○榧子(ひし)
中国の揚子江以南に分布する常緑高木シナガヤ(Torreya grandis)の種子を用いる。日本では同属植物のカヤ(T.nucifera)を榧と書いているが、本当の榧は日本には自生していない。ただし日本や韓国ではカヤの種子を榧子の代用にしていたこともある。
カヤは東北地方から屋久島、済州島に分布し、その柾木材は碁盤、将棋盤の最高級品として知られる。カヤの実の油は食用や頭髪油、灯火油としてり利用されていた。シナガヤの種子は脂肪酸を多く含有し、パルミチン酸をはじめステアリン酸、リノール酸、オレイン酸などのグリセリド、ステロールが含まれる。抽出エキスには猫の条虫の駆除作用が知られている。日本産のカヤの種子にはアルカロイドが含まれ、子宮収縮作用が報告されている。
漢方では殺虫・潤肺の効能があり、穏やかではあるが広範囲の駆虫薬として用いる。鉤虫や蟯虫、条虫、フィラリアなどへの効果が報じられている。煎剤や丸剤としても用いるが、単独で炒ったものをよく噛んで食べる方法もある。日本ではカヤの実を炒って粉末にしたものを寄生虫や小児の夜尿症の治療に用いる。また民間では堕胎薬としても用いられた。
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