○コーヒー
コーヒーはエチオピアが原産といわれ、10~11世紀初頭にアラビアに伝わり、その後ヨーロッパに知られるようになった。日本には1609年に平戸和蘭商館が開設され伝えられたといわれている。コーヒーの木は大きくアラビア種、カネホラ種、リベリカ種に分けられるが、栽培されているほとんどかアラビア種とカネホラ種である。
コーヒーの生産地はコーヒーベルトと呼ばれる南北回帰線に挟まれた熱帯地方の高地で、特にブラジルやコロンビアなどの南米地域が盛んで、世界生産量の約半分を占めている。コーヒーの木になる実の種子部分を焙煎したものがコーヒー豆で、その抽出エキスを一般にコーヒーと呼んでいる。
コーヒーにはカフェイン、クロロゲン酸、タンパク質、炭水化物、ナイアシンなどが含まれている。コーヒーは眠気覚ましの飲料というイメージが強いが、最近では、①脂肪を燃焼させる、②糖尿病を予防する、③肝臓ガンの発症リスクを低下させる、などの作用があることが明らかになってきた。
コーヒーを飲むと頭がスッキリするのは、苦味成分のカフェインが脳を刺激して興奮状態にさせるためである。また、脂肪を分解する酵素リパーゼを活性化する作用があり、脂肪をより燃焼させやすくする。運動の20~30分前にコーヒーを飲むと、カフェインの脂肪燃焼作用が効果的に働くといわれている。そのほか利尿作用、気管支や冠状血管を拡張させる作用がある。
コーヒーを飲む量が多いほど、糖尿病に罹りにくいという研究結果が相次いで報告されている。男性約4万人、女性約8万人を最長18年間追跡した米国のコホート研究によると、コーヒーを1日6杯以上飲む人はコーヒーを飲まない人よりも糖尿病の発症率が大幅に低下することが分かった(2004年)。また、フィンランド国立公衆衛生研究所などで行われた男女約1万4600人を対象にした調査では、コーヒーを1日10杯以上飲む人の糖尿病の発症率は女性で79%、男性では55%減少した(2004年)。国内の研究では、九州大学の研究グループがコーヒーの摂取が食後の血糖値の上昇を抑えるという研究結果を発表している。コーヒーが糖尿病の発症を抑える機序は明らかではないが、コーヒーの香り成分であるクロロゲン酸が血糖値の調整に働いている可能性があるという。また、カフェインがインスリンの分泌を促しているとも考えられている。
辻一郎(東北大学)らのグループは、コーヒーが肝臓ガンのリスクを低減するという調査結果を発表している(2005年、日本疫学会)。男女約6万1千人に対して7~9年間の追跡調査をした結果、コーヒーを1日1杯以上飲む人の肝臓ガンになる危険性は全く飲まない人の6割程度だった。また、厚生労働省の研究班(主任研究者・津金昌一国立がんセンター予防研究部長)はコーヒー摂取と肝臓ガンの発症率の関係をまとめた研究結果を発表している(2005年)。男女約9万人を対象に1990年から約10年間追跡調査をした結果、1日5杯以上飲む人はほとんど飲まない人に比べ発症率が1/4であった。コーヒーの中の何の成分が肝臓ガンの発症を抑制するのかまだはっきりしていないが、抗酸化作用のあるクロロゲン酸が抗ガン物質として注目されている。
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