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水曜日, 6月 26, 2013

水銀

○水銀(すいぎん)

 常温で液体金属の水銀(Hg)を用いる。おもに天然の赤い辰砂鉱(HgS)を煉製するが、一部は天然水銀からとるものもある。古くから知られた金属のひとつであり、汞とは水銀のことを表す。水銀化合物の朱砂、霊砂、軽粉なども漢方では薬用にする。

 水銀には消毒、利尿、瀉下の作用があり、塩化第二水銀の昇汞は殺菌消毒薬として、有機水銀のマーキュロクロム(赤チン)は傷の消毒薬として知られている。かつて甘汞(塩化第一水銀)は緩下、利尿薬として、水銀注射は駆梅剤として、水銀軟膏は梅毒、毛虱、の塗布駆虫剤として、そのほか農薬としても使われていた。しかし、水銀の毒性により、今日ではほとんど姿を消している。

 一般に無機水銀はわずかして腸管から吸収されないが、有機水銀はほとんど吸収される。無機水銀を摂取すると腹痛や下痢、嘔吐、疲労感、腎障害などの急性中毒や水銀蒸気による気管支炎、肺炎などが現れる。また慢性の水銀中毒では口内炎、貧血や白血球減少、肝障害、腎障害、消化不良、さらには知覚喪失、精神異常などの神経症状を生じる。有機水銀中毒として水俣病がよく知られている。

 かつて中国の神仙家は朱色の辰砂から白く輝く水銀に、さらに白色の塩化水銀や黒色の酸化水銀に変化することに象徴的な意味を起き、不老不死の薬を求める錬丹術にしばしば水銀を用いた。このため錬丹術の流行した唐代には皇帝6人が丹を飲んで死んだといわれている。

 近年、内服薬に水銀を用いることはないが、かつて脚気衝心や脳卒中で危篤の時には黒錫と配合した黒錫丹や養生丹が用いられたり、浮腫や梅毒に水銀を配合したものを薫じて鼻から入れる方法もあった。また油脂とよく混ざるので外用薬として用いられ、疥癬や真菌症など皮膚疾患の治療に応用され、とくに梅毒による悪瘡にしばしば用いられた(神水膏)。

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