〇酒粕
酒粕は清酒醸造の副産物で、もろみ(醪)から清酒を搾った残滓である。清酒は以下のように作られる。蒸米、麹、水に酵母を入れてモロミを作り、この中で麹による米の糖化(デンプンを少糖にまで分解)と、酵母によるアルコール発酵を同時に進行させる。20日程度でアルコール分が18%前後に達すると発酵が終了する。
発酵中に麹の酵素作用や酵母の代謝作用により、モロミに清酒独特の香味成分が生成される。清酒はこのモロミを圧搾して得られるもので、搾った後に残ったものが酒粕である。酒粕には未分解の蒸米や酵母、麹が含まれ、アルコール分は約8%である。食材としては奈良漬や粕汁、魚の粕漬けなどに利用される。
奥田拓道(愛媛大学医学部)らは酒粕中の生理活性物質とその医学的効果の研究において、酒粕がガン患者の急激な痩せを改善し、食欲を増進させ、患者の闘病体力の維持に役立つという研究結果を報告している。
ガンによる急激な痩せは、ガン細胞から出るトキソホルモン-Lという毒素が脂肪細胞に作用して、脂肪細胞中の脂肪を分解したり、脳の満腹中枢を刺激して常時満腹感を覚えさせ食欲を低下させることが原因だとされている。奥田らはマウスを使った実験から、酒粕に含まれるグルコサミンなどの物質がトキソホルモン-Lの働きを阻害し、急激な痩せを防止する効果のあることを明らかにした。
奥田らはまた、酒粕中にデンプンの消化酵素であるα-アミラーゼの作用を妨げる物質が含まれていることも発見している。この物質によってデンプンの分解速度が遅くなり、インスリンが余り上昇しなくなることから血糖が脂肪細胞に取り込まれず、結果として脂肪の蓄積が少なくなると報告している。また、酒粕中にはインスリンに似た働きをする物質があり、この反対作用のホルモンの働きを弱めて脂肪の分解を抑制することも明らかにしている。
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