳酸菌そのものではなく、乳酸菌が生産した物質=分泌物を指す。いわば乳酸菌のエキスとも呼ぶべきものであり、乳酸菌とは似て非なるものである。乳や大豆、黒糖などの天然素材の培地に乳酸菌を加え、発酵させて作る。

 この乳酸菌生産物質の歴史自体は非常に古く、仏教の経典「大般若経」に「醍醐」の名前で登場する。日本には20世紀はじめ、西域に仏跡調査に赴いた大谷探検隊が持ち帰ったとされる。現地(中央アジア)では牧畜が盛んな土地柄から、乳を培地として発酵させるのが主流だが、豆腐、味噌醤油など大豆の加工技術が発達していた日本では大豆培地を使って成功し、これが現在の乳酸菌生産物質の原型となっている。のちに黒糖培地等を使った製造技術も開発された。

 乳酸菌生産物質が注目されているのは、乳酸菌そのものと比べて、腸に到達する力が格段に強いである。一般の乳酸菌は胃酸や胆汁に弱く、ヒトが摂取しても腸に届く前にそのほとんどが死滅してしまうと見られる。もちろん、死滅しても菌自体は残るので、効果はゼロということにはならないが、できれば胃酸や胆汁に負けることなく腸まで届いて、乳酸菌本来の機能を発揮することが望ましい。

 腸内に達した後も、乳酸菌単体よりスピーディーで強力な力を発揮する。乳酸菌の場合、腸内に入ると、まず自身が増殖して十分に働ける態勢を整えてから、身体に有用な物質(乳酸菌生産物質)を生成する一方、有害菌や有害物質の除去に働くが、乳酸菌生産物質では自身が増殖する過程を省いて、腸にダイレクトに働きかけることが可能となる。

 この乳酸菌生産物質の主成分は乳酸、乳酸カルシウム、ペプチン、酵素類、それがさまざまな生理活性物質(サイトカインなど)で、これらは胃酸の分泌軽減、カルシウムの吸収促進、肝機能の増強などに関与する。また、体の細胞の生産・増殖を支配する核酸が非常に多く含まれている点も大きな特徴で、この核酸が新しい細胞の形成を助け、老化をコントロールしてアンチエイジング(抗加齢)に働くと目されている。

 現在、健康食品市場では「乳酸菌生産物質」をベースとする多くの商品が流通しており、もととなる乳酸菌の種類や発酵に使う培地、発酵の方法などのほか、プラスαとして加えられるほかの成分などもメーカーにより異なっている。それらが各社のノウハウともなっている一面もある。また、ネーミングの点では「乳酸菌生産物質」のほか「乳酸菌発酵エキス」も使われている。なお、菌の種類や数はともかく、乳酸菌と酵母菌の両方を発酵に関与させているという点で、次に記述する乳酸菌酵母分泌物に相当すると思われる製品が「乳酸菌生産物質」のネーミングで販売されているケースもあり、名称の統一・整備等は今のところ必ずしもできていない。

木曜日, 4月 10, 2008

ルイボスティー(改訂)

〇ルイボスティー

 ルイボスティーは、南アフリカ共和国のごく一部の山野にのみ自生するマメ科植物ルイボスの針葉樹様の細かな葉を採取して発酵後、乾燥させた健康茶である。ルイボスは現地語で赤い灌木の意味だが、原住民は古くから不老長寿、万病への妙功を信じて愛飲してきたという。

 1900年代初頭にロシア系紅茶商人がヨーロッパへ紹介し、ついで1930年頃、現地の開業医で市長も務めたイギリス系のP・ノーティエが品種改良の末、人工栽培による農作物化に成功した。味・香り・色ともに優れ、現在では同国の重要な輸出産品として生産・加工・品質管理が政府の肝いりで行われている。

