○石榴皮(せきりゅうひ)
小アジア地方を原産とするザクロ科の落葉高木ザクロ(Punica granatum)の果皮または根皮を用いる。ザクロは漢代に張塞が安石国から中国に種を持ち帰ったもので安石榴と呼ばれた。日本には平安時代以前に渡来している。
石榴には種子が多いため、古代ヨーロッパでは豊穣のシンボルとして、中国では子孫繁栄の象徴として考えられていた。平安朝のころザクロの種子や果汁は有機酸を多く含むため、銅鏡を磨くのに用いられた。日本で一般に石榴皮といえば根皮のことであるが、中国では果皮すわなち石榴果皮のことである。ただし、近年では日本の市場に石榴根皮はみられなくなった。
樹皮にはアルカロイドのペレチエリンやイソペレチエリン、タンニンが含まれ、イソペレチエリンには条虫を麻痺させる作用がある。イギリスやドイツでは条虫駆除に用いられていた。樹皮には毒性があり、普通量でもめまいや震えなど副作用がみられるため、最近は使用されない。果皮にはガラナチンなどのタンニンが多く含まれる。いずれも駆虫・止瀉の効能があり、とくに細菌性、アメーバ性腸炎の下痢や条虫などの寄生虫症に用いる。
駆虫作用は根のほうが強いが、下痢症状には専ら果皮が用いられる。虫下しには苦楝皮と配合する(石榴根湯)。また果皮には止血・止痒作用もあり、性器出血や帯下、脱肛にも用いる。民間療法では口内炎や扁桃炎、歯痛などに果皮の煎液でうがいをする。
近年、ザクロに女性ホルモン様作用があることで話題になった。事実、ザクロの種子にはヒトのエストロゲンと同じ構造を有するエストロンとエストラジオールが含まれていることが報告されている。しかし、2000年4月、ザクロ果汁に女性ホルモン物質は検出されなかったことが国民生活センターによって発表され、ザクロブームは下火になった。なお番石榴とはグァバのことである。
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