○全蝎(ぜんかつ)
クモ類のキョクトウサソリ科のキョクトウサソリ(Buthusmartensii)の全体を用いる。捕獲した後、水に漬けて泥を吐かせ、沸騰した湯の中で食塩とともに煮沸する。とくに後腹部だけを蠍尾または蠍梢という。
サソリの多くは熱帯ないし亜熱帯に分布するが、キョクトウサソリは中国の北部・中部、朝鮮半島の一部に分布する。中国では飼育されており、おもに河南。山東・湖北・安徽省に産する。体調は約6cm、体色は黄緑色で、後腹部の末端節に毒袋があり、先端は鋭い毒針が上屈している。
人命にかかわるサソリの猛毒種はアフリカやメキシコにしかおらず、キョクトウサソリの毒は比較的軽い。サソリの毒はカツトキシン(ブトトキシン)といわれ、ヘビ毒によく似た神経毒のあるタンパク質であり、筋肉の痙攣や流涎、呼吸麻痺などが生じる。
全蝎にはそのほか、レシチン、コレステロール、ベタイン、タウリン、脂肪酸などが含まれる。薬理学的には抗痙攣作用、降圧作用などが報告されている。市場品には塩漬けにしたものが多く、止痙・熄風・止痛・通経絡の効能があり、癲癇や痙攣、小児のひきつけ、脳卒中、半身不随、顔面麻痺、関節痛などに用いる。
癲癇や中風、破傷風などによる痙攣には蜈蚣・白僵蚕などと配合する(止痙散)半身不随や顔面麻痺には白僵蚕・白附子などと配合する(牽正散)。
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