○茴香(ういきょう)
ヨーロッパ地中海沿岸地方を原産とするセリ科の多年草ウイキョウ(Foeniculum vulgare)の果実を用いる。現在では世界中で栽培され、日本にも明治初期に渡来し、長野県、岩手県などで栽培されている。全草に独特の芳香があり、とくに果実は香りが強く、わずかに辛味がある。果実はフェンネルの名で香辛料として知られ、魚や肉の料理によく合い、フランス料理やイタリア料理などによく用いられている。欧米では新鮮な茎、とくに根に近い白い部分を生で食べることもある。
古代エジプト時代には既に栽培され、また中世ヨーロッパでは魔術の草としても知られていた。中国には4~5世紀に西域から伝わり、腐った魚肉に混ぜると香気を回復するので「回香」と呼ばれたのが茴香の語源である。シキミ科のダイウイキョウ(大茴香)と区別するため、とくに小茴香とも称する。市場には中国からの輸入品がほとんどを占めており、90%は香辛料に使われている。日本産の茴香は精油の含量が多く最良の品質といわれている。芳香性の精油成分にはアネトール、エストラゴール、ピネン、フェンコン、アニスアルデヒドなどが含まれ、腸の蠕動運動を促進し、駆風作用がある。
漢方では理気・止痛・健胃の効能があり、胃痛、嘔吐、下腹部痛、腰痛などに用いる。茴香は温裏薬のひとつで、冷えを原因とする胃痛をはじめとする種々の内臓痛に応用される。また蒸留して得られる精油のウイキョウ油は健胃薬、去痰薬、矯味・矯臭薬として用いられる。
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