○山椒
ミカン科の落葉低木で春に黄緑色の花をつけ、秋に結実する。古名をハジカミ(椒)といい、芽や実が食用・薬用・香辛料などとして古くから用いられてきた。中国でも医薬の古典神農本草経に蜀椒の名で収載されている。
山椒は春の味覚の一つで、若芽を用いた木の芽和え、木の芽田楽などが日本人には親しまれているが、実のほうも七味唐辛子や粉山椒などの香辛料、あるいは漬物や佃煮などでも馴染みの多い食材である。山椒は小粒でもぴりりと辛いの例えの如く、特有の香りとともにピリッとした辛味が食欲増進につながる。
成分的にはさしたる栄養素はないが、辛味成分のサンショールを含み、香りはゲラニオール、シトロネラールなどの精油が主体である。葉・果皮に含まれるこれらには健胃・駆風・駆虫・保温効果があり、食中毒の予防、生臭みや魚毒を消す効果もある。ウナギの蒲焼きには粉山椒が付きものだが、味覚的な意味だけではないことがうなづけよう。また、お汁粉のあとの箸休めとして実の味噌汁や塩漬けを出すのも、胃への負担を和らげる健胃効果をねらった先人の知恵であろう。
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