 我が国の健康茶の中では新顔に属するルイボスティーだが、飲み始めて比較的早くわかる効用として便秘の改善、ペンの性状の変化(難便は固く、固い便は柔らかくなる)、腹部膨満感や痛みなどの改善などが挙げられる。アトピー性皮膚炎や口内炎、ニキビ、イボ、肌荒れなどの改善、高血圧、高血糖などの快方、精神的に安定するという報告例も多いが、このような顕著な諸作用に対して、前田浩(熊本大学医学部)、中野昌俊(愛知医科大学加齢医科学研究所)らが多くの研究成果を発表している。

 長崎大学医学部ではマウスの胎児から得た培養細胞による実験で、ルイボスティーの発ガン抑制作用を見出している(小松賢志ほか)。また、横越英彦(静岡県立大学食品栄養科学部)らはラットを用いた実験で、ルイボスティーの抽出液と茶葉粉末を投与することで血液中の中性脂肪を下げ、HDLコレステロールを上昇させることを確認した。これは心臓疾患などへのルイボスティーの寄与を示唆するものである。

 そのほかにも加齢による認知症の防止作用、肝機能亢進作用、抗菌・殺菌作用、便臭の改善作用、さらに新しいところでは愛知医科大学と山梨医科大学との共同研究で、エイズウイルスの増殖を抑制する働きなども報告された。こうした各種作用の根底には、ルイボスティーが活性酸素消去作用を持つことが指摘されており、その作用はほかの野菜類などの数倍ないし数十倍にも達することがわかってきている。

水曜日, 4月 09, 2008

チア・シード

〇チア・シード

 チアシードはメキシコ原産のシソ科の植物「チア」の種子で、大きさは1mmほど。黒褐色をした種である。中南米にあってはアステカ族、マヤ族などがとうもろこし、豆類に次ぐ主要植物として位置づけ摂取していたが、スペインの征服により、この食文化はいったん途絶えた。近年になってこの食品が注目を浴びることになった原因は、オメガ3系の脂肪酸であるα-リノレン酸科の含有量の多さと優れた栄養成分が高いエネルギーと持久力の源になることと、ダイエット効果とデトックス効果を有ていることだ。FDA(米国食品医薬品局)は、このチアシードを同局が確立した「健康に良い食材」としての栄養成分規制をクリアする「食餌療法サプリメント」として認可している。

 栄養成分の面で特筆されるのは脂質(含有量33%)、たんぱく質(同20%)、およびビタミンB群の多さで、なかでもビタミンB群のナイアシン含有量はコーン、大豆を上回る。またミネラルについても、カルシウムが小麦、オートミル、コーンに比べて70~100倍、カリウムは7~16倍含まれている。

 オメガ3系の脂肪酸は人体では作ることのできない脂肪酸=必須脂肪酸の一つで、生命の維持や健康増進によ重要な役割を果たすものであるが、チアシードには30%もの油分が含まれているうえ、その60%以上がα-リノレン酸である。

 チアシードのもう一つの特徴であるデトックスしながらダイエット効果が期待できるのは、シードの40%を占める食物繊維の9割が不溶性のため、腸の蠕動運動を正常に保つうえ、皮膚を覆う繊維に高い吸水性があり、水を含むと約10倍に膨張し、摂取すると満腹感をもたらすからである。さらにα-リノレン酸と食物繊維の相乗効果として、食後の血糖値上昇抑制作用も臨床試験で確認されている。

土曜日, 4月 05, 2008

ぶどう葉(葡萄葉)

〇ぶどう葉(葡萄葉)

 フレンチパラドックスという言葉で、赤ワインに含まるポリフェノール類の健康効果(動脈硬化や心臓病のリスクを減らす)が注目され、わが国でも赤ワインブームが起きたが、その原料となる黒ブドウの葉には赤ワイン以上(100~300倍)のポリフェノール類が含まれている。ヨーロッパのワイン農家では古くから黒ブドウの葉を煎じて健康茶として飲んだり、葉そのものを料理に混ぜて食用にしてきた。黒ブドウ葉の抽出物には血管保護作用のあることが認められており、フランスやドイツでは医薬品として扱われ、静脈疾患の治療などに使われている。

