○味噌
味噌は日本を代表する調味料の一つだが、その起源については諸説ある。一般的には、中国から伝来した醤や鼓が日本独自の味噌に発展したといわれている。醤は獣や魚の肉、あるいは雑穀を発酵させたもので、鼓は大豆に塩を加えて発酵させたものである。一方、縄文時代には既にドングリで作った食品(縄文味噌)があり、それが起源であるという説や、醤や鼓、縄文味噌が影響しあって今日の味噌ができたという説もある。
味噌は蒸煮した大豆に麹、食塩、種水を加えて発酵・熟成させた食品である。種水には酵母や乳酸菌を添加することが多い。使用する麹の種類によって米味噌、麦味噌、豆味噌に種類が分かれる。日本で生産される味噌の8割は米味噌で、仙台味噌や信州味噌、西京味噌などがある。麦味噌はかつては農家の自家用に作られることが多く、田舎味噌とも呼ばれている。九州や四国、中国地方に多い。豆味噌は渋みのある濃厚な味が特徴で、名古屋味噌や八丁味噌、三州味噌が良く知られている。なお、赤だし味噌として市販されている味噌は豆味噌に米味噌をブレンドした調合味噌である。
味噌にはタンパク質やビタミンB2・B12・Eをはじめ、サポニン、イソフラボン、レシチン、酵素など数多くの有用成分が含まれている。タンパク質では必須アミノ酸のリジンが多い。リジンは日本人の主食である白米に不足しているアミノ酸なので、味噌汁と一緒に摂ることにより不足の栄養素が補える。また、味噌汁を毎日飲む人ほど胃ガンによる死亡率が低くなるという調査報告がある(1981年、国立がんセンター研究所)。特に男性の場合は顕著で、毎日飲む人は全く飲まない人に比べ死亡率が約33%低下する。これは味噌の発酵中に酵素や酵母の働きで作られる脂肪酸エステル(味噌の香り成分)に、ガンを誘発する変異原性物質を抑制する作用があるためといわれている。また、味噌の原料である大豆にはリノール酸、植物ステロール、ビタミンE、レシチン、サポニンなどが含まれているが、これらの成分はコレステロール低下作用をもつ。さらに大豆サポニンには強い抗酸化作用があり、体内の脂質の酸化を抑えるので生活習慣病や老化の防止に働く。味噌は未成熟のものより熟成味噌のほうが抗酸化力に優れていることがラットによる実験で確認されている。
このように有用成分を豊富に含む味噌だが、味噌汁の塩分を気にする人も多い。味噌には塩味によって甘味噌(食塩濃度5~7%)、甘口味噌(同7~13%)、辛口味噌(同11~13%)があるが(数字は米味噌の場合)、味噌汁の具にカリウムを多く含む海藻類や緑黄色野菜、根菜類など組み合わせることでナトリウムの体外排出を促すことができる。
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