〇乳酸菌生産物質
乳酸菌生産物質とは、乳酸菌そのものではなく、乳酸菌が生産した物質=分泌物を指す。いわば乳酸菌のエキスとも呼ぶべきものであり、乳酸菌とは似て非なるものである。乳や大豆、黒糖などの天然素材の培地に乳酸菌を加え、発酵させて作る。
この乳酸菌生産物質の歴史自体は非常に古く、仏教の経典「大般若経」に「醍醐」の名前で登場する。日本には20世紀はじめ、西域に仏跡調査に赴いた大谷探検隊が持ち帰ったとされる。現地(中央アジア)では牧畜が盛んな土地柄から、乳を培地として発酵させるのが主流だが、豆腐、味噌醤油など大豆の加工技術が発達していた日本では大豆培地を使って成功し、これが現在の乳酸菌生産物質の原型となっている。のちに黒糖培地等を使った製造技術も開発された。
乳酸菌生産物質が注目されているのは、乳酸菌そのものと比べて、腸に到達する力が格段に強いである。一般の乳酸菌は胃酸や胆汁に弱く、ヒトが摂取しても腸に届く前にそのほとんどが死滅してしまうと見られる。もちろん、死滅しても菌自体は残るので、効果はゼロということにはならないが、できれば胃酸や胆汁に負けることなく腸まで届いて、乳酸菌本来の機能を発揮することが望ましい。
腸内に達した後も、乳酸菌単体よりスピーディーで強力な力を発揮する。乳酸菌の場合、腸内に入ると、まず自身が増殖して十分に働ける態勢を整えてから、身体に有用な物質(乳酸菌生産物質)を生成する一方、有害菌や有害物質の除去に働くが、乳酸菌生産物質では自身が増殖する過程を省いて、腸にダイレクトに働きかけることが可能となる。
この乳酸菌生産物質の主成分は乳酸、乳酸カルシウム、ペプチン、酵素類、それがさまざまな生理活性物質(サイトカインなど)で、これらは胃酸の分泌軽減、カルシウムの吸収促進、肝機能の増強などに関与する。また、体の細胞の生産・増殖を支配する核酸が非常に多く含まれている点も大きな特徴で、この核酸が新しい細胞の形成を助け、老化をコントロールしてアンチエイジング(抗加齢)に働くと目されている。
現在、健康食品市場では「乳酸菌生産物質」をベースとする多くの商品が流通しており、もととなる乳酸菌の種類や発酵に使う培地、発酵の方法などのほか、プラスαとして加えられるほかの成分などもメーカーにより異なっている。それらが各社のノウハウともなっている一面もある。また、ネーミングの点では「乳酸菌生産物質」のほか「乳酸菌発酵エキス」も使われている。なお、菌の種類や数はともかく、乳酸菌と酵母菌の両方を発酵に関与させているという点で、次に記述する乳酸菌酵母分泌物に相当すると思われる製品が「乳酸菌生産物質」のネーミングで販売されているケースもあり、名称の統一・整備等は今のところ必ずしもできていない。
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