 ポリフェノール類は体内で抗酸化物質として働き、老化防止や生活習慣病の改善に効果のあることは広く知られているが、黒ブドウ葉に含まれるポリフェノール類としては、特にアントシアニンとリスベラトールが注目されている。アントシアニンは強い抗酸化作用を持ち、血管の保護、血液循環の改善、動脈硬化の予防に効果がある。

 リスベラトールはブドウ樹が真菌や紫外線から身を守るために産生するファイトケミカル(植物微量成分)の一種で、葉に最も多く含まれ、果肉中にはほとんど存在しない。人の体内でLDL(悪玉コレステロール)を減らし、血管の炎症や血栓の形成を抑える働きがあるとされている。海外では抗ガン効果についての報告もある。健康食品としての黒ブドウ葉は主に乾燥葉が売られているが、エキスを加工したものも製品化されている。

金曜日, 4月 04, 2008

大麦若葉

大麦若葉

 イネ科大麦の葉で、幼穂を形成し始める草丈20~30cmの頃の若葉をいう。ビタミンやミネラル、タンパク質、酵素、食物繊維の含有量が多く、ホウレン草と比較してカリウムが18倍、マグネシウム3.8倍、鉄4.8倍、カロチン6.5倍、ビタミンC3倍、タンパク質が15倍含まれる。そのため、最近では青汁の原料として利用れることが多い。また、キスを乾燥させ粉末化した健康食品もある。大麦の葉は成長するに従って栄養素の含有量が減少するため、若葉だけが使われている。(財)日本健康栄養食品協会による「麦類若葉加工食品規格基準」(1987年8月工事、93年7月一部改正)では、麦類若葉加工食品を「イネ科の大麦、小麦、ライ麦の幼穂形成開始期の草丈20~30cmのものを採取し、その葉、葉柄、茎の全部、または一部を搾汁した液を噴霧乾燥等の方式で乾燥したもの、あるいは搾汁液に適当な賦形剤を加えて噴霧乾燥等の方法で乾燥したもの」と定義されている。

◆麦緑素

 大麦若葉から搾汁した液を低温で噴霧乾燥させて粉末化した健康食品。長く漢方薬の研究に携わってきた医学博士の萩原義秀によって開発、命名された。ビタミン、ミネラル、タンパク質、酵素を豊富に含んでいる。

木曜日, 4月 03, 2008

でんぷん(澱粉)

〇でんぷん(澱粉)

 デンプンは、穀類やイモ類などに多く含まれる植物の貯蔵多糖類で、ヒトのエネルギー源として最も重要な物質である。植物は葉緑体と呼ばれる細胞小器官で大気中の二酸化炭素と水を原料とし、太陽エネルギーを利用(光合成)してデンプンを作り出し、種子や球根、塊根などに蓄えている。動物はこれを摂取してエネルギー源としている。デンプンを作れるのは植物と藻類だけである。

 デンプンはグルコース(ブドウ糖)のみで構成される単一多糖で、アミロース(約1000個のグルコースが直鎖状にα-1.4結合したもの)と、アミロペクチン(アミロースのところどころがα-1.6結合で枝分かれし、別のアミロース単位を含んだもの)からなっている。アミロースとアミロペクチンの含有比率はデンプンの種類によって異なるが、平均するとアミロースが20%、アミロペクチンが80%である。米の粘りはアミロペクチンによるもので、もち米に粘りがあるのは、ほとんど100%のアミロペクチンでできているためである(うるち米は83%)。

 デンプンを水と混合して加熱すると糊状となり最後には糊化するが、これをα-化デンプンという。これに対し、生のデンプンをβ-デンプンと呼ぶ。α-化デンプンをそのまま放置して冷えるとβ-デンプンに戻るが、これをデンプンの老化という。

