○蓽澄茄(ひっちょうか)
ジャワ原産で東南アジア、インドなどに分布するコショウ科のつる性常緑木本植物ヒッチョウカ(Piper cubeba)の果実を用いる。これをクベバ実ともいう。そのほか中国南部、台湾、インドネシアなどの東南アジアに分布するクスノキ科の落葉低木リツェアクベバ(Litsea cebeba)の果実を用いることもある。
このリツェアクベバは、タイワンヤマクロモジ(別名リトセア:L.citrate)やアオモジ(L.citriodora)としばしば混同されている。いずれも果実からシトラールを含む精油が得られる。本来、ヒッチョウカの果実が中国に伝わり、中国に産するリツェアクベバの果実と色や形状、気味などが類似しているためヒッチョウカの代用にされたと考えられている。しかし、成分に関しては全く異なっている。
ヒッチヨウカの果実には精油の成分としてサビネン、カレン、シネオールなどのほか、リグナンのクベビン、クベビノライドなどが含まれ、日本住血吸虫の早期治療やアメーバ赤痢に効果がある。かつてヨーロッパなどでは健胃・利尿作用があるとされ、専ら淋病の治療薬として用いられた。リツェアクベバの果実には精油成分としてシトラール、メチルヘプテノン、リモネンなどが含まれ、喘息およびアレルギー性ショックに対して効果がある。
漢方では温裏・止痛・理気の効能があり、冷えによる嘔吐、吃逆、ゲップ、腹部膨満感、腹痛や小便不利に用いる。インドネシアでは下痢や感冒、喘息などに用いている。アロマセラピーでは、リツェアクベバの果実はメイチャン(May Chang)とも呼ばれ、エッセンシャルオイルとして知られている。
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