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水曜日, 4月 18, 2012

海人草

○海人草(かいにんそう)

 熱帯から亜熱帯海域の近海に広く分布する紅藻類のフジマツモ科マクリ(Digenea simplex)の全藻を用いる。日本では紀伊半島から九州にかけての暖海域、特に南西諸島に多く自生する。高さは10~25cmくらいで次々の分岐したヒモ状の藻体は暗紫赤色で毛状に被われ、軟骨のように硬い。おもに珊瑚の上に生える海人草はしばしば鷓鴣菜と混同されているが、鷓鴣菜はコノハノリ科のセイヨウアヤギヌ(Caloglossa leprieurii)という海藻である。

 海人草は日本では一般に「まくり」と呼ぶが、このマクリには胎毒の治療薬の意味もある。かつて日本では生後間もない乳児にマクリを吸わせて胎毒を下す習慣があった。これは海人草に大黄・甘草を加えて煎じたものが一般的だったが、その後、甘草・黄連・紅花・大黄からなる甘連湯などもマクリとして有名になった。これには疳の虫を下すとか湿疹体質を予防するといった意味や、新生児黄疸の予防効果があったと考えられる。

 海人草にはアミノ酸のカイニン酸及びαアロカイニン酸が含まれ、回虫の中枢神経を興奮させて痙攣死させる作用がある。海人草は日本で古くより駆虫薬として知られていた。漢方で駆虫薬として知られる鷓鴣菜と効能はほぼ同じとされている。

 海人草は現在でも回虫や蟯虫などの寄生虫の駆除に用いられているが、特有の臭いがあり、味も不快である。カイニン酸の駆虫作用はサントニンよりも強く、サントニンと配合すると駆虫効果が強力になる。このためカイニン酸とサントニンとを配合した駆虫薬が家庭薬として市販されている(カイニン酸サントニン散)。

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