 食事で摂取したデンプンは消化酵素のアミラーゼによってマルトース(麦芽糖)に分解され、さらにマルターゼという酵素でグルコースに分解されて小腸から吸収され、エネルギー源として利用される。

水曜日, 4月 02, 2008

少糖類

〇少糖類

 少糖類は、単糖が2~10個程度グリコシド結合(縮合)してできた糖で、オリゴ糖とも呼ばれる(オリゴは少ないという意味)。結合する単糖の数によって二糖類、三糖類、四糖類などに分けられるが、ヒトでは二糖類(スクロース、マルトース、ラクトースなど)が重要である。また、これらの糖を材料に酵素の働きなどを利用して工業的に作られる各種オリゴ糖があり、健康機能性の面から関心を集めてる。

※ラクトース

 乳糖ともいう。ガラクトースとグルコースがβ-1.4結合した二糖類で、動物の乳汁中にのみ存在する。人乳に約7%、牛乳に約4%含まれている。甘さはショ糖の1/5程度だが、消化・吸収に優れているため、乳児の栄養源として欠かせない糖である。また、カルシウムやマグネシウムの吸収を高める働きもある。

 ラクトースは、小腸でガラクターゼという酵素によってガラクトースとグルコースに分解され吸収される。ラクターゼが欠損する人では、ラクトースの分解が阻害され吸収不全となり下痢などの胃腸障害を起こす。これを乳糖不耐症。

※トレハロース

 2個のグルコースがα-1.1結合した二糖類で、砂漠や寒冷地など極限的な環境に生息する生物に多く見出されている。これは、生物に不可欠な水分を保持する役割をトレハロースが担っているためと考えられている。食品ではキノコや酵母に多く存在し、乾燥シイタケには約20%含まれている。甘味度はショ糖の6割程度。

 トレハロースは耐熱、耐酸性に優れているため、タンパク質の変性防止、味質の保持などを目的に幅広く食品に用いられている。従来は酵母らの抽出物が専ら利用されて生きたが、近年、メーカーの林原がデンプンに酵素を反応させて安価に大量生産する技術を開発、市場が一気に広がった。トレハロースの生理機能としては、腸内善玉菌の増加作用、低カロリー。非うし蝕性、抗酸化作用などがあるが認められているほか、点眼によるドライアイの軽減、経口摂取による骨強化作用などがある。

火曜日, 4月 01, 2008

フルクトース

〇フルクトース

 果糖ともいう。グルコースとともに自然界に広く存在する単糖(六炭糖)で、遊離の形で果物やハチミツに多く含まれている。グルコースと結合してスクロース(ショ糖)となる。糖類の中ではもっとも甘く、グルコースの約2.5倍の甘味がある。

 フルクトースは血糖指数(グルコースを100とした時の血糖上昇度)が20%と非常に低いため、血糖値を急速に上昇させず、インスリン分泌を刺激しないのが特徴である。そのため糖尿病患者の病人食に使用されている。またグルコースに比べて、肝臓や筋肉中でグリコーゲンへ変化する率が高いため、運動前に摂取するとスタミナが長続きする。このほか、血中アルコールの分解を促進する働きがあり、二日酔いにハチミツがよいとされる理由の一つになっている。

 フルクトースは小腸で吸収され、肝臓で酵素の作用によりグルコースに変わるが、その過程で生成するグリセロアルデヒドという物質は中性脂肪の合成にも利用される。このためフルクトースは、グルコースに比べて体内で脂肪に変わりやすいという性質がある。

 フルクトースは果物や砂糖などから摂取されるが、加工食品ではベビーフードや栄養補助食品、ドリンク剤、ダイエット食品、スポーツドリンク、和・洋菓子(ゼリー・ケーキ類、餡)などにも使われている。