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水曜日, 6月 13, 2012

乾漆

○乾漆(かんしつ)

 ヒマラヤから中国にかけての温暖な地域に分布し、日本に奈良時代以前に渡来したウルシ科の落葉高木ウルシ(Rhus verniciflya)の樹脂を加工したものである。

 生の樹脂を生漆という。樹脂を乾燥すると表面は茶褐色でざらざらした塊状になるが、これが乾漆である。これはウルシ液の中のウルシオールがラッカーゼという酵素の作用で空気中で酸化され、高分子化してできたものである。このようにウルシ液が空気中で酸化され、黒変して硬くなり、耐久性がでることから食器や工芸品、ピアノなどの塗料や接着剤として利用される。

 漆塗りの技術も中国から伝えられたが、温度や湿度などが日本の風土に合ったために独自に発展してきた。ちなみに英語では漆器をジャパンといい、ウルシをジャパニーズ・ラッカーという。ただし日本では薬用の乾漆は生産されていない。ウルシはかぶれやすいことで知られているが、これはウルシオールの刺激によるものであり、この症状は個人差が強い。

 樹脂の成分にはウルシオール、ハイドロウルシオールのほか、マンニトールやゴム質が含まれる。漢方では活血化瘀・消癥・駆虫の効能があり、無月経、腹部腫瘤、寄生虫症などに用いる。貧血に伴う黄胖病には平胃散鍼砂などと配合する(鍼砂平胃丸)。婦人の腹部腫瘤や月経障害などには大黄・シャ虫などど配合する(大黄シャ虫丸)。ただしウルシが合わない人には用いない。ちなみにウルシかぶれには沢蟹が特効薬と伝えられている。

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