○葶藶子(ていれきし)
日本では各地に広く分布しているアブラナ科の越年草イヌナズナ(Draba nemorosa)の種子を葶藶子という。中国産は日本にも帰化植物として普通にみられるアブラナ科のマメグンバイナズナ(Lepidium virginicum)やヒメグンバイナズナ(L.apetalum)、クジラグサ(Descurainia sophia)の種子である。
マメグンバイナズナやヒメグンバイナズナの種子は北葶藶子(苦葶藶子)、クジラグサの種子は南葶藶子(甜葶藶子)ともいわれる。現在、日本で流通しているものは、おねもに甜葶藶子である。葶藶子の成分として強心配糖体のヘルベチコシドなどが知られている。
漢方では逐水・止咳・消腫の効能があり、喘息や浮腫などに用いる。とくに葶藶子は「気を下し、水を行らす」作用があるといわれ、肺に滞った水分を除き、胸水や肺水腫、多量の痰などの状態を改善する。また通便作用もあるが、他の逐水薬とは異なり、激しい下痢にはならない。ただし胃に対する刺激性があるため、一般に大棗の煎液で服用する。
心臓喘息や百日咳で咳や痰が多く、呼吸困難や浮腫のみられるときには大棗と配合する(葶藶大棗瀉肺湯)。胸水や腹水があり、呼吸困難、顔面や四肢の浮腫などのみられるときには防已・椒目・大黄と配合する(已椒藶黄丸)。
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