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土曜日, 3月 24, 2012

桜皮

○桜皮(おうひ)

 日本各地、朝鮮半島などの温帯に分布しているバラ科の落葉高木ヤマザクラ(Prunus jamasakura)やソメイヨシノなど桜類の樹皮を用いる。桜皮というのは和名であり、中国にはない。サクラ類は日本に多く、数十種が知られているが、一般に植えられているのはソメイヨシノである。

 サクラは北半球の温帯に広く分布し、美しい花の咲く種類は東アジアを中心に自生している。ヨーロッパのサクラ類はおもに西アジアを原産とするセイヨウミザクラ(P.avium)で、サクランボなど食用に栽培されている。ヤマザクラやソメイヨシノの果実は苦くて食用にならない。薬用には主にヤマザクラの樹皮を用いるが、主幹が20cm以上の太くない木を利用する。桜皮の外観は赤褐色ないし灰褐色で光沢があり、特有の匂いとかすかな渋みがある。

 樹皮にはフラボノイドのサクラニン、サクラネチン、グルコゲンカニン、ナリンゲニンなどが含まれ、葉にはクマリン配糖体が含まれる。クマリン配糖体が分解されると芳香物質が生じるが、これが桜餅の独特の香りである。江戸時代の民間療法として桜皮は様々に応用され、魚の中毒、蕁麻疹、腫れ物などの皮膚病の治療、また解熱、止咳、収斂薬として知られていた。日本の漢方家も解毒・排濃の効能があるとし、華岡青洲は桜皮を配合した十味敗毒湯をよく用いた。

 十味敗毒湯は荊防敗毒湯の内容を加減したもので化膿傾向のある湿疹などに対する処方である。現在でも桜皮のエキス製剤は鎮咳虚痰薬として臨床に用いられている。北米でも先住民が古くからワイルドチェリー(Wild Cherry)の樹皮を下痢や呼吸器疾患の治療に用いていたが、その後、咳止めドロップなどの原料に利用されている